コラム

    • 介護の連携について――経営サイドから

    • 2017年08月01日2017:08:01:09:07:31
      • 岡光序治
        • 会社経営、元厚生省勤務

◆はじめに

 
去る6月開催された「日本老年学会」での「医療介護情報から見た将来」というテーマの講演において、松田晋哉教授(産業医科大学)は、連携について次のように述べている。
 
“脳血管障害、慢性心不全、骨折、肺炎という後期高齢者がなりやすい4つの病態が増えていく。脳梗塞で急性期病院に入院した患者の約4割が半年前にすでに介護保険を利用していた、大腿骨頸部骨折でも入院前に約6割が介護保険を利用していた。つまり、患者の流れは、1次医療から2次、3次医療という経路ではなく、介護の現場から直接、急性期病院へ、とか、認知症になると急性期病院からいきなり介護施設へ入っている。つまり、急性期、回復期、慢性期、診療所、在宅、介護施設が同じ平面上にあり、そこを行ったり来たりしている。こうした患者の流れからすると、医療連携をピラミッド型で考える時代ではなく、医療と介護を同じ平面上で、ネットワークで考えていかねばならなくなっている。
 
一番大切な機能は、「連携」であり、病院であれば地域連携室、医療と介護の連携であればケアマネジャー、それらの入り口として診療所の医師の調整機能が重要となる。患者を必要なサービスに適切に繋げること、この機能を地域にどのように入れ込んでいくのかが重要になってくる。”
 
 

◆広島での経験

 
松田教授は、福岡のデータをもとにお話されている。介護の連携について、筆者は広島での経験を例に語らせてもらう。
 
対象地域は、市の中心部ではなく周辺部の準農村地帯。そこでは、地域包括支援センター(ケアマネ配属)は、高齢者を適切なサービスに繋ぐのではなく、当該支援センターを傘下におく法人が経営する一連の医療・介護施設の中での“行ったり来たり”をプラン、対象者への支援に主眼は無く、その法人所属施設への患者囲い込みに重点が置かれているかのように見える。
 
お陰で、筆者の関係している事業者が運営している小規模多機能型居宅介護施設の過去1年間の登録者はゼロ(いうまでもなく、包括支援センターから紹介事例さえ1例もない)。もちろん、地元の関係部門や関係者にはPRは行ってきたが、聞いてはくれるものの具体的な登録につながらない。事情を市の担当部署に説明し、地元でその存在と役割を知ってもらう手段や運営が可能になる方法なども照会したが、適格な指導はない。登録者ゼロでは、どうしようもなく、仕方なく市に休止願を出したところ、意外にもすんなり受理された。その際、市の担当者は、お宅には訪問系がないからね、と、小規模多機能は類似のものに比し利用料が高くなるからね、といわれた上に、廃止したら3年間はペナルティーで同種のものは開設できませんので、と念押しもされた。地域包括、適正配置、資源の活用と連携という視点は微塵も感じられなかった。
 
この事業者が開催した他の施設に係る「運営推進会議」において小規模多機能の置かれている状況をも説明し、休止届が受理されたことも報告した。その席には、包括支援センターの担当者も出席していたので、当該サービスを必要としている高齢者がいるのかどうか、いるのなら当方への登録につながるような情報発信などの協力を要請したが、確たる回答は無し。しかし、同席していた他の居宅系の関係者からは、この地域においても小規模多機能は存在意義があり、是非、再開してほしいとの発言があった。
 
また、この事業者が所属しているグループは、市の人口周密地区でも地域密着型サービスなどを展開しているが、この地域の包括支援センターのケアマネは、センターを所有する法人内施設間を定期的に異動、施設選択をしなければならないケースにおいては当該法人の関係施設の利用を優先している状況にある。
 
病院を持たない、比較的規模が小さく、包括支援センターを持たないサービス提供事業者は、自己努力のみで自分たちの存在を知ってもらい、利用者を探すしか道がないように見える。利用者への公平な情報発信と紹介は無く、利用者は包括支援センターの誘導のまま(まるで昔の措置制度のように)施設選択を強いられている感がする。連携は言うのみ。
 
 

◆グループホームのユニット数

 
「規模」に関連して、グループホームのユニット数についても論じたい。
 
平成21年10月、緊急雇用対策がまとめられ、介護分野においても未来の成長分野として雇用創出の推進を図ることとし、認知症対応型共同生活介護事業所(グループホーム)の共同生活住居を2ユニットから3へ拡大し、整備の促進を図ることにより、雇用の創出に努めることにされた。(雇用対策からの発想で、利用者の便益ないし効率的なサービス提供からの考えではない。)
 
この扱いは、大都市部の用地確保の困難な「既成市街地等」(租税特別措置法第37条第1項の表に規定する区域)に限定。もちろん、広島市は、対象外。
 
これには、大いに疑問がある。なぜ、既成市街地等のみなのか?
 
必要なサービスが必要とする人のところに届くように、生活圏を前提にその地域で介護サービス提供体制を整えようとするならば、違った基準になると思われる。
 
また、整備の必要性があるなら、新規に施設を作るよりは増設する方が効率的だし安上がりだ。
 
グループホームのユニット数が2から3に増えたとしても、3になったら家庭的な雰囲気がなくなるものでもあるまい。国の示す方針や自治体に対する指導からは、各事業所の規模を小規模にしておきたいかの意向が感じられるが、根本的な考え方は明らかにはされていない。
 
利用者の便益に関する実情を知っているのは地元自治体である。3ユニットを認める判断は、地元の自治体に任せていいのではないか。
 
 
 
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岡光序治(会社経営、元厚生省勤務)

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