コラム

    • 福島異聞

    • 2013年11月26日2013:11:26:08:05:00
      • 岡光序治
        • 会社経営、元厚生省勤務

福島の友人から最近聞いた福島の「事情」を紹介し、若干の提案をしてみたい。
 
筆者は、大地震、津波と原発事故の二重三重の被害による苦しみ、悩み、復興が進展しない現状に、心から同情するものの一人であり、決して茶化したり批判したりする意図から叙述するものではないことを冒頭お断りしておく。
 
 

■最近の福島の「事情」

 
聞かされた「事情」は、おおよそ以下の通り。
 
福島原発に隣接する某町の町民でN市に避難しているケース。国と東電から、義捐金が月額大人一人20万円、小人一人10万円支給されている。働いて収入を得ると、その収入分減額される仕組み。
 
夫婦二人と子供三人の家庭でN市の仮設住宅に避難している個別事例。月額で70万円。この主人は半分を生活費として奥さんに渡し、残り半分を自分が使う由。自分の使う分でレクサスをローンで購入し、残りはパチンコに使う(といっている)。
 
働いて収入があると義捐金を減額されるので、“馬鹿馬鹿しい”から働かない。暇なのと仮設住宅は窮屈だから、パチンコか市営の温泉施設に行き終日過ごす。似たような人がこの温泉施設に集まり、賑わっている、とのこと。
 
仮設住宅には駐車場はあるのだが、レクサスは目立つためN市の知人の土地を駐車場として月1万円で借り、そこに置いている。
 
また、福島県民 ―特に子供を抱えるお母さん方― の発想に顕著な傾向が表れている。原発事故に伴う放射能の影響が子供の健全な生育を妨げるであろうから、それを避けるために、県外に転出しよう、というもの。現に、地震と津波で大きな被害のあった福島、宮城、岩手の3県について子供の県外への転出数を比較すると、福島がダントツに多い。子供とお母さんが転出すればお父さんも一緒に動く。転出先から福島へ通勤するケースもある由。
 
このような傾向も手伝って、人手不足に拍車がかかっている。お母さん方の転出は、女性労働力の比重が比較的高い医療や福祉の現場にもろに影響。県外からの転入は望み薄だから、新規に病院や老人施設などを開設する際には、近隣の類似施設から引き抜くしかほかに方法がなく困った事態が発生している、という。
 
 

■筆者からの提案

 
なんとも悩ましい、悲しい状況だと思う。
 
そこで、提案が二つ。
 
1. 避難住民の皆さんを対象に、公的負担でヘルパーなどの介護スキルを身に付ける職業訓練を行う。そして、医療や福祉の現場に就職してもらう。その収入は義捐金減額の対象としない。もちろん、除染作業や瓦礫処理作業による収入も減額対象から外す。
 
2. 福島県と地元市町村が、子供について、レセプト・健康情報等を活用したデータヘルスを推進する。個人毎にその健康データを時系列管理し、分析し、健康管理と予防事業を行い、データから異常の兆しがあれば直ちに専門医療機関等に紹介し必要な対応をとるよう手配する。
 
胎児の時代の母子手帳、出生後の0歳児検診から始まる定期健康診断、保育時の健診、学校保健による検診、また、疾病の際のレセプトデータなど各所に存在する子供に関するヘルスデータを市町村に一元的に集め、管理・分析し、関係機関が連携したネットワークを構築し、それぞれが自分の専門作業を通じて子供を守り育てる仕組みを整え、また、データは追加・蓄積する。
 
希望があれば、お母さん方にスマホなどの端末を持ってもらい、番号を登録し、自分で自分の子供のデータを見ることもでき、また、関係機関へ照会・相談もできるようにする。
 
 

■行政へのさらなる要望

 
厚労省は、来年度予算の概算要求において、予防・健康管理の推進を要望。医療保険者によるデータ分析に基づく保健事業を推進しようとしているが、福島の子供のために今すぐに地元市町村によるデータヘルス事業を実施してもらいたいものだ。敢えて、付言する。
 
ほかにも、方策はあるはず。住み慣れた故郷からやむを得ず転出することを防ぐ環境条件を早急に作り上げねばならない。福島では離婚も増加傾向とか。母子が福島を離れ父が勤務の関係から福島に留まることが離婚原因の一部にもなっているらしい、とのこと。速やかな対応を各種講じる必要がある、と思う。
 
 
 
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岡光序治(会社経営、元厚生省勤務)

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