コラム

    • イノベーション

    • 2017年02月07日2017:02:07:09:51:36
      • 岡光序治
        • 会社経営、元厚生省勤務

2016年の経済書の中で好評を博した 吉川洋『人口と日本経済』(中公新書)に触発され、意見を述べることとする。
 
吉川先生のご主張は、先進国の経済成長は労働力人口ではなく、イノベーションによって生み出されるもので、人口減少は決して衰退を招かない、鍵を握るのはイノベーション。日本では、人口減少に並行して(イノベーションが「寿命の延長」に貢献したともいえる)高齢化が進展しているが、人々の豊かな生活の継続はイノベーションにかかっている。日本の企業は、日本が世界有数の長寿国であることをむしろチャンスと考えるべき、といわれていると思う。
 
ここで終わっているのは、本書が「経済書」であり「政策提言書」ではないからであろう。でもここで終わりでは物足りない。どうすればイノベーションが進むのか、若干、個人的な考えを披瀝したい。
 
 

●“そうぞう力”を育もう

 
吉川先生曰く。経済における「技術進歩」はハードな技術とノウハウや経営力などソフトな技術が重要。新しい財やサービスを生み出す「プロダクト・イノベーション」が最重要。では、どうする?
 
慶応大学の真野剛氏のいわれるように「創造力」と「想像力」を同時に育む機会を作らねばならない。いまや、何に興味があるのか、何が好きなのか学ぶ本人が分かったうえで手段を選べる時代になった。少なくとも、一律的な教育は止める必要がある。
 
並行して、一般国民に“ZEN”的なライフスタイルー瞑想を勧めよう。① 自我への「批判眼」を持つ、② 心の中を言語化できるようにする、③ 自分に気づく、そうしたことができるように習得の機会を設ける。併せて、老子のいう足るを知り、止まるを知るような自己改造ができれば、まさに人間イノベーションにつながる。
 
また、植物に親しむー園芸療法的な発想の下でー機会を作ろうではないか。自ら植え、生長を助け、育て、生長を共に喜ぶ機会を作ろう。すべての国民に小さなプランタンと種を与え、育てる方法を教え、生長について報告・相談できる体制を整えてはどうか。
 
 

● 資本主義経済を持続可能なものにするための試み

 
社会のひずみ拡大を乗り越えるため、市場の富を再分配する仕組みを考える。投資収益と社会問題の解決の両立を基本哲学とする新しい原理を探す。
 
かって、イギリスのキャメロンが提唱した「インパクト投資」はその例の一つ(債券などで調達した資金を福祉や地域振興などに投資。浮いた行政コストを投資家の利払いに回す、というもの)。
 
 

● 国家の価値をはっきりさせよう

 
国家の価値を ① GDP成長、② イノベーティブな科学技術と社会システム、③ 環境・持続可能性の3つの軸で考える。
 
自由貿易、税制をより簡素で累進的な制度に改善(日本の所得税負担構造を根本的に考える場合、10%以下の税率しか払っていない人が80%を占める現状についても、所得税が十分機能するよう考え直すことを含む)、教育改革は必須である。
 
 

● 健康寿命について考えよう

 
吉川先生は同書の中で「先進国において経済成長は不必要であるか否かは、究極的には80歳を超えるまでになった平均寿命はここらでもう十分、これ以上寿命を延ばす必要はないと考えるか否かにかかっている」(p.183)と述べている。
 
避けては通れない問題だが、直答は躊躇されるし、合意形成には時間がかかる。
 
当面の課題は、「健康寿命」を保ち「人間らしく生きていく」ことにあり、達成のためには膨大なプロダクト・イノベーションを必要としている。超高齢化という問題に直面している日本経済は、「実は日本の企業にとって絶好の「実験場」を提供しているといっても過言ではない」というわけである。
 
 
という見解を紹介しつつ、身近な事例をお話しする。
 
信頼に足る科学者グループがある種の化合物を発見。ミトコンドリアを活性化する長寿遺伝子を直接または間接的に賦活するもの。その化学構造から副作用の発現はほとんどないと考えられる。
 
専門医と討論・考察した結果、糖尿病、神経変性疾患、心疾患などに加えて加齢に伴った疾患の予防にも応用できるとのこと。インビトロの実験を終え、インビボの実験に入りたいのだが、資金がない。そこで、いくつかの企業に支援を仰ぐべく説明のチャンスを求めて居るが、なしのつぶて。
 
日本の企業はまるでイノベーティブではない?(このままであれば、この科学者グループは外国企業に話を持っていきかねない)。日本の企業は、その臆病を拭い去れるような他からのリスク分散策がなければ動こうとしないのであろうか。
 
 
 
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岡光序治(会社経営、元厚生省勤務)

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