コラム

    • 安かろう悪かろう

    • 2017年10月31日2017:10:31:06:08:54
      • 楢原多計志
        • 関東学院大学 非常勤講師

失礼な話だ。ある介護専門紙が11月1日解禁の外国人技能実習生(介護)受け入れの記事に「安かろう悪かろうの人材の受け入れにならないよう注視していく必要があるだろう」と書いた。
 
悪評の絶えない制度には違いないが、これを読んだ外国人とりわけ滞在中の実習生はどう思うだろうか。制度の是非はともかく、外国人労働者への誤解や偏見を助長するような書き方は、たとえ注意喚起のつもりであっても、感心しない。
 
 

◆不合格で帰国者続出?

 
「製造業などは物が相手だが、介護は初の対人サービス。何が起こるのか予想がつかない」。厚生労働省の担当職員は本音を漏らす。
 
外国人技能実習制度の対象に「介護」を追加する厚労省令が施行された。また厚労省は11月1日の施行日に合わせて介護職固有の要件を上乗せした基準を告示し、その解釈などに関する通知を出した。技能実習指導員や受け入れ施設の対象、入国後研修、実習内容、日本語能力、監理団体、介護保険算定などについて介護独自の要件を示した。
 
だが、介護事業者から聞こえてくるのは「要件が多すぎる」「無理難題な点がある」「国は本気で外国人労働者を受け入れる気がない」など不満の声。
 
例えば、実習生の日本語能力レベル(試験)の要件への不満が強い。厚労省は「入国時はN4(日常的な日本語をある程度理解)相当、2年目以降はN3(基本的な日本語をある程度理解)相当」とし、1年を経過してもN3相当の日本語能力がないと帰国させる。介護事業者は「N3は日常会話ができるレベルに達していないと合格は難しい」と言う。
 
また別の事業者は「日常のケアはN4で十分だ」と言い切る。N4で入国した場合、日本語講習は240時間とされたが、事業者は「その時間でN3に合格するのは相当難しい。受験せず、帰国してしまう実習生が多く出るのでは」と危惧する。
 
 

◆240時間では無理?

 
介護業界で関心が高いのが、介護報酬との関係だ。厚労省は介護報酬を算定できる要件として「実習開始から6カ月以降(研修を2カ月とすれば、実質的には8カ月以降)または日本語能力試験N2(より広い場面での日本語をある程度理解)以上」とした。事業者の間では「N2以上はハードルが高すぎる」と極めて不評。関心は「実習開始から6カ月以降」に向かう。
 
そこでも不満が噴出している。「なぜ、6カ月以降なのか、根拠がない」「EPA(2国間経済連携協定)介護福祉士候補生を基準に単純に期間を定めたのではないか」「実習生の上達に応じて算定する方法が妥当だ」…。2018年度介護報酬でマイナス改定が予想される中で介護人材の確保に追われる介護業者の不安と不満が渦巻いている。
 
 

◆誤報と虚報

 
外国人労働者を支援しいているNPО法人によると、過去10年間に所在不明となった技能実習生は政府の統計で2万5千人以上、実際には5万人を超えるという。理由は様々だが、低賃金や残業代未払いなど受け入れの問題が圧倒的に多い。
 
NPО法人の役員の「日本人労働者にはやらせないような過酷な労働環境で働かせ、いなくなると、『高賃金に釣られて逃亡した』なとど非難し、経営責任を認めようとしない。それをマスコミが実しやかに報道する」と指摘。「安かろう悪かろう」を生み出しているのは受け入れ側やマスコミの誤報・虚報に大きな原因があるという。
 
 
 
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楢原多計志(ジャーナリスト)

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