コラム

    • 報道機関の正しい情報を求める

    • 2017年12月12日2017:12:12:06:33:56
      • 外岡立人
        • 医学博士、前小樽市保健所長

◆不正確なNHKのインフルエンザ報道

       

11月12日朝のNHKニュースでインフルエンザワクチン配布の遅れに関する情報がなされた。配布の遅れには理由があるが、関連する専門家の説明が不可解であった。厚労省のワクチン準備の遅れを擁護したかったのだろうが、科学的でない発言であった。
 
「インフルエンザの流行は1月なので、それまでに接種すれば良いので心配はない、そしてワクチン接種が遅れても、マスク着用と手洗いをすることで予防は可能」とも語られた。残念ながら、これらは医学的に真実ではない。
 
集団免疫を作ることも、ワクチン接種の主な目的のひとつである。流行を防ぐためにより多くの人に接種するのである。ちなみに、米国では10月中に接種を済ませることを推奨しているが、流行のピークは例年1月から2月であり日本よりやや遅い。さらに、感染したら重症化しやすい妊婦、高齢者、慢性疾患保有者、高齢施設入所者、乳幼児等には、より早期の接種を呼びかけている。
 
インフルエンザ予防のためのマスク着用は、米国やカナダ、英国等公衆衛生学の先進国では効果が無いことから、以前から推奨されてない。外出時の頻回な手洗いや、周辺にウイルスを広げないために発病者の自宅への自己隔離(安静)などが、世界標準の公衆衛生学に基づく予防法である。
 
NHKの朝のニュースは社会への影響力が大きい。正しい啓発を求めたい。
 
 

◆鳥インフル、気になる報道姿勢

 
2017年11月初旬以降1ヶ月間に、宍道湖周辺で見つかった渡り鳥の死骸7羽から、高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N6が検出された。越冬のために大陸から飛来してきて息絶えた渡り鳥たちである。
 
H5N6ウイルスは高病原性であるため、感染した鳥や家きんの多くは衰弱死する。また、2014年に中国で発生して以来、17人以上に感染して、10人を死亡させてきた実績には着目すべきである。今シーズンも中国で同ウイルスによる死者が出ている。人が大量にウイルスを吸い込むと、肺の奥で感染する危険性が高い。
 
韓国では、昨シーズン(2016年〜2017年冬期間)家きん産業史上最大の被害を出している。我が国でも多くの渡り鳥の感染死が見られたが、対策が効を奏して、感染養鶏場は10カ所前後と少なかった。
 
また2016年末、韓国でネコ数匹が感染死したことは重要な事実である。感染野鳥の死骸を食べたことが原因と考えられている。
 
野鳥からの感染ルートしては、ウイルスを含んだ排泄物や死骸からの直接感染の他に、それらが乾燥して、空中に小粒子状になって舞い上がり、ウイルスの空気媒介感染を起こす可能性も指摘されている。
 
今後、H5N6ウイルスが渡り鳥により全国各地へ広がることが懸念される。同時に気になるのは、大手メディアがこれら情報を発信していないことである。養鶏業界での風評被害を避けるため、自主規制しているのであろうか。もしそうであるなら、報道機関の信頼性が問われる。
 
 
 
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外岡立人(医学博士、前小樽市保健所長)

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