コラム

    • 西アフリカのシエラレオネで発生した大自然災害

    • 2017年09月12日2017:09:12:09:37:26
      • 外岡立人
        • 医学博士、前小樽市保健所長

8月14日、3日間の豪雨の後、巨大な地滑りがシエラレオネの首都フリータウンの周辺で発生。国家的緊急事態となった。アフリカで発生した大災害として、記憶に残る最大のひとつとなった。
 
大雨の後、フリータウン郊外のシュガーローフ山の一部が崩れ、丘の上にあるリージェント地区の住宅を飲み込んだ。犠牲者の多くは就寝中だった。
 
同日リージェント地区を訪れたコロマ大統領は「我々を圧倒する惨状だ。いくつものコミュニティが丸ごと失われた。支援を喫緊に必要としている。」と涙をこらえながら述べた。
 
 

◆国際報道の関心

 
惨事の中身が分かってくると共に、シエラレオネの緊急サポートを求める声が世界に発せられたが、反応は多くないようだ。著名人の訴えやコンサート、または巨額の支援金援助キャンペーンなどは見られず、人道支援団体による典型的支援要請の声だけが響いている。
 
国際報道の関心は、数日後に発生したバルセロナのテロ事件に移り、シエラレオネの惨事を伝える情報は極端にその数が減った。同国は西アフリカに位置する人口600万人の小国であり、世界最貧国のひとつに挙げられる。メディアにとってはニュース性の乏しい国と思われる。
 
被災直後から、人々は土砂を素手で掘りながら肉親の遺体を探し続けた。土砂に埋まった遺体の多くは破損しており、そのため災害発生から1週間経過しても正確な死者数は分からなかった。 同国の発表では、少なくともこれまで500人が死亡し、800人を超える人々の行方が分かっていないようだ。さらに2万人が家を失った。
 
国際的支援の第一陣として、外国の市民援助を担うUSAID(米国国際開発庁)が8月21日に提供したのはわずか10万ドル(1,000万円)。それに対し、米国連邦議会の議員たちはすぐに2千万ドル(20億円)の追加援助を行なうように求めている。カナダの人道支援基金は27万5千ドル(2,750万円)提供している。かっての植民地支配国であった英国は8億円提供している。
 
他にシエラレオネの中国大使によると、地域の中国企業や団体からの寄付に加え、中国政府は緊急支援として100万米ドルの提供を決めた。ガーナも100万米ドル相当の緊急支援を行った。
 
シエラレオネの大惨事について、日本国内では一部の報道機関が伝えた。しかし単発記事に過ぎず、国際情報としては非常に簡素なものだった。
 
類似の状況は以前から多く見られている。顕著な例として、3年前シエラレオネを含む西アフリカで発生した史上最大のエボラ出血熱流行があげられる。1年半で1万人以上が死亡した。医療設備の乏しい中、必死の治療と看護が現地の医療担当者と国際的人道支援団体により行われた。その中から数百人の死者が出ている。
 
国連や米国の対応は非常に緩慢で、人道支援団体から非難が集中した。国際的報道機関は頻繁に正確な状況を伝えていたが、日本では残念ながら情報量は非常に少なく、社会的関心をそれほど呼ばなかったばかりか、驚くことに医師の間でも話題になることは希だった。
 
 

◆死の階層構造

 
「死には階層構造がある。」と、マレンス・バートウイリアムスさんは言う。彼女は、シエラレオネ生まれのドイツ人の作家でまた映画製作者でもある。
 
8月17日に起きたバルセロナのテロに際しては、力強い表現で事件が非難され、デモ行進が行われ、フェースブックも反応し、大きなテロキャンペーンが行われた。それに対し、シエラレオネの大災害では、表現されるのは死亡者数だけだ。彼女はそう語っている。
 
大災害やテロが起きたとき、それに対する世界の反応は、起きた地域によって変わるという事実は何も珍しいことではなく、以前から続いている。彼女はそう語る。アフリカ人の死の場合、いつもその数しか欧米では関心が持たれない、と言い切った。
 
今でも、南スーダン、ナイジェリア、ソマリアでは2000万人が飢餓で苦しんでいる。また戦争が続き、コレラが流行しているイエメンに対しては国連からの援助は緩慢で、一人あたりわずか43ドルの支援額に過ぎない。
 
シエラレオネの大災害は、残念ながら日本には伝えられてないのに等しい。またそうした国がアフリカに存在していることを知らない人々も多い。
 
状況は国際的にも程度の差はあっても類似している。途上国の災害は先進国にとってニュース性が低いのである。
 
最近の英国BBCニュースで、次のような興味あるタイトルで話題が投げかけられている。
"Houston floods, but what about all the other disasters?"(米南部の洪水を報道しすぎか、他の大災害はどうした?)
 
 
【参照記事】
 
 
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外岡立人(医学博士、前小樽市保健所長)

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