コラム

    • 園芸福祉

    • 2017年05月16日2017:05:16:13:27:56
      • 岡光序治
        • 会社経営、元厚生省勤務

我が家の小さな裏庭においてもムスカリが咲きチューリップも開き大根の残党が首をもたげ玉ねぎが順調に育っている。種をまき、苗を植え、思い出してはあわてて肥料や水をやる。世話らしい世話もしないのに、植物はちゃんと答えてくれている。
 
こうしたささやかな体験から、園芸福祉に興味を抱き、日本園芸福祉普及協会のトップをつとめている知人の大学教授にそれについて尋ねてみた。よく興味を持ってくれたと言いながら、自ら監修に当たった『園芸福祉入門』(日本園芸福祉普及協会編、創森社、2007)とバイブル的存在とのコメントをつけて『植物と人間の絆 Green Nature Human Nature』(チャールズ・A・ルイス著 吉長成恭監訳、進藤丈典 篠崎容子訳、創森社)という2冊の本をくれた。
 
これらを材料に以下、園芸福祉について私見を述べる。
 
 

◆園芸福祉の定義

 
『園芸福祉入門』の冒頭、監修者の一人である進士五十八先生は、「園芸福祉」について次のように述べておられる。
 
“鉢植えなど身近な緑(ペットの緑)、庭や公園の緑(家畜の緑)、山林の緑(野生の緑)、いわば小自然・中自然・大自然の3つの緑とのバランスのとれた関係が、人間生活の健全性の指標になる。その中で、より親近感のある小中自然とのふれあいが「園芸福祉」にあたる。・・・果樹、野菜、花卉を手入れし、育て、収穫し、食卓にのぼらせ、生活を彩る。その全過程で、親子、近隣、趣味仲間と交流する。いわば仲間づくりが進み、生きる悦びとともに健康生活も手に入る。そして、その結果が福祉施設もしくは地域の美化や活性化に貢献する方向での活動となる。”
 
“これからの時代は、美しいもの、優しい人など、モノやヒトの価値に気づく感覚や能力(=感性)、それに主体的に誰かの役に立つ活動をしたいと願う心(=ボランティア精神)が大切”と。
 
 

◆人間と植物の繋がり

 
人間を含む生命体は、地球誕生以来何十億年もの間、自然との生活を通して進化してきた。ヒトも例外ではない。
 
進化の過程においてヒトは「種」として生き残りをかけ、戦い続けてきた。幸い、大きな脳を発達させることに成功し、状況を分析し、判断し、先を見通す能力が身に着いてきた。生きるためには、自分が置かれている環境が好ましいかどうかを見極めることが大切で、ヒトは身の回りの環境に手掛かりを求めざるを得ず、景観を読み解かねばならなかった。そして、幾多の経験から、緑の環境は人間の生命を育てていくのに適していて生存に必要な情報を提供してくれていることを学んだに違いない。
 
人間は、植物との絆を感じ、心が落ち着く。植物との接触によって人間性の回復も感じることができる。
 
こうしたことは、多分、進化の過程で最も慣れ親しんだ緑の自然景観が遺伝的にインプットされているからであろう。(『植物と人間の絆』から)
 
 

◆人間は自然界の一構成員

 
人口増加に必要な食料を確保するために、人間は荒野を開き、管理し、支配していった。緑の自然は人口爆発によって容赦なく破壊されてきている。
 
多くの人々は、自然は自分たちの利益のために使われる資源であると信じている。そして、生活の場所をレンガ、石、ガラス、コンクリート、アスファルトで構成される都会に移した。
 
都会には自然はほとんど残っていない。長い年月、自然に囲まれて生活してきた人間にとって、例外を除き、都会はストレスに溢れた場所といえる。人間性の回復の源泉である自然を断ち切ったのだから、都会のうち特にコンクリートに囲まれて日常生活を行う場所のいくつかが潤いのない、すさんだ、犯罪や異常行動の巣窟と化すのは避けられない面があると想像できる。
 
ということで、われわれは、自然に対する姿勢を変えなければならない。人類中心的な考え方から脱皮する必要がある。
 
「人は自然と関係なく存在しているのではないこと、人はただ単に、信じられないくらい多様な自然界の一構成員であるという現実、自然は人間なしでも存在できるけれども、自然なしでは人は何もできない」(シアトルの西のベインブリッジ島にあるブローデル保護地の趣旨から)ということばを噛みしめてみようではないか。
 
 

◆園芸福祉プラスα

 
進士先生の「園芸福祉」のお考えにプラスして、以下の提案をしたい。
 
●植物に対する感謝の念を育む。
地球上で植物だけが太陽エネルギーを光合成によって変換して蓄える能力を有している。食物連鎖の出発点は植物という事実を再認識すべき。地球上のあらゆる生命は植物に依存し、人間は植物からスタートする食物連鎖の頂点に立つことを許されている存在だ。この現実に感謝しなければならない。
 
●植物と自然の声を聴く感性を養う。植物が演じている魔法を解く能力を開発する。
野外活動体験学習―例:アメリカのアウトウォード・バウンドーを世界的に実践。野生を体験する環境と実習体制を整備し、自然に学び、自然を守る活動に繋げる。
 
●人口光合成技術の開発し普及させる。
人口光合成技術を食料確保策と位置づけ、この技術の開発と普及を世界的に行う。自然保護以外の森林伐採はすべて原則禁止する。
 
 
 
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岡光序治(会社経営、元厚生省勤務)

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