コラム

    • 地域支援事業の現状・課題と改善策 その2:地域ケア会議

    • 2019年03月26日2019:03:26:05:58:02
      • 川越雅弘
        • 埼玉県立大学大学院 保健医療福祉学研究科 教授

■はじめに

 
地域支援事業は、①総合事業、②包括的支援事業、③任意事業の3つで構成される。前稿では、このうち、総合事業に焦点を当てて、現状・課題と改善策について言及した。
 
本稿では、2015年の地域支援事業の見直しの中で、充実が図られた包括的支援事業(①在宅医療・介護連携の推進、②認知症施策の推進、③生活支援サービスの充実・強化、④地域ケア会議の推進)のうち、様々な地域課題の把握に活用可能な「地域ケア会議」に焦点を当て、現状・課題と改善策について言及する。
 
 

■地域ケア会議とは

 

1)2つの会議体で構成される地域ケア会議(図1)
 
地域ケア会議とは、高齢者個人に対する支援の充実と、それを支える社会基盤の整備を同時に推進することで、地域包括ケアシステムの実現・深化を図るための有効な一手法として、介護保険法にも位置付けられたものであり、個別事例の課題検討を図る「地域ケア個別会議」と、地域課題の解決に向けた施策や政策の立案・提言を図る「地域ケア推進会議」で構成されている。
 
2)各会議体の目的と期待される効果
 
地域ケア個別会議は、単に、多職種による事例検討を通じて個別の課題解決を図るだけではなく、これら検討を通じて、①自立支援に資するケアマネジメント力の向上、②地域支援ネットワークの構築、③地域課題の把握を図ることを、また、地域ケア推進会議は、このような個別ケースの検討の積み重ねによって見い出された地域課題を関係者間で共有した上で、不足している社会資源の開発、地域課題の解決のために必要な人材の育成、新たな仕組みづくりに向けた政策形成などにつなげていくことを目的としている。
 
地域ケア個別会議は、ケアプラン作成者とサービス事業所のスタッフが、多職種の多角的なアセスメントと支援方法を学ぶ場(Off-JT)であり、同会議で学んだ手法を他のケースにも応用することで、自立支援に資するマネジメントの推進とサービスの質の向上、サービス担当者会議の充実につながることが期待されている。
 
図1. 地域ケア会議とは(地域ケア個別会議+推進会議)
出所)厚生労働省:地域包括ケアシステムの構築に向けて、第46回介護保険部会(2013/8/28) 資料3より引用
 
 

■地域ケア会議の課題と対策

 

これまで、複数の自治体の地域ケア会議の立ち上げや運営に関わってきたが、その中で感じた課題と対策について私見を述べる。
 
【課題1】地域ケア会議の目的(目指す姿)が共有できていない
 
地域ケア会議は、その目的をどのように設定するかで、事例の選定も参加メンバーも運営方法も変わってくる。したがって、「何のための会議か?」「何を目指した事例検討なのか?」を参加者間で共有することが重要となるが、そこが曖昧なままで、会議を開催すること自体が目的化している自治体も少なくない。また、国は、自立支援を目的とした地域ケア個別会議の運営を推進しているが、「自立支援」という言葉は、それぞれの職種でイメージが異なるといった問題点がある。
 
昨今、独自の会議運営や民間企業との連携による総合事業の推進で注目を浴びている愛知県豊明市では、地域ケア個別会議を「ふつうの暮らしに戻す支援を皆で考える場」と設定している。様々な職種が集まる会議の目的を共有するためには、こうしたイメージしやすい平たい表現を各自治体で検討する必要がある。
 
【課題2】地域ケア個別会議の目的の設定が明確でない
 
多職種で事例検討する場合、その目的をどこに置くかで会議運営方法は異なる。もし、その事例の課題を解決することに力点を置くのであれば、1事例の検討時間は長めになり、検討できるケース数も少なくなる。他方、同会議を多職種のアセスメントの視点や課題解決策を学ぶ場(ケーススタディの場)と設定した場合、できるだけ多くの事例を検討したほうが良いという判断になり、1事例の検討時間を短く設定した運営方法を考えることとなる。地域ケア個別会議の先進事例である和光市でも、前述した豊明市でも、1事例20分程度で多くの事例の検討を行っている。
 
地域ケア個別会議では、提供事例に対する課題解決策への助言は当然行われるが、他のケースへの応用を視野に入れたケーススタディの場であることをより強調し、多くの事例検討を短時間で行うスタイルを、コストパフォーマンスの面からも推奨していくべきである。
 
【課題3】地域ケア個別会議への自治体職員の参加が少ない
 
地域ケア会議は、事例検討を通じて把握された地域課題の解決を推進会議で検討し、施策につなげていくために設置されたものであるが、委託先の地域包括支援センター中心で運営し、職員があまり参加していない自治体も少なくない。
 
自治体職員は、介護の現場に出る機会は少ないため、現場レベルで起こっている課題を認識する機会が持ちにくい。課題が正しく認識できなければ、課題解決のための効果的な施策は提案できないであろう。地域ケア会議の目的をもう一度理解し、課題把握のために地域ケア個別会議にできるだけ参加すべきである。また、国も、自治体職員が個別会議に参加することを促す仕組みを入れるべきと考える。
 
【課題4】医師を入れた地域ケア個別会議が少ない
 
地域ケア個別会議はこれまで要支援事例の検討を中心に展開されてきた。また、平日の日中開催のため、医師は実質参加しにくい状況に置かれていた。
 
ただし、「個別事例から課題を把握する」手法は、非常に汎用性の高いものである。例えば、認知症の事例を検討すれば、認知症ケアや支援の現状と課題が把握でき、様々な対策の検討につなげることができる。退院事例を検討すれば、病院とケアマネジャーの連携などに関する課題も明らかにすることができる。在宅医療・介護の連携、認知症施策の推進などを事業単位でバラバラに考えるのではなく、これら事業の課題を把握するための共通ツールとして地域ケア個別会議を捉えなおす必要がある。
 
当然、医療や医療職が関わるテーマ(例:在宅医療・介護連携、認知症初期集中など)の課題を明らかにするのであれば、医師も参加した形での会議を展開すべきとなる。
 
 

■おわりに

 

地域包括ケアも、同システムの構築から深化へ、さらには地域共生社会の実現へと向かっている。この地域共生社会の実現に向けた改革の4本柱の1つが「地域課題の解決力の強化」である。地域ケア推進会議も地域課題解決を目的としたものであり、地域ケア会議の手法は、地域共生社会の実現にも応用可能なものと言える。
 
このように、「個別事例の検討から地域課題を把握する」手法は汎用性が高いものではあるが、あくまで手段であり、その目的を明確にしたうえでの運用が必要となる。目的を明確化し、目的を達成するための目標を設定し、目標達成のための手段を考えるといった思考プロセスの強化も併せて行いながら、様々な事業の課題を明らかにすることができる地域ケア会議という手段を有効活用されることを期待したい。
 
 
 
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川越雅弘(埼玉県立大学大学院 教授)

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