コラム

    • 解雇に関する最近の裁判例について

    • 2015年10月13日2015:10:13:10:12:33
      • 尾畑亜紀子
        • 弁護士

1 解雇の法規制

 
解雇とは、使用者が労働契約の効力を将来に向かって一方的に終了させることである。
 
解雇に関しては、裁判例の積み重ねによって濫用してはならない旨の規範が確立し、現在は労働契約法第16条において、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」とすると定められている。
 
すなわち、使用者は、然るべき理由がなければ労働者を解雇できないのである。
 
もっとも、一体何が客観的に合理的な理由なのか、何が社会通念上相当であるかは、条文を眺めているだけではわからない。
 
そこで、このような条文があっても、個別具体的な事案において、解雇の合理性、相当性を吟味しなければならないのである。
 
 

2 解雇のリーディングケース

 
解雇に関しては、最高裁昭和52年1月31日判決が著名である。
 
この事案は、放送事業を営む会社にアナウンサーとして勤務していた労働者が、宿直勤務に従事していたところ、2回にわたり寝坊のため早朝の定時ラジオニュースを放送することができなかったため、会社が普通解雇としたという事案である。
 
裁判所は、定時にアナウンサーを起こす役割の者がいたにもかかわらず、この者も寝坊していること、この者に対する処分は譴責であって、アナウンサーが解雇となったことと均衡を失すること、2回目の寝坊の際には本人が一刻も早くスタジオ入りすべく努力したこと、一方において会社は早朝ニュース放送に事故がないようにする措置を講じていなかったこと、などの事実を認定して解雇が苛酷に過ぎ、合理性を欠くとして、解雇を無効とした。
 
 

3 解雇を有効と認めた高裁判例

 
このような先例も踏まえ、解雇に関する判例は、下級審を含めて解雇理由に合理性がない、相当性がないとして無効と判断した例が多い。
 
しかしながら、実際上、使用者においては採用してみたものの、能力がなかったとか、人間関係が円滑にいかないという理由で、労働者に対して解雇に踏み切らざるを得ないケースも多いのである。
 
ところがこのような事例において、使用者が労働者の解雇に踏み切った場合、裁判上解雇が有効と認められることはほとんどなかったと思われる。
 
もっとも、近時の高裁判例で、労働者の能力不足を理由に解雇を有効とした事案がある。
 
すなわち、東京高裁平成27年4月16日判決は、以下のような事案である。
 
対象労働者は、日常業務の判断と事務処理に過誤が散見され、事務遅滞もあった。そこで使用者は、同人の担当業務を変更して対応した。しかし、当該労働者は、業務上必要な書類を廃棄してしまうなど、担当業務を的確に遂行できなかったため、使用者は同人の事務量を減らし、他の課員に業務を委ねるなどした。それでも、同人が外部からの照会に適切に対応できなかったということがあったため、他の課員が同人の業務を再確認せざるを得なくなった、などという経緯があり、使用者が当該労働者を解雇した。
 
かかる事案において、東京高裁は、当該労働者が、従業員としての必要な資質、能力を欠く状態であり、その改善の見込みも極めて乏しく、引き続き当該労働者を雇用することが困難な状況になっていたといわざるを得ない、と判断し、就業規則において解雇事由となっている「その他やむを得ない事由があるとき」に該当すると認定して、解雇を有効とした。
 
従来は、就業規則における一般条項的な解雇事由では解雇できないと理解される傾向があった。
 
しかし、この高裁判例により、かかる一般条項も有意義であり、今後はかかる一般条項による解雇も有効とされる事例が増加するように思われる。
 
 
 
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尾畑亜紀子(弁護士)

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