コラム

    • 多職種協働ケアマネジメントの推進に向けて--その3(全3回)--

    • 2018年03月20日2018:03:20:06:07:20
      • 川越雅弘
        • 埼玉県立大学大学院 保健医療福祉学研究科 教授

■はじめに

 

前稿では、ICFの「活動」に焦点を当てた上で、これら領域に対するケアマネジメント上の課題と改善策について言及した。今回は、「健康状態」に焦点を当てた上で、①課題としてよく見受けられる「再発予防」、②今後の見通しを持った上での対応が強く求められる「進行性疾患」 に対するケアマネジメントのあり方について言及したい。
 
 

■「再発予防」に対するケアマネジメントの現状と課題(心筋梗塞を例に)

 
1)再発予防に対するケアプランの内容と問題点
 
心筋梗塞の再発予防という課題に対する、ケアプラン第2表の短期目標をみると、①治療が継続できる、②服薬が指示通りに行われる、③医師から指示された内容(食事/塩分/水分摂取量、体重管理など)を守ることができるなどと記載され、これら短期目標に対するサービス内容及び実施者は、①定期的な通院の確保(家族が通院に同行)、②服薬管理(主治医、本人、家族、訪問看護師が実施)、③指示内容の順守(本人、家族、デイサービスが実施)で、ケアマネジャー自身の役割は、本人・家族・サービス事業所等からの情報をもとに通院や服薬状況の確認等を行うとなっている場合が多い。
 
問題は、服薬管理や指示内容の順守状況の確認はサービス事業所が実質行うため、ケアマネジャー自身が①服薬管理や指示内容を順守する上での留意点、②処方や指示の内容の意味、意図、理由について十分理解できていない、ないしは確認できていないケースが散見されることである。
 
2)再発予防に必要なこととは何か
 
誰が何を行うかの役割分担を考える前に、心筋梗塞の再発予防のためには何が必要かを、日本循環器学会など複数の学会が合同で作成した「心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011年改訂版)」をもとに整理すると、①危険因子である疾患の管理(高血圧/脂質異常症/糖尿病)、②生活習慣の改善(食事/運動/飲酒/禁煙/入浴/睡眠/ストレスなど)、③服薬管理となる。
 
3)再発予防に向けたケアマネジャーの役割とは
 
まず、ケアマネジャーが行うべきことは、主治医からの診療に関する情報の収集である。具体的には、
 ①発症の原因は何か(動脈硬化など)
 ②どのような治療が入院中に行われたのか(ステント挿入など)
 ③重症度はどの程度であったのか
 ④バイタル等の管理目標はどこに設定されているのか(血圧/血糖値/コレステロール値/体重など)
 ⑤日常生活で気を付けることは何か(塩分・水分・カロリー摂取量/運動/入浴/排泄/睡眠など)
 ⑥服薬内容及び服薬上の留意点は何か
 ⑦定期的に報告すべきことは何か
 ⑧どんな場合に連絡をとる必要があるのか(随時/緊急報告)
などの情報収集が必要であろう。また、主治医から収集した各種情報を関係者間で共有することも、ケアマネジャーの重要な役割の1つである。
 
上記ガイドラインを読んでいるケアマネジャーは非常に少ないと思うが、そのポイントを押さえておくと、主治医が行っている治療や服薬の内容、外来管理内容の理解につながるであろう。ケアマネジャー向け研修等で、主な疾患のガイドラインのポイントの解説が医師から行われると、医師とケアマネジャー間の相互理解や連携強化、ケアマネジメントの質の向上につながるものと考える。
 
参考までに、滋賀県介護支援専門員連絡協議会と作成した「虚血性心疾患の再発予防に向けたケアマネジメントチェック表」を示す(表1)。
 
表1.虚血性心疾患の再発予防に向けたケアマネジメントチェック表
 
 

■「進行性疾患」に対するケアマネジメントの課題(パーキンソン病を例に)

 
1)進行性疾患に対するケアマネジメントの特徴とは
 
虚血性心疾患や脳血管疾患の場合、「再発予防」が重要なケアマネジメント上の課題となるが、経過とともに病状や症状が進行していく進行性疾患(悪性腫瘍、神経難病、アルツハイマー型認知症など)の場合、今後の見通し(どのような症状・病状が生じてくるのか、どのような経過を今後たどるのかなど)をイメージした上でのマネジメントの展開が求められる。
 
2)進行性疾患に対するケアマネジメントでおさえておくべきポイントとは(パーキンソン病を例に)
進行性疾患のケアマネジメントにおいて、おさえておくべきポイントを、パーキンソン病を例に考えてみると、
 ①病気の発症のメカニズムはどうなっているのか(ドーパミンの減少に伴う運動指令の障害)
 ②主な症状は何か(運動症状(安静時の震えなど)、非運動症状(便秘など))
 ③どのような治療が行われるのか(リハビリテーション、薬物療法)
 ④重症度はどのように分類されるのか。また、どのように進行していくのか(Hoehn&Yahrの重症度分類、生活機能障害度)
 ⑤今後、どのような症状や病状が起こる可能性が高いのか(図1参照)
 ⑥今後、どのようなリスクが生じる可能性が高いのか(図1参照)
 ⑦今後、治療内容の見直しが必要になるのか(薬が効く血中濃度範囲の縮小と副作用の発生)
などが挙げられる。
 
図1に、パーキンソン病の一般的経過を示すが、こうした一般的な経過がイメージできていれば、起こり得る事象を想定した事前対応(準備など)が行えるようになる。
 
今後の見通しを持ちながら対象者に関わることに慣れている医療職と協働していくためには、医療職と同じようなリスク認識をもっておくことが重要となる。
 
図1.パーキンソン病の一般的経過とは
 
 

■おわりに

 

医療と介護の両方のニーズ及びリスクを保有する85歳以上高齢者が2040年にかけて急増するため、今後、包括的・継続的ケアマネジメントの推進がより一層求められることとなる。
 
福祉系出身者がケアマネジャーの約8割を占める現状において、こうしたニーズの変化に対応していくためには、ケアマネジャーと医療職(特に、主治医、看護師、リハ職)の具体的な連携・協働方法を提示し、効率的・効果的にマネジメント業務を展開できるようにしていくべきである。
 
現在のケアマネジメントプロセスでは、アセスメント項目を固定した上で(様式はいろいろあるが)、課題を抽出し、対策を検討する流れであるが、①対策がサービスの選択にとどまっている、②アセスメント自体が目的化している、③サービス選択が目的化していて、各専門職がどのような見立て(現状及び今後の見通し、要因分析、対策の検討)を行っているかを把握できていない(専門職に対する理解が深まらない)など課題が多い。
 
こうした手順ではなく、よくある解決すべき課題(例:再発予防)別に、アセスメント・情報収集すべき項目を整理し、なぜそれら項目をアセスメントすべきか(アセスメントの目的の明確化)、どのようにアセスメントするのか(方法)を提示しながら、目的意識をもったアセスメントを展開させていくことが、マネジメント力の強化につながるものと考える。
 
 
 
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川越雅弘(埼玉県立大学大学院 教授)

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