コラム

    • 韓国は北東アジアの安定勢力から脱落した

    • 2019年07月23日2019:07:23:05:50:06
      • 榊原智
        • 産経新聞 論説副委員長

日本政府が韓国に対する輸出管理の強化策を打ち出した。理由は安全保障である。韓国は、それが意味する深刻さを理解したほうがよい。経済への打撃を懸念して慌てふためいているようだが、影響はそれにとどまらない。
 
7月21日投開票の参院選は与党が勝利した。対韓政策も含め、安倍晋三首相による政権運営が引き続き認められたことになる。
 
参院選中の世論調査で目を引いたのが、産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)による14、15両日の世論調査だ。政府が打ち出した対韓輸出管理の強化策への「支持」が70.7%に上り、「支持しない」の14.9%を引き離した。反日の度が過ぎる韓国に対する日本国民の気持ちが表れた調査結果と言えるだろう。
 
日本政府は、軍事転用が容易とされる「リスト規制品」の韓国向け輸出管理体制を見直し、半導体の製造などに使うフッ化水素など3品目について、7月4日から包括的輸出許可の対象から外した。個別の出荷ごとに許可申請、審査が必要となった。8月中には、リスト規制品以外の先端材料の輸出について、輸出許可の申請が免除されている外為法上の優遇制度「ホワイト国」から韓国を除外する。除外後は個別の出荷毎に日本政府の輸出許可の取得を義務づける。
 
韓国政府は「互恵的な経済協力関係に照らし、極めて憂慮する」などと言って撤回を要求している。日本の措置は世界貿易機関(WTO)のルールに反していると騒いでいる。韓国与党は、日本の今回の対応を「経済侵略」と呼んでいる。
 
だが、韓国の言い分は間違っている。日本は、韓国に対する優遇措置をやめ、普通の国として扱うことにしただけだ。自由貿易のルールに反しているわけではないし、侵略性などみじんもない。
 
対韓優遇措置の撤回は、安全保障が目的である。軍事転用が可能な品目の輸出管理は、あらゆる国が導入しており、WTOのルールに沿ったものだ。平和を重んじる日本の製造した物資、品目が不当に軍事利用されることなどあってはならない。それを防ぐことは、日本の国際社会に対する義務だ。欧州の主要国も韓国を「ホワイト国」に指定などしていない。これまでの日本が甘すぎたのだ。
 
今回の対韓措置は、先の産経FNNの世論調査からも分かるように日本国民の気持ちに沿ったものではあるが、国民感情を満足させること自体が目的ではない。
 
日本政府は、もはや韓国を安全保障上の協力相手とは見なさなくなったとことの反映なのだ。日米同盟の側に立つ「北東アジアの安定勢力」の側から韓国は脱落した、とみなしたということだ。
 
戦後、日韓両国にとって、互いの存在は安全保障上極めて重要だった。日本にとって、自由主義陣営に属した韓国は、敵対勢力が朝鮮半島を制圧することを阻む存在だった。韓国にとって、日本は「朝鮮国連軍」の兵站基地として死活的に重要だった。日本の協力なしに、韓国の防衛は成り立たなかった。日韓の安全保障関係は、それぞれの米国との同盟を通じてつながっていた。
 
この構図を突き崩したのは、韓国、とりわけ文在寅政権である。
 
文在寅大統領は、北朝鮮の核・ミサイル戦力の拡充を事実上容認し、外交的に手を貸している。日本などが東シナ海などで行っている、北朝鮮による国連決議違反の瀬取りの国際監視に韓国の姿は見えない。同じ民族であるはずなのに、独裁政権による北朝鮮国民への深刻な人権侵害については口をつぐんでいる。
 
朝鮮有事の際の、在韓邦人の退避問題について、韓国政府は日本政府との協議に一向に応じない。
 
日本海上空で、国際ルールを守って飛行していた海上自衛隊哨戒機に対して、韓国海軍の駆逐艦が攻撃一歩手前のレーダー照射を行った。日本が証拠を提示しても事実を認めず、謝罪もしない。それどころか海自機が危険な飛行をしたと言い立てる。
 
自衛隊などが用いる旭日旗について、独裁政党ナチスの党旗と混同して、「戦犯旗」と排斥している。日本に対するヘイト行為というほかない。海自の自衛艦旗、陸自の連隊旗は旭日旗の一種である。その旗を排斥する国の軍隊と自衛隊が協力することは難しい。
 
日韓の防衛協力を阻んでいるのは韓国だ。
 
国と国の約束である慰安婦合意を勝手に反故にする。国際社会で非難の材料にしないと約束したにもかかわらず、韓国は国連などの場で史実に反する宣伝をして日本と日本人をおとしめている。ソウルの日本大使館前の慰安婦像を、日本側が再三要請しても撤去しない。これは、外国公館前での侮辱行為を禁じたウィーン条約に違反しているにもかかわらず、だ。
 
韓国の国会議長は、在位当時の上皇陛下について「戦争犯罪の主犯の息子ではないか」と述べた。昭和天皇と上皇陛下に対する重大な非礼である。昭和天皇が、いつ戦争犯罪者となったのか。先の大戦で日本と戦った連合国すら、そのようなことは認めていない。にもかかわらず、韓国は問題発言をうやむやにしようとしている。
 
中国の軍事的脅威は増すばかりだが、韓国にその危機感は乏しい。南シナ海における航行の自由の確保は、通商国家韓国にとっても極めて重要なはずだが、韓国政府が中国に対してきちんともの申したことはない。
 
文政権は、「徴用工」問題をめぐり、日韓請求権協定を踏みにじった韓国司法の暴走を放置している。そもそも、韓国司法トップは文大統領が抜擢した人物だ。国家間の問題を解決する責任は行政府にあるが、韓国政府はその責務を果たさず、請求権協定に基づく仲裁委員会設置にも応じない。国家間の約束を反故にして、国交の基盤が損なわれないと考えているとすれば異常だ。分かって放置しているなら始末に負えない。
 
このような隣国を信頼できるわけがない。安全保障上まともな協力相手とみなすとすれば、その方がおかしい。北朝鮮問題をめぐって、これからも日米韓3カ国の協力が折に触れ謳われるだろうが、空しい限りだ。日本政府の最近の対韓姿勢の変化は理にかなっているし、傲慢な韓国政府が日本政府の疑念を解けるとは思われない。
 
戦後日本は韓国を、自由主義陣営に属する友好国として、さらには平成に入ってからは先進国として遇してきた。だが、現代韓国はその扱いに値しない国に成り下がった。国と国との約束を平然と破り、軍事的に極めて危険なレーダー照射をするようでは信頼できず、価値観を共有できない。
 
韓国の前近代化、脱西側化は急速に進んでいる。いずれ米国も「異質な韓国」に耐えられなくなるのではないか。米韓同盟の空洞化や終焉が訪れれば、朝鮮半島をめぐる安全保障構造は激変する。韓国、北朝鮮の並存が続くかどうかも分からなくなるだろう。
 
日本の政府、政党、自衛隊、企業、国民は、「北東アジアの安定勢力」の側から立ち去った韓国が生じさせた厄介な状況への対応を迫られることを覚悟しておかねばならない。
 
 
 
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榊原智(産経新聞 論説副委員長)

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