コラム

    • 官僚ドラマ

    • 2011年08月16日2011:08:16:00:05:00
      • 楢原多計志
        • 福祉ジャーナリスト

 

 2012年度が診療報酬と介護報酬の同時改定ということもあり、関係する審議会を傍聴する機会が増えた。
 
 あくまで個人的な印象だが、説明する厚生労働省職員の“高飛車な態度”と、公益委員の“役所べったり”が酷くなるような気がしてならない。今の審議会はつまらない官僚ドラマそのものだ。真夏の炎天はごめんだが、燃えるような意見の応酬なら大歓迎だ。 
 
 
 8月10日の社会保障審議会介護保険給付費分科会。主要議題は「介護報酬の地域区分の見直しについて」。都市部から不満が出ている地域5区分を国家公務員の地域手当と同じように7区分にしたらどうか―というのだが、何回、聞いても、そもそも国家公務員の地域手当が介護報酬(具体的には人件費)のモデル(厚労省は「準拠」と説明している)になるのか、素人には理解できない。
 
 介護事業者の委員から同様の質問に対し、厚労省職員は「前にもご説明したように、国家公務員の給与見直しには民間賃金が反映されています」と一蹴。質問者を小馬鹿にしたような印象が残った。
 
 
 国家公務員の給与水準は人事院が民間賃金のデータなどを参考にして政府に改定を勧告している。地方自治体も人事委員会の意見を反映させている。確かに、表向きは民間賃金が反映されている形にはなっているが、民間賃金データの対象企業やサンプル数が妥当なものかどうか、どこまで民間賃金の実態をきちんと把握しているのか、検証を求める意見があることも確か。 
 
 厚労省職員は「国家公務員の地域手当はあくまで参考データであり、介護保険の地域区分そのまま当てはめるわけではありません」と質問した委員を一応フォローする。だが、「国家公務員の地域手当以外、ほかに参考になるデータを持ち合わせていないし、いまさら地域ごとに民間賃金を調べる時間もない」という傲慢さが垣間見え、不愉快だった。 
 
 
 「高齢化という地域最大(日本でも最大)の課題を地方自治体と住民が自ら考え、自ら解決する介護保険システムを目指すもので、地方分権の大きな一歩だ」。2000年度の介護保険スタート時、当時の厚生省事務次官は、こう言い切った。介護保険は“地方分権の試金石”と言われた。 
 
 ところが、現状は、介護サービスや介護報酬、挙げ句は介護事業計画の書式まで厚労省が口を出す一方、地方は「箸の上げ下ろし」に至るまで厚労省からの指示待ち。どこが、分権なのか。全国一律の方が安心というなら、年金と同様、介護保険も国民健康保険も国に保険者を移管し、国営にしてもらったらどうか。 
 
 財源確保の難しさは十分理解できるとしても、国にガイドラインを示してもらわなければ、事業計画の策定も住民サービスの提供もできないようでは、自治体とは言えない。実務の準備まで国頼りでは官僚を増長させるだけだ。
 
 
 それにしても、審議会をどうにかしなければならない。
 
 何人もの公益委員が必要なのか。他の委員の話も聞かず、持論をブチ上げ、場をシラケさせる委員。厚労省の意向を受け、ひたすらスケジュール消化を急ぐ委員(部会長に多い)。何の意見も持たず、数時間、ただ座っているだけの委員・・・。 
 
 傍聴者の立場から言えば、利害が対立する委員同士の応酬は、相手の尊厳や人格を傷つけない限り、許されてよい。侃々諤々の議論があってこそ、結果として答申が生きる。持論を延々と繰り返して議論を阻んだり、まったく発言しないような公益委員は、はっきり言って無駄だ。
 
 
 10年ほど前、映画好きな先輩記者が酒席で諮問・答申についてこんなことを言っていたのを思い出した。 
 
 「昔の中医協はおもしろかった。官僚がシナリオを書いても演じる医師会や保険者の委員がめちゃめちゃにし、公益委員が止めに入った。止められるほど、当時の公益委員には体力と有識者としての見識があった。今は学歴と厚労省のウケ狙いがほとんど。」
 
 今は、どうか。団体代表の物わかりが良くなったのか、委員間の対立もすぐ収まる。しかし、聞き分けが良くなった分、公益委員の存在理由もよく分からなくなった。
 
 「公益」とは何か。審議会の議論を深めるためにも、再考すべきだろう。いくら“官僚の操り人形”なとど悪口を浴びても、公益委員には開き直れるくらいの体力と見識が欲しい。
 
 
 
--- 楢原多計志 (共同通信社 客員論説委員)

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