コラム

    • 不祥事ワースト10

    • 2015年11月03日2015:11:03:08:41:12
      • 楢原多計志
        • 福祉ジャーナリスト

「2015年は海外ではフォルクスワーゲン、国内は東芝で、ほぼ決まりですね。」
 
NPO法人日本経営倫理士協会(ACBEE)の理事がため息交じりに話す。名門企業の不祥事が止まらない。企業のモラル低下は企業の名声や社歴とは無関係のようだ。利益のためなら手段を選ばない。これも“反社会的行為”の1つだろう。 
 
 

▼ニュースバリューの差

 
ACBEEが経営倫理士(※)100人を対象に2010年から14年まで5年間に報道されたコンプライアンスに関する「重要ニュース」を選ぶという調査の結果をまとめた。ここでは紙面の関係で最近3年のワースト10とコメントを紹介する。(筆者註:同数あり。表記の一部変更あり)
 
【2012年】
(1)野村証券(インサイダー取引)
(2)AIJ投資顧問(年金資産の消失事件)
(3)陸援隊(関越道バス事故)
(4)三菱自動車(リコール問題)
(5)NEXCO中日本(中央自動車道笹子トンネル崩落事故)
(6)オリンパス(損失隠しによる申告漏れ)
(6)朝日新聞出版社(人権侵害の記事)
(8)読売新聞(ips細胞臨床応用成功の誤報)
(8)神奈川県警(誤認逮捕)
(8)サムスン電子(特許訴訟)
(8)経産省審議官(インサイダー取引)
(8)防衛庁(入札情報の漏えい)
(10)慶應義塾大学(骨髄液の無断採取)
(10)自動車部品メーカー(価格カルテル)
 
【2013年】
(1)ホテル、飲食店など(一連の食材偽装問題)
(2)みずほ銀行(暴力団への不正融資)
(3)JR北海道(事故続出、レール検査ねつ造)
(4)カネボウ(美白化粧品による白斑被害)
(5)ノバルティスファーマ(臨床検査論文の改ざん疑惑
(6)日本野球機構(統一球問題)
(7)秋田書店(読者プレゼント当選者の水増し表示)
(7)大手外食チェーンなど(従業員によるSNSへの不適切な投稿)
(7)フタバ産業ほか(贈賄事件)
(10)東京電力(原発事故対応)
 
【2014年】
(1)ベネッセコーポレーション(個人情報流出)
(2)朝日新聞(吉田調書・慰安婦問題の誤報道)
(3)タカタ(エアバッグのリコール)
(4)JR北海道(レール点検数値改ざん)
(5)カネボウ(美白化粧品による白斑被害)
(6)マクドナルド(加工肉などの食品品質問題)
(6)ノバルティスファーマ(臨床研究での改ざん)
(6)理化学研究所(STAP細胞論文問題)
(9)まるか食品(カップ焼きそばへの異物混入)
(10)群馬大学付属病院(腹腔鏡手術による死亡多数)
 
※経営倫理士とは、ACBEEが養成しているリスクマネージメントやコンプライアンスなどを専門とする任意資格。企業の法務、企画、広報などの担当者や学生らが多く、資格取得者は535人(9月現在)。
 
 

▼コンプライアンスの欠如

 
製造、流通、金融、サービス(公共サービス含む)、教育、医薬など業種や業態に関係なく、名の知れた企業や公官庁が多い。中小零細企業より大企業や公共団体が多いのは報道上の「ニュースバリュー」の差、注目度の違いだろう。
 
回答者のコメントをみると、「倫理観の欠如に驚く」(年金資産消失事件)、「業界体質に中にある非常識が消費者の信頼を裏切った」(食材偽装問題)、「情報管理体制の脆弱さが露呈した」(個人情報流出)などコンプライアンスの欠如を指摘する声が多い。
 
原因や対応策としては、「外部監査の有効活用や刑事罰の量刑を重くする」(インサイダー取引)、「激しい価格競争の結果であり、法の不備、業界慣習の問題が根底にある」(関越道バス事故)、「改めて顧客に対し誠実な対応をとることの重要性を認識した」(化粧品による白斑被害)、「業務を外部委託する場合、元請として全責任を負う覚悟で業者の選定、定期的な点検が必要(個人情報流出)、「グローバルな時代において、不祥事対応も国・地域での社会常識に違いがあり、その国の・地域に応じた対応が必要」(エアバッグリコール)などの指摘があった。
 
マスコミに対する批判も目立つ。特に朝日の吉田調書・慰安婦問題の誤報道について「十分な点検を行わず、報道し、結果的に国民のみならず、国際社会に大きな誤解をもたらす原因となった」「いまだに誤報と言い張り、けっして捏造と言わない姿勢に同社の本質が垣間見える」「正義感と使命感とヤラセの区別がつきにくくなってしまった」なとど手厳しい。過去5年間をみても報道機関の姿勢や経営に関する「重要ニュース」が増えており、報道機関は自ら“報道被害(報道加害)”の根絶に努めるべきだ。
 
15年はどうか。東芝の不正会計問題は「不適切な会計処理ではなく、故意による粉飾に限りなく近い」との声がある。戦後の経済復興発展のけん引力にもなったトップメーカーとして実に情けない事態だ。刑事事件としての立件(起訴)が焦点になっているが、悪質であり、やむを得ない。「傾きマンションの問題」もワースト10入りは間違いなさそうだ。
 
 
 
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楢原多計志(関東学院大学 講師)

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