コラム

    • WHOが異例の通告

    • 2011年12月27日2011:12:27:00:10:00
      • 外岡立人
        • 医学博士、前小樽市保健所長

 

 WHOが12月19日、ウエブサイトで異例の通告を行った。
 
 概要は以下の通りである。
 
 WHOは変異型人インフルエンザウイルスの世界的監視が重要であることを通告する。
 
 最近豚インフルエンザウイルス由来の変異ウイルスの人感染例、および小集団内感染が数例報告されている。
 
 さらにH5N1鳥インフルエンザに関しても感染した鳥との接触により、または感染鳥が存在する環境内で感染する例も報告されている。
 
 これまではこうした変異ウイルスの動物から人への感染は散発的で、限定されたものであり、地域社会内へ拡大した事実はない。
 
 このような変異ウイルスによる少数の感染、および小集団内における感染は予想範囲内であり、決して異常な状況とは考えられない。
 
 しかしながら、インフルエンザウイルスの変異は予知出来ないものであり、それらウイルスが2009年のパンデミックH1N1ウイルスのように、人の間で容易に感染するように変異する可能性がある。そのような理由で、これらのウイルスの人感染状況を監視し、同時にウイルスの性状を分析することが、非常に重要となってくる。
 
 WHOは再度通告するが、加盟各国には以下の義務が課せられている。
 
 通常の季節性インフルエンザ以外のインフルエンザの発生は、国際保健規則に従ってWHOに迅速に報告する義務があること、そしてウイルスが人に感染しやすくなり、人の間で感染を広げている可能性について迅速なる疫学的調査を行って確認して報告すること。
 
 WHOは、変異ウイルスに関する情報を各国の公衆衛生当局と共有する義務がある。
 
 WHOはさらに次の事を強く勧奨する:検査で分類不可能なA型インフルエンザウイルスは迅速に上位の専門研究機関、または世界に6箇所あるWHO協力研究機関の一つに送るべきである。
 
 
 WHOがH5N1鳥インフルエンザウイルスに関してコメントを出したのは、この二年余りで初めてのことである。
 
 今年は米国で豚インフルエンザウイルスH3N2に、先のパンデミックインフルエンザウイルスであるH1N1の遺伝子の一部分が加わった変異株が米国で人に感染している。一部では人人感染も起きていて、さらなる周辺への拡大が危惧されている。
 
 また11月に入ってから公になった情報として、人に容易に感染するH5N1ウイルスがオランダの研究室で作成されたことがある。その変異ウイルスが研究室外に漏れ出る危険性、さらには変異ウイルス作成方法が発表されると生物兵器として利用される危険性が世界中で論議されている。
 
 
 こうした中、WHOは今回の異例の通告を行った。
 
 重要なポイントは、通常の季節性インフルエンザと診断出来ない例は、迅速にWHOに報告すると同時に、その疫学調査、そしてウイルス分析を行って報告しなければならないということである。
 
 こうした報告は国際保健規則でWHO加盟国の義務となっている。
 
 
 新規に”新型インフルエンザ”が発生する危険性はいつでもある。そして、その発生を如何に速やかに感知するかが、WHOと世界各国の大きな課題となっている。
 
 政治的紛争国や発展途上国で、そうした課題を達成できるのかは、筆者には疑問である。
 
 
 
--- 外岡立人(医学ジャーナリスト、医学博士)

コラムニスト一覧
月別アーカイブ