コラム

    • 非営利ホールディングカンパニー型法人制度について

    • 2014年11月04日2014:11:04:11:39:53
      • 板持英俊
        • 税理士

1 概要

 
現在、厚生労働省では有識者で構成する「医療法人の事業展開等に関する検討会」を設けて、医療法の改正議論を行っている。
 
いわゆる「非営利ホールディングカンパニー型法人制度」は、産業競争力会議において「成長戦略進化のための今後の検討方針」に制度の創設が盛り込まれており、その実現に向けて、活発な議論がなされている。
 
本稿では、「非営利ホールディングカンパニー型法人制度(以下「HDカンパニー制度」)」の内容について整理する。
 
 

2 創設議論の背景

 
(1)社会保障制度改革国民会議
HDカンパニー制度は、平成25年8月に示された社会保障制度改革国民会議の報告書(以下「国民会議報告書」)の中で、医療機関同士又は医療機関と介護施設等の連携を円滑に行う仕組みとして提言された。これから迎える超高齢化社会においては、医療と介護、さらには在宅支援までもが、切れ目なくつながるように、医療・介護制度の見直しが必要であると指摘している。
 
(2)産業競争力会議
首相の諮問機関である産業競争力会議の「成長戦略進化のための今後の検討方針」においては、国民会議報告書の内容を受けて、医療・介護等のサービスを一体で提供するための制度改革を掲げている。
 
この制度改革の目的は、病院や社会福祉施設等の経営を効率化・高度化するとともに、回復期病床を増床し、在宅医療・介護分野の充実を図る機能分化を進めることである。
 
そのため、HDカンパニー制度の創設等、現行制度の規制緩和を図るとしている。なお、具体的な内容については、平成26年中に結論を出すスケジュールが示されている。
 
 

3 HDカンパニー制度の内容

 
(1)制度の概要
① 概要
HDカンパニー制度は、非営利ホールディングカンパニー型法人(以下「新型法人」)を設立し、複数の医療法人や社会福祉法人等(以下「参加法人」)を統括する。既存法人の独自性を一定程度保ちながら、グループの一体的な運営及び、医療機関・介護施設の連携、病床機能の分化や連携が期待されている。
 
② 意思決定
HDカンパニー制度の基では、新型法人の社員総会等において個々の意思決定が行われ、その意思決定に従って、参加法人は自法人の運営を行う。
 
新型法人は、参加法人を統括することを目的に設立され、実際の事業を行うのは参加法人だ。一般事業会社で言えば、持株会社と事業会社の関係に類似している。
 
現在、新型法人の社員に参加法人又は個人が就任し、新型法人の意思決定に関与する方式が検討されている。
 
③ 参加法人の間での資金融通用等
HDカンパニー制度に参加する法人間で、資金融通(貸付、寄附、債務保証等)が可能となる。また、同法人間での職員の異動も可能となる。
 
【HDカンパニー制度イメージ】
(出典:厚生労働省HP)
 
(2)HDカンパニー制度の期待される効果と課題
現在、「医療法人の事業展開等に関する検討会」では、以下の効果が期待出来るとしている。その一方で今後、議論すべき論点として、ガバナンスの考え方等の重要項目が挙げられている。
 
【期待される効果】
① 医療サービス等の向上
・地域医療の運営方針を参加法人も含めて決定するため医療資源の効率的な活用が可能となる
・症状にあったグループ内の医療機関を紹介相談できる
・グループ内医療機関において患者情報の共有及び一元管理ができる
 
② 法人経営の効率化
・グループ全体での人材採用・人材交流が可能となる
・物品購入等の管理業務を一括して実施できる
・グループ内の資金融通が可能となる
 
【今後の論点】
① 対象範囲
・参加法人数
・医療機関と介護施設の参加要件
・二以上の地域で医療機関を運営している場合の取扱い
 
② 新型法人ガバナンスの仕組み
・新型法人の社員の選任方法
・参加法人の事業計画や予算等の重要事項についての新型法人の統括方法
・新型法人の理事長要件
・新型法人への加入、脱退方法
 
③ その他
・新型法人の事業内容
・関連事業を行う会社への出資
・法人間の資金融通等に係る税制
 
 

4 具体的構想

 
HDカンパニー制度の活用事案として「岡山大学メディカルセンター構想(以下「本構想」)」が検討されている。本構想は大学病院を中心に、県立病院、市立病院等を統合し、効率的な運営を図ることを目的としている。
 
具体的には、中核的な参加法人として、岡山県や岡山市等の地方公共団体、国立大学法人、独立行政法人等が考えられており、それに民間の医療法人や社会福祉法人が加わる構想だ。
 
 

5 おわりに

 
今後注目されるのは、参加法人間での資金融通の仕組み作りや、それに係る税制の整備等の個別論点の検討である。
 
税制については通常であれば年末に税制改正大綱が公表され、あくまで現状のスケジュールで行けば、本年末の税制改正大綱に盛り込まれる可能性がある。
 
HDカンパニー制度は、検討中の制度であるため、今後の議論の行方を見守る必要がある。
 
 
 
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板持英俊(税理士)

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