コラム

    • 光と生体メカニズムの関係

    • 2016年10月18日2016:10:18:10:56:54
      • 岡光序治
        • 会社経営、元厚生省勤務

軽度認知障害の方を対象に、生体メカニズムを活性化させると考えられる光を浴び、良い睡眠を得ることでその認知障害の進行をとどめたり遅らせたりすることができるかどうか研究しようとしている。
 
なお、研究の立て方や進め方などについて全く自信がない。ご批判やご示唆などをいただきたいと望むものである。
 
 

1.アルツハイマー病の危険因子

 

厚生労働省研究班の調査(2012年)によると、日本の認知症患者は462万人(65歳以上の15%)、その2/3はアルツハイマー病であり、約400万人が軽度認知障害(記憶力の低下が見られるが、他の認知機能に障害は現れておらず、日常生活に支障をきたしていない状態。MCI:Mild Cognitive Impairment)とのことである。
 
アルツハイマー病の危険因子は3つ。メタボリック症候群(運動・睡眠・食事・規則正しい生活などの乱れから生じる)、頭部の外傷及び睡眠障害。
 
 

2.睡眠障害とアミロイドの蓄積の関係

 
脳が活発に働いている時間すなわち覚醒時、アミロイドβ(正常な蛋白)などが脳内に溜まる。眠っているときに脳の「水路」が開き、覚醒時に溜まるアミロイドβなどの老廃物を排出する。睡眠が障害されると、何らかの異常によってアミロイドβが「重合」してアミロイドが形成され脳実質に沈着する、といわれている。
 
最近の研究によると、アルツハイマー病脳において、アミロイドの蓄積が決定的に重要な役割を果たしていることが画像で確認され、また、脳内でアミロイドの蓄積が始まってから実際に認知症を発症するまで約20年かかることがわかってきた。
 
 

3.生体リズムと光

 
生体リズムとは、睡眠・覚醒周期、体温調節、血圧周期、心拍周期、排便周期など身体の様々なリズムが寄せ集まったもの。生体リズムを守る3要素は、光・食事・メラトニン。
 
メラトニンは、朝の起床時にたっぷりと光を浴びると(光の強さと持続時間が重要)、脳にある松果体が15時間後にメラトニンが出来上がるように生合成の準備を始める。夕刻になって、出来上がったメラトニンは、日が落ち真っ暗になると、いっせいに血液中に放出される。メラトニンは脳にある体温中枢に働きかけ、脳の温度を下げ、眠りにつきやすい環境を作る。
 
光は、つまり、生体時計を調節する作用、眠気を減らす作用、交感神経(心拍数の増加など体を活性化させる作用がある)を賦活化させる作用及びメラトニン分泌を抑制する作用がある。
 
 

4.太陽光に近い光をどのようにして確保するか?

 
LEDで求めることにしている。
 
そもそもLEDとは、Light Emitting Diode=発光ダイオードと呼ばれる半導体で、電流を通すとそのエネルギーを直接、光に変えるもの。このLEDチップを「蛍光体」と呼ぶ補色機能と組合せることでいろいろな光を得ようとしている。
 
光は波長の異なる成分が混ざったもので、その組成は光の質(光色や演色性――自然の光をどの程度再現しているかを示すもの)を決め、量(光の目に対する明るさ)に影響する。光の質は、光を成分に分け(分光)、各波長成分の大きさを測定して評価する。
 
逆に言うと、太陽光のような白色ですべての波長をバランスよく持ち、できるだけ自然の光に近くなるように条件を定め、その条件を満たす分光分布や平均演色評価数とか最適の蛍光体の配合などを計算して求めることができるはずである。
 
 

5.太陽光に近似した光を浴びたときの生体リズムの変化の把握

 
視神経は、光の周波数と振幅、明るさを感知し、この情報を脳に伝える。それを受けた脳内の神経核は内分泌系と自律神経系に指令を出す。繰り返すが、光は交感神経を賦活化させる。
 
具体的な試みとして、自律神経は心拍数を調節しているので、心拍における高周波の変動数と低周波のそれを測定することから、その活性度を把握することにしている。太陽光近似の光を浴びたときの自律神経機能の活性状況を数量的に把握する試みである。
 
また、睡眠については、太陽光近似の光を一定期間浴びてもらい、いい睡眠が得られているかどうか本人及び同居者から聞き取りを行うとともに睡眠ポリグラフ検査を実施して確認する。
 
まず、健常な被験者の協力を得て、測定し結果を評価する。光に問題があれば、調整する。それを繰り返す。その結果、良い光が得られれば、MCIの協力者に主治医の了解と監視のもとこの光を浴びてもらい、状況を確認する。良い睡眠が得られるようになったら、脳内の変化につながっているかどうか画像で確認する。
 
研究の成果は、「冬季うつ病」の治療に用いる高照度光治療器のようなものに結実することを想定している。
 
 
 
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岡光序治(会社経営、元厚生省勤務)

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