コラム

    • 安住の場のない高齢者、急増か?

    • 2019年05月14日2019:05:14:05:55:23
      • 岡光序治
        • 会社経営、元厚生省勤務

 
介護保険3施設、特定施設、グループホームの包括ケア型の新規供給は、2005年の8万戸をピークに、2006年の総量規制開始から減少に転じ、2018年には推定3万戸の供給量になっている。(田村明孝『月刊介護保険』2019年5月, No.279)
 
自治体が定める介護保険事業計画の包括ケア型の整備は、第3期から第6期まで、計画量に比べ、毎期5万人分が未整備とのこと。この間、療養病床が約10万床廃止されたことを考え合わせると、要介護者向けの居住系施設の不足は明らかだ。
 
 

◆サ高住の果たした役割

 

その穴埋めをしたのが高専賃やサ高住(編註:サービス付き高齢者向け住宅)といえそうだ。なかでも、サ高住は2012年の制度創設以来7年間で24万戸が供給されている。但し、供給量は年々減り続けており、2019年は1万戸程度と予測されている。
 
その理由は、類似の個別ケア型施設との入居募集競争が激化し、入居者確保のため家賃を含む経費水準を低く抑えねばならなくなり、施設の運営管理が難しくなってきたからと考えられる。
 
家賃などを低く抑えたサ高住が多くなるにつれ、本来、特養の入居対象となる程度の要介護者がサ高住に入居するようにもなってきた。
 
また、家賃引き下げ競争の結果、居室空間はますます狭くなり、下限の13㎡タイプが増え、住宅・施設の劣化が進んでしまった。
 
 

◆総務省公表の人口推計

 

総務省は4月12日、2018年10月1日現在の人口推計を公表した。高齢者人口は一貫して増加を続けるなか、生産年齢人口の減少が顕著になってきた。
 
年齢3区分別にみると、15歳未満は1,541万5千人で前年比17万8千人の減、15~64歳は7,545万1千人で51万2千人の減、65歳以上は3,557万8千人で42万6千人の増。
 
高齢者が増加する中での支えるグループの減少は、社会全体で見ても、また、個々のレベルでみても、もろに高齢者にかかる費用の負担が重くのしかかることになる。
 
高齢者は日々の生活費を低く抑えざるを得なくなる。上記のサ高住の家賃などをめぐる動きも、高齢者の負担能力の低減が招いている面があることは否めまい。
 
 

◆生産年齢人口が急減する局面に対応する2040年を見据えた社会保障改革

 

去る4月10日の経済財政諮問会議に出席した根本厚労大臣は、「2040年を展望し、誰もがより長く元気に活躍できる社会の実現に向けて」と題する資料を提出し、「高齢者の人口の伸びは落ち着き、現役世代が急減する。→ 総就業者数の増加と共に、より少ない人手で回る医療・福祉の現場を実現することが必要。→ 今夏に向け、健康寿命延伸プランと医療・福祉サービス改革プランを策定する」との考えを示した。
 
その改革プランにおいては、医療・福祉分野の生産性の向上を図ると銘打っている。具体的には、データヘルス改革、タスクシフティング・シニア人材確保、組織マネジメント改革、経営の大規模化・協働化をうたっている。
 
この改革プランが、冒頭に述べた生産年齢人口減という社会現象の中で貧困傾向におかれつつある高齢者への対応策とどうつながるのか、はっきりしないもどかしさを感じるのは筆者だけだろうか?
 
プランの中でいわれている「組織マネジメント改革、経営の大規模化・協働化」という文言に着目すると、近時の社会福祉法人改革は何だったのか? 住み慣れた身近な街の中で普通の住宅のようなアットホームな場所でこれまでの生活の延長線上にあるような施設・街づくりを目指す発想は消えてしまったのか? と問いたくなる。
 
モノや情報の生産現場では、すでに大量消費を念頭にした大量生産の姿は消え去り、大勢の人が集まり何かをし遂げるのでなく、少量・個別化、自分発のアイデアで物事を動かすような時代を迎えている。組織的には、大規模化から離れ、得意分野で連携し合う協働化のもとで個の可能性を切り開く方向に進んでいるように思う。
 
これに対し、社会福祉施設関係の現場で感じるのは、こうした流れから隔絶したような違和感である。力量のある経営者は、公的財政の窮乏に伴う締め付けの厳しさに嫌気がさし福祉の世界に見切りをつける一方、生き残りを図ろうとする者は、何が何でも大規模化し規模のメリットを享受しようとする動きにあるからである。
 
こうした状況下での社会保障改革である。福祉の心と人間性の尊重を前提に、経営はグローバル企業並みのシビアと効率の追求。そして、個が別の個と繋がり、可能性を広げ、個の創意工夫が共鳴し合うような環境作りに焦点を当てる必要があるのではなかろうか。なお、創意工夫で利益を上げた個々のケースに対し、ムラ社会的な横並び的やっかみを持たないこと、足を引っ張れない仕組みにすることを忘れてはならない。
 
当面なすべきことは、サ高住でも施設でも利用したいと思う施設を金銭的な心配をすることなく利用できるように、必要とする高齢者に住宅扶助―金銭補助を行うことではないか。
 
あわせて、前向きに細かなチャレンジを積み重ねながら現場改革を進めようとする個性豊かで意欲的な施設経営者を大勢育て上げていくことだ。福祉の志を失って、現状に安住し何もしようとしない施設経営者のなんと多いことか。そういう意味での改革は断固行うべきと信じる。
 
 
 
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岡光序治(会社経営、元厚生省勤務)

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