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    • コンゴ民主共和国でエボラ出血熱が再流行

    • 2017年05月30日2017:05:30:08:46:13
      • 外岡立人
        • 医学博士、前小樽市保健所長

コンゴ民主共和国(以下コンゴ)でエボラ出血熱の発生が再び確認された。本年4月に入ってからであるが、既に数十人の感染疑い者が報告されている。感染疑い例を含めて4例が死亡した。
 
2014年から2015年にかけて西アフリカ(ギニア、シエラレオーネ、リベリア)でエボラ出血熱の大流行が発生、11,300人を超える死者が出た際、世界的に拡大する脅威が専門家の間で懸念された。
 
その流行期間中、発生国の医療保健担当者から多くの死者がでたが、世界中から駆けつけた”国境なき医師団”をはじめとする医療・人道支援団体の必死の活動により、2015年秋に約半年間の大流行がピークを越えて終息に向かった。
 
しかし、 WHOや米国オバマ政権の対応は完全に遅れた。彼らが支援に力を注いだ頃には、流行は現地の医療担当者と海外からの支援団体の努力で、すでにピークを越えていた。死者の多くに現地の医療担当者が含まれていた。
 
 

◆エボラ出血熱パンデミックの可能性

 
エボラ出血熱はアフリカの密林の中に生息するコウモリが、そのウイルスの感染源となっている可能性が指摘されているが、そうした環境下でサルなどの哺乳動物が感染している。
 
密林奥地に住む人々はサルを含む野生動物の肉を食べることでウイルスに感染することが多く、感染した患者は体液を介して看護にあたる身内や現地の医療担当者にウイルスを感染させる。特に埋葬の儀式などで多くの親族や近隣に住む人々に感染している。 致死率は発生地域により異なるが、20から50%を超える。
 
エボラ出血熱の病原体であるウイルスは1976年に、初めての流行が起きたコンゴ民主共和国(旧名ザイール)で確認された。コンゴではそれ以来7回の流行が起きているが、最後は2014年8月であった(その後、西アフリカでの大流行が起きたが、それはコンゴの流行から引き続いたものではないとされる)。
 
エボラ出血熱は、アフリカの奥地で野生動物の間でウイルスが広がっていることから、いつ人が感染してウイルスが都会に広がってくるか、WHOをはじめとして世界の公衆衛生専門家、そして現地の医療担当者の間での警戒が続けられてきていた。
 
西アフリカでの大流行の後、2015年には、米国や欧州にも同ウイルスが発病者を通じて広がる危険性があった。そのこともあり、エボラのパンデミック発生の可能性はあり得ると、世界の専門家たちは警告し続けている。
 
 

◆そしてコンゴでエボラ再び

 
そうした中、再びコンゴでエボラ発生の報告が、同国奥地の村から発信されたのである。2017年4月22日に発生して3人が死亡したと、WHOから発表された。
 
発生した村はコンゴの奥地にあり、四輪駆動車も入れないような道しかなく、現地までの機材や医療用品の運搬には多大な困難を極めるような地である。5月上旬に、WHOやコンゴ政府当局者、国際NPO団体などが現地に向かっているとメディアから報告が相次いだ。
 
分離されたウイルスはザイール株で先に西アフリカで流行した株と同じようだ(エボラウイルスには数種類の株が存在している)。
 
幸いなことに、この株に対して先の西アフリカでの流行後に、メルク社が緊急用に30万接種量の実験的ワクチンを製造している。WHOはコンゴ政府と対応を協議しながら、必要と判断された場合医療担当者を中心にワクチン接種を考えているようだ。
 
ワクチン(rVSV-ZEBOV)の効力は相当高いことが既に確認されており、ワクチン使用により現在流行し始めたコンゴにおけるエボラ拡大が早急に押さえ込まれることが期待される。
 
ワクチンという強力な武器を保有しているせいか、直近のWHOの発表はコンゴの流行は予想したほど拡大しない可能性があると、やや楽観的なニュアンスで伝えられている。
 
 
【参照記事】
 
5月12日
New Ebola outbreak declared in Democratic Republic of Congo, Washington Post.(米国)「コンゴ民主共和国で新規にエボラ出血熱が発生、新たな流行が始まる危険性」
https://www.washingtonpost.com/news/to-your-health/wp/2017/05/12/new-ebola-outbreak-declared-in-democratic-republic-of-congo/?utm_term=.0f63f27e568a
 
5月14日
Ebola: WHO declares outbreak in DR Congo, BBC News.(英国)「エボラ:WHOがコンゴ民主共和国での発生を発表」
http://www.bbc.com/news/world-africa-39899406
 
5月17日
WHO prepares experimental Ebola vaccine for possible first use in Democratic Republic of Congo, STAT.(国際)「WHO、実験的エボラワクチンをコンゴ民主共和国に初めて使用する可能性」
https://www.statnews.com/2017/05/16/ebola-drc-vaccine/
 
 
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外岡立人(医学博士、前小樽市保健所長)

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