コラム

    • 2016年ないし17年には致死的パンデミックが起き得る

    • 2011年11月01日2011:11:01:12:12:20
      • 外岡立人
        • 医学博士、前小樽市保健所長

  英国のタブロイド紙であるDaily Mailが10月16日のウエブで、米国映画“Contagion(感染)”を取り上げ、そのあらすじと、著名なウイルス学者のコメント等を掲載している。 

 
 Contagion(感染)は今年の9月9日に米国内で公開されたSF映画であるが、有名なスチーブンソン・ソダーバーグ監督の手によるハリウッド映画で、米国では大きな評判を呼んだ。 
 
 ストーリーは、未知のウイルスが中国から拡大し、米国CDC、WHOなどの専門家やジャーナリスト達が、その空気感染する致死的ウイルスによるパンデミックを追うというシナリオである。 
 
 最終的にソダーバーグ監督は、豚と鳥両者が病原体拡大に関与していることを匂わせ、病原体は鳥インフルエンザウイルスとニパウイルス(コウモリが介在するマレーシアの豚農場におけるウイルス感染症。人に感染すると脳炎を発症。)のハイブリッドであることを示唆している。 
 
 非常に現実感のある病原体設定となっている。 
 
 なお死者数は数億人とされ、それはスペインインフルエンザの際の10倍となるが、人口増加および交通網の発達を考えると妥当性はある。 
 
 この映画に関しては、米国CDCをはじめとして何人かの専門家がコメントしているが、全般的に好意的意見となっている。 
 
 1997年に香港で鳥インフルエンザが人に初めて感染したとき、CDCで実地調査に携わった専門家の一人は、ストーリーは起こりえる事実に基づいている、と評価している程である。
 
 
 Daily Mailはロンドン大学の世界的ウイルス学者であるジョン・オクスフォード教授のコメントを記載しているが、同教授はコメントの中で次の様な意見を述べている。
 
「世界的な致死的パンデミックが起きえるかと尋ねられたら、もちろん起きえると私は答える。ただいつそれが起きるか分からないだけだ。地質学者が致死的火山爆発が起きえるかと尋ねられた場合、彼らは起きえると答えるのと同じである。私はパンデミックは2016年または2017年には起きえると思っている。世界はそれに対して十分な対策を講じる必要がある。現在タミフルとリレンザの備蓄が行われているが、さらに多くの新規薬剤が開発されている。2016年までにはそれらのうちのいくつかが実用化されるはずである。しかし最も重要な対策は、人々に衛生管理の教育をすることである。」
 
 Daily Mailの解説では、致死的パンデミック(H5N1が最も可能性ある)が英国に入ってきた場合、10週間で75万人が死亡するとされている。
 
 
 ジョン・オクスフォード教授はインフルエンザに関して英国でもリーダー的専門家であり、世界的にも有名である。
 
 2016年または2017年には致死的パンデミックが発生するだろうとの推測が語られているが、それは専門家としての勘によるものかも知れない。
 
 正しい答えとしては、それは起きるがいつなのかは分からない、今日かも、または5年後かも知れない、という表現が正しいと筆者は考えている。
 
  
 世界は豚インフルエンザ由来のH1N1の軽症パンデミックで、真のパンデミックに対する備えを停滞させてしまっている。
 
 オックスフォード大学の医師で16年間ベトナムのハノイで研究を続けてきているファーラー医師が、鳥インフルエンザに関して次の様にDaily Mail紙に語っている。
 
「H5N1鳥インフルエンザは未だ東南アジアの家きんの間で、さらに世界の野鳥の間で感染を続けている。もしそれが変異したり、または他のウイルスと遺伝子組み換えを起こすことで人への感染力が増したなら、非常に厄介な感染症が引き起こされることになる。H5N1鳥インフルエンザウイルスは豚インフルエンザの(先の)パンデミックの影響で、現在監視網から消え去ったように見えるが、鳥インフルエンザは未だウイルス変異により世界的問題を引き起こす能力を持っている。」
 
 
 そのようなパンデミックに対する警戒感を失っている世界に警鐘を鳴らす意味でも、この米国映画Contagion(感染)は意義があるというのが、米国CDCや英国の専門家の意見と考えられる。
 
 内容的には医科学的に妥当な設定となっているというのが、多くの専門家の意見でもある。
 
 米国内公開前に、CDC内で上映会が開かれたというほどである。
 
 
 
--- 外岡立人(医学ジャーナリスト、医学博士)

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