コラム

    • 国税庁

    • 2010年10月26日2010:10:26:00:05:00
      • 鈴木克己
        • 税理士

何よりも高い正義感と倫理観が要求される検察においてあってはならないことが行われ、世間を騒がせている。検察内部から「信頼回復は無理かも」との声が上がるくらい、世の中に与えたインパクトは大きい。 

 
高い正義感や倫理観が要求されるという点では、国税庁も検察と近いものがある。 今回は、税務行政を司る国税庁とは、どのような組織であるのかを整理したい。 
 
 

■国税庁の位置付け 

 
税務行政を司る組織は、ご存知、国税庁である。 
 
国税庁は、いわゆる国税(所得税、法人税、相続税、消費税など)の課税、徴収を行うことを目的とする組織であり、位置づけとしては、財務省の外局である。 
 
財務省では、主税局が税法の整備や税制改正を担うが、国税庁は、税の執行機関。税の実務部隊ということなる。 
 
 

■国税庁の機構 

 
国税庁の下には、全国11ヶ所の国税局(札幌、仙台、関東信越、東京、金沢、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、熊本)と沖縄国税事務所がある。 
 
国税庁が、課税や徴税に関する企画立案や調整を行う組織であるのに対して、国税局はや課税や徴税の実際の手続を取り仕切る組織である。新聞記事などでよく目にするのはこの国税局である。 
 
国税局は、それぞれ所管する地域が定められており、それらの地域の税務署の管理や税務署では対応しきれない大口納税者の税務調査等を行う組織である。 
 
『マルサの女』という映画で一躍有名になった「査察部」はこの国税局に存在する。 
 
査察部では、大口・悪質な脱税者の刑事責任を追及することを目的としており、その意味で強大な調査権限を与えられている。時に検察と連携し、経済犯罪を追及する場面もあるといわれている。 
 
さらに、国税局の下には、全国で524箇所の税務署が存在する。通常、納税者がやり取りする窓口はこの税務署といわれる組織である。 
 
ちなみに、同じ税務行政ではあるが、都道府県税に関する窓口は都道府県税事務所である。同じ税に関する窓口ではあるが、税務「署」と都道府県税事務「所」であり、「しょ」の字が異なる。税務署の署は、警察署や消防署、労働基準監督署などと同じであり、取締り色の強い組織と同じである。 
 
その他、税務職員の教育、訓練を集中的に行う税務大学校や税務署や国税局により行われた課税処分等に対する不服の審査(納税者からの訴えを審査)する国税不服審判所がある。 
 
 

■国税職員の1年 

 
国税行政は、7月~6月を1事務年度として運営されている。 
 
国税局や税務署にいる税務調査を行う部隊は、7月中に調査対象を抽出し、8月ぐらいから本格的に税務調査を始める。 
 
何事もスタートが肝心というわけではなかろうが、8月から秋口にかけての税務調査はなかなか厳しい。 
 
国税職員にもいわゆる“ノルマ”に相当するものがあり、“人事考課”もあり、それが“出世”に影響する(噂では8月から年内ぐらいの調査実績が人事考課の対象とか何とか・・・)。  
 
税務調査はいつの時期に受けても嫌なものであることは間違いないが、特にこの時期に受ける税務調査は、こちらも気合が入る。 
 
一方で年が明けると個人の確定申告の時期にさしかかり、調査を受ける税理士も調査を行う税務署も忙しいことからか調査の件数は減少する傾向にある(ただし、ここでいう確定申告は個人の話なので法人に対する調査はしっかり行われる)。 
 
その後、春先から6月にかけては、事務年度の終盤。税務調査等の最後の仕上げであり、担当職員の異動前にできるだけ終わらせるように働きかけがある。 
 
 

■現在の国税庁を取り巻く環境(まとめ)

 
上述のとおり、国税庁はいくつかの階層で構成される人員6万人の巨大組織である。 
 
納税者及び申告数の増大に伴い、インターネットを活用した電子申告などの納税インフラの整備を進めているものの、海外を舞台にした複雑な事案なども増えており、適正な税務行政の執行のために人員は充分なのかという話もある。国民全員の所得や資金の流れを把握するために「納税者番号制度」を導入すべきという議論が常に行われるのは、このような事情が影響している。 
 
更に、本年1月1日に厚生年金保険法や国民年金保険法が一部改正され、保険料の納付について誠実な意思が見られないなど悪質な滞納者については、厚生労働大臣が財務大臣に徴収事務の権限を委任することができるようになり、国税が国民年金等の強制徴収を行う制度が創設された。 
 
国税庁は検察に比べ、目立つことは少ない。 
 
しかしながら、税は国の根幹をなすものであるとすれば、国税庁という組織がどうあるべきか、「納税者番号制度」を始めとする納税制度のあり方をどうすべきか、国民年金保険料、国民健康保険料の徴収(強制徴収)を国税庁に一体化し、歳入庁とするという構想などいずれ本格的な議論が必要となる時期が来るのかもしれない。
 
 
--- 鈴木克己 (税理士)

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