コラム

    • 介護ロボット

    • 2014年06月24日2014:06:24:08:10:00
      • 岡光序治
        • 会社経営、元厚生省勤務

人口の高齢化で介護が必要となる人が増え続けている。介護職員も2025年には現在より100万人多い250万人が必要と予測されている。しかし、重労働の割に他の産業に比べ賃金が低いことなどで人手不足が続いている(人手の確保が困難なため施設の増設や新規開設を断念するケースも現れ始めている)。
 
介護ロボット機器が注目される所以である。
 
企業の参入を促すため経済産業省と厚生労働省が連携し、13年度からロボット介護機器の開発費を補助する事業を開始。
 
このような背景もあって、企業がその独自技術を生かして介護分野に参入する動きが広がっている。新聞情報から、概念別の典型例を紹介する。
 
スミロン(大阪市) ―自動車や液晶部材向けの保護フィルムを製造― 使用済みおむつを特殊なテープで密封し、におい漏れを防ぐ装置
菊池製作所(東京都八王子市) ―精密部品・金型メーカー― 人口筋肉の力を使い、介護者が重い物を持てるようになるスーツ
レイトロン(大阪市) ―LSI・システム開発― 高齢者が音声で家電の操作ができるコミュニケーションロボット
 
 

■ロボットの分類

 
「ヒトの作業を補助するロボット」の事業化を個人的にお手伝いした ―誠に中途半端で恥ずかしい限りであるが― 経験をここでご披露する。
 
開発者は、ロボット研究家である北海道大学大学院 情報科学研究科の田中孝之准教授。開発した装置は、被介護者の抱き上げなど移乗介護における介護者の肉体的負担を軽減することを目的としたもので、介護者の腕力を5~8倍程度に増幅し、最大耐荷重120㎏の能力を有する外骨格型パワースーツ(スマートスーツと呼称)。
 
田中准教授によると、ロボットの概念は3つ。
 
ひとつは、「自動化」。機械化によってヒトを省く(=無人化する)ロボット技術。鉄腕アトムやマニピュレータ、ホンダASIMO、村田製作所のムラタセイサク君など。
 
ふたつ目は、「増力化」。ヒトの力や体格だけではどうにもし辛い作業を機械化によって実現するロボット技術。フォークリフトやクレーン車、介護リフト。CYBERDYNE社のHAL(身体機能に障害がある方への自律動作支援を目指す)など。
 
みっつ目が、「軽労化」。田中准教授が考える「ヒトの作業を補助するロボット」
 
 

■スマートスーツとは?

 
田中准教授流の「軽労化」を担うロボット「スマートスーツ」の内容を若干紹介すると、これを着用することで筋肉の負担を抑えたり、力を増やすパワースーツの一種。ゴムなどの弾性材を使って ―モーターは使わない― 筋力を補助し、長時間労働による腰や足などの負担を和らげるもの。
 
田植えなどの長時間、同じ姿勢による作業の際に効果的というし、北海道ならではのことであるが、雪かきの負担を和らげる道具として道庁も参加して実用性の分析が行われてもいる。
 
 

■スマートスーツ開発過程

 
関わりをもったのは、今から、5年前くらいのこと。建設工事現場にもふさわしかろうという発想で某大手ゼネコンに提案したら、多大の興味は示されたものの結局、使用料などの条件について合意ができず、断念。
 
介護現場に導入を図ろうということで、札幌市内の一病院でモニター調査したところ、介護職員全体の70%以上が腰、体全体への負担が軽減したと回答。これに力を得て、某医療機器等販売会社に持ち込んだところ、やはり断られた。
 
田中先生は、研究一途の方。なんとか実用化したいという意欲を持つ関係会社の方々のご努力もあって、各所の特養などで試験的に導入され、「まっすぐ座って、まっすぐ立てる感じがする。気持ちよく仕事ができる」との評価も得ている様子。現在試験販売中で1着3万8千円とか。簡素で使い勝手がよく、価格も安いものを目指し、「軽労化」の考えを普及させながら定着を図る過程にあると考えられる。
 
 

■ロボットと制度との関わり

 
体に装着して、人がやる作業を補助し、ある時は人本来の筋力を増幅する。人と一緒になって動き、人を助けてくれる、このような装着型のロボットが実現みを帯びてきている。ちなみに、CYBERDYNEのHALは、13年8月にEUで医療機器として認定された。ドイツでは公的労災保険の適用対象となり、HALをつかった機能改善治療は全額保険でカバーされるという。
 
EUやドイツのような制度上の関わりがわが国でも持たれるべきと思う。公的制度において、人手不足を補う、との発想で関わるべきというのが小生の提案である。具体的には、人のやる作業を補助するロボットを導入すれば、その能力に応じ、1台が介護者一人の●●%に相当すると換算できるようにし、配置した台数の換算合算分だけ実際の配置人員は少なくて済む、という内容である。
 
 
 
---
岡光序治(会社経営、元厚生省勤務)

コラムニスト一覧
月別アーカイブ