コラム

    • 多職種協働ケアマネジメントの推進に向けて--その2(全3回)--

    • 2018年03月13日2018:03:13:05:55:50
      • 川越雅弘
        • 埼玉県立大学大学院 保健医療福祉学研究科 教授

■はじめに

 

前稿では、85歳以上高齢者(以下、超高齢者)が2040年にかけて急増するといった人口構造の変化を解説した上で、多領域に課題を有する超高齢者に医療・介護専門職が適切に対応するためには、各専門職の得意分野、見立ての能力を共有・総合化し、ICFの6要素(生活機能3要素(心身機能/活動/参加)と関連因子(健康状態/個人因子/環境因子))を俯瞰して捉えた上で、ケアマネジメントやサービス提供を行う必要があることを述べた。
 
さて、ここ数年、数多くの事例検討を多職種で実施してきたが、そのなかで、①ケアマネジャーは、個別性の高いICFの領域(個人因子/環境因子/参加)に対する関心は高いが、特に、「活動」と「健康状態」に対するアセスメント力、課題認識力、要因分析力には課題が多いと感じている。
 
そこで、本稿では、「活動」と「健康状態」に焦点を当てた上で、これら領域に対するケアマネジメント上の課題と改善策について、2回に分けて言及したい。
 
 

■「活動」に対するケアマネジメントの現状と課題

 

1)課題設定上の課題(なぜ、サービス指向型ケアマネジメントが展開されるのか)
 
ケアプラン第2表の活動に関する設定課題をみると、“入浴ができない””調理ができない”といった記載がよく見受けられるが、こうした記載は、利用者本人からインテークした際に聞かれた「生活上の困りごと」をそのまま反映したものと考えられる(利用者本人の活動障害に関する主訴=課題としてしまう)。
 
ところで、一般的に、対策は課題の裏返しとなる。そのため、“入浴ができない”と課題を設定すると、対策は“入浴ができるようにする”となり、その結果、“入浴できるためには何のサービスが必要か”を考えるといった、サービス指向型の思考過程に陥りがちとなる。
 
「何のサービスを入れるか」を意識したケアマネジメントが散見されるのは、「利用者本人の主訴である活動障害(例:入浴が出来ない)を課題として設定し、活動を構成する動作分析を行わないまま、活動障害自体への介入方法を考える」といった思考プロセスに原因があると考える。
 
2)アセスメント実施上の課題
 
入浴ができているか否かであれば、初回面接時の情報収集で十分把握可能である。したがって、“入浴ができない”と課題を設定し、入浴を行うためのサービス選択を考えるといった「サービス指向型ケアマネジメント」を展開するのであれば、入浴を構成する様々な動作(歩行/立位保持/座位保持/移乗など)のアセスメントは必要ないが、実際にはアセスメントは行われているのである。
 
この問題の所在は「活動に関連するアセスメントが課題認識、課題設定、介入方法の検討に活用されていない」ことにあり、その原因は「アセスメントの目的が理解されていない」「アセスメントすべき項目がイメージ出来ていない」「目的を理解した上で、意図をもったアセスメントが行われていない」ことにあると考える。
 
 

■「活動」に対するケアマネジメントのあるべき姿とは

 

活動に対するケアマネジメントでは、利用者本人の関心活動・意向を確認した上で、対象となる活動を構成する様々な動作のアセスメント~出来なくなっている動作の「現状」「改善可能性」「今後の見通し」の評価~阻害要因の分析~様々な介入の実施を通じて「出来る活動」「している活動」に変えていくことにある。
 
これを実現するためには、
(1) 利用者本人が関心を抱いている活動内容、期待している活動レベルを把握する
(2) 活動を構成する一連の動作群のどの動作が出来なくなっているのかをアセスメントする
(3) (2)の動作が出来なくなっている要因の分析、改善可能性、今後の見通しの推察を行う
(4) 利用者本人の意向、期待値、今後の見通しをもとに、目標を設定する
(5) 目標達成に向けた介入方法を検討し、実施する
(6) 一定期間後、介入効果を確認し、必要に応じて計画の見直しを行う
といった手順を展開する必要がある。表1に、「活動」レベルの維持・向上を目指したケアマネジメントの展開方法の私案を示す。
 
表1.「活動」レベルの維持・向上を目指したケアマネジメントの展開方法について(私案)
 

■「活動」に対するケアマネジメントの改善に向けて

 

1)課題認識・設定プロセスを見直す
 
ケアマネジメントでは「課題をどのように認識・設定するか」が重要なポイントとなる。課題設定が間違っていれば、対策も効果を発揮しない。
 
さて、活動に対する現行のケアマネジメントの課題を整理すると、
(1) 利用者本人の主訴である活動障害を課題として設定し、動作分析を行わずに活動障害自体へのサービス介入を考えるため、実質アセスメントが課題設定/対策検討に活かされていない
(2) 何のためにアセスメントを行うかが理解されておらず、アセスメント自体が目的化している場合がある
(3) 目的に応じて何をアセスメントすべきかが理解されていない
などとなる(その結果として、思考がサービス指向型になっている)。
 
これを改善するためには、主な活動の構成動作を整理した上で、これら動作のアセスメントを行うといった手順に変えるべきと考える(手段であるアセスメントから入るのではなく、マネジメントの対象となる活動は何か、これら活動を構成する動作は何かを意識した上で、動作のアセスメントを行うといった思考手順を徹底する)。
 
2)リハビリテーション(以下、リハ)専門職との連携強化によるマネジメント力強化
 
課題を認識するためには、対象となる活動の構成動作のうち、できない部分を特定した上で、①現状、②改善の可能性、③今後の見通しを評価する必要がある。また、対策を検討するためには、生活障害/動作障害を生じさせている要因を分析する必要がある。
 
厚生労働省が開発した課題整理総括表(図1)は、生活障害を対象に、①現状/改善可能性/今後の見通しの評価、②生活障害の要因分析を行うもので、こうした手順を通じて、ケアマネジャーの課題認識力の向上を図るものであるが、①~②全てを福祉系中心のケアマネジャーだけで行えるものではない。これら評価を得意とするのがリハ職であり、リハ職との協働の下、課題整理総括表を完成させていくといった姿勢、取組が必要である。
 
図1.課題整理総括表
 
 

■おわりに

 

本稿では、「活動」に焦点を当てた上で、同領域に対するケアマネジメント上の課題と改善策について言及した。改善ポイントは、①手段から入りがちな現行の思考プロセスを、目的を意識した上で手段を考える思考プロセスに変えること、②課題を、活動障害自体に置くのではなく(サービス指向型マネジメントからの脱却)、活動を構成する動作障害に設定することである。 
 
次回は、「健康状態」に焦点を当てた上で、同領域に対するケアマネジメント上の課題と改善策について言及したい。
 
 
 
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川越雅弘(埼玉県立大学大学院 教授)

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