コラム

    • 「ウソ薬」根絶の本気度

    • 2019年04月23日2019:04:23:09:40:59
      • 楢原多計志
        • 福祉ジャーナリスト

今夏の参議院選挙を前に首相官邸が忙しそうだ。自民党内には「安倍総理4選」の声も出始め、政策はそっちのけの感がある。
 
そんな中で医薬品の虚偽・誇大広告を規制したりする医薬品医療機器法(薬機法)の改正案が国会に提出された。効能や臨床データを偽ったり、誇大誇張したりして販売される、いわゆる「ウソ薬」は根絶されるのか。
 
 

◆「やり得」を容認

 

薬機法改正案の大きな柱は、(1)医薬品のデータを虚偽・誇大広告した製薬会社に課徴金を徴収する(課徴金制度の導入)、(2)薬局の機能に応じて「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」の名称を使えるようにする──の2点。
 
当然のことだが、製薬業界が高い関心寄せているのは(1)課徴金制度の方だ。世界有数の販売額を誇るノバルティスファーマの日本法人による論文データ改ざん事件が制度導入の大きな要因となった。
 
改正法が施行されると、データの虚偽や誇大広告が判明した場合、製薬会社に対し、対象期間中の売上額の4.5%の課徴金を課すことができるようになる。単純計算すると、100億円の売り上げがあった場合、課徴金は4億5千万円。また品質管理や安全性に法令違反があった場合、行政処分として責任役員を変更(更迭を)命じることができるようになる。
 
これまでデータ改ざんや誇大広告が判明する前に、大量に売り上げてしまえば、結果的に”やり得”になっていた。ノバルティスファーマにとどまらず、日本の有力メーカーでも改ざんや誇大広告が相次いでいる。厚労省の中央社会保険医療協議会(中医協)の審議でも課徴金制度の導入そのものに大きな異論は出なかったのは、「製薬会社の企業体質に問題がある」と認識し、「うそ薬」の跋扈を問題視したからだ。
 
厚労省は「一部に”やり得”になっていたことは確かだが、改正法が施行されれば、製薬会社にとって信用失墜だけにとどまらず、経営的に大きな打撃に繋がり、不正の抑止力になる」と説明している。    
 
 

◆高いハードル

 
だが、そう甘くはない。改正案のハードルが高いからだ。最も高いのは国会成立が流動的なことだ。与野党とも同改正案を重要法案とみておらず、法案審議の優先度が低い。今国会の会期は6月26日まで。7月の参院選を控え、いまところ、与党内に強行採決や会期延長してまで成立させる雰囲気はない。
 
また、データ改ざんや誇大広告が発覚しても、「改ざん・誇大」と認定(判断)するまでにかなり時間がかかることは、これまでの事例の経緯をみても、容易に推測できる。第三者機関が評価し、監視するというが、製薬会社が一切認めず、事実無根だとして提訴したりすることも十分考えられる。司法判断を待って課徴金を徴収するようでは、課徴金制度の意義そのものが問われる。つまり厚労省の医薬行政の力量が問われている。
 
改正案では、課徴金制度のほか、在宅医療を充実する観点から、患者の入退院時や在宅医療について医療機関と連携して対応できる「地域連携薬局」、また、がんなどの専門的な薬学管理が必要な患者に専門医療機関と連携して服薬指導する「専門医療機関連携薬局」という新類型の名称を使える認証制度を法制化することが盛り込まれた。いずれも都道府県知事が認定し、1年毎に更新する。
 
厚労省は「患者が自分の病状に適した医薬品を使えるよう、医療機関と一元的かつ継続的に対応できる薬局を整備する」なとど説明している。
 
「薬局」を機能に応じて分化し、在宅医療や専門医療を充実させる方向は前進だ。だが、患者、家族の視点からすると、「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」の違いを見分け、自分の意思で薬局を選ぶことが現実的に可能だろうか。
 
医薬分業の不便さもそうだが、薬局が乱立する大都市ならともかく、患者にとって医療過疎地での薬局分化にどれだけのメリットがあるのか、丁寧な説明がほしい。
 
 
 
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楢原多計志(福祉ジャーナリスト)

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