コラム
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過半数
- 2011年06月14日2011:06:14:00:05:00
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- 楢原多計志
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- 福祉ジャーナリスト
“菅降ろし”が収まらない。衆議院本会議で不信任決議案が大差で否決されたにもかかわらず、与野党議員入り乱れ、「いつ辞める」「早く辞めろ」の連呼。まるでカエルの大合唱だ。前首相が現職の前首相を「ペテン師」と詐欺師呼ばわりするに至っては、開いた口が塞がらない。
「これが政局だ」と国会担当記者が事も無げに言う。だが、いくつかの世論調査によると、東日本大震災の被災者や福島第一原発事故の避難者はもとより、エネルギー不足や社会保障の財源難などで不安を募らせている国民の間でも「こんな時に」という戸惑いと怒りが広がっている。まして自戒のない政治家に現首相を人格攻撃する資格があるのか。
菅政権の失政を挙げれば切がない。非常時のリーダーとしてふさわしいかどうか、大いに疑問だ。それでも、「ふさわしくない」と退陣を求める以上、「復興計画はこうすべきだ」と政策転換の具体案くらい掲げるべきだろう。「菅首相が辞めることが復興計画の第一歩」(自民党の長老議員)では、「嫌だから辞めろ」の子どもの喧嘩と同レベルではないか。
民主党が政権与党の体をなしていなことは明らかだが、情けないのは自民党も同じ。民主党の内紛の乗じた不信任決議案提出には、かつて長期政権を担ったブライドも責任も感じられない。本をただせば、国民の間に広がる不安は、自民党政権が原発の安全性や社会保障財源の確保を先送りしたことが大きな要因だ。政局にして、首相を引きずり落とす前に、自戒と反省がなければ、国民を説得できるはずがない。
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個人的なことで恐縮だが、昨春から週1回、自宅近くの私大で経済学部1年生を対象とした文章講座を受け持っている。第3回のテーマを「大震災で思うこと」にした。
学生44人のうち過半数を超える28人が「(ボランティアや募金活動などで)自分なりに被災者や避難者を応援したい(「している」、「した」を含め)」と書いた。誤字脱字が目立ち、限りなく稚拙な文章が多かったが、少し希望が見えたような気がした。
<※事務局注:6月9日執筆>
--- 楢原多計志 (共同通信社 客員論説委員)