コラム

    • 少子化対策へ20代の母親の所得税を生涯減免せよ

    • 2020年01月07日2020:01:07:05:36:58
      • 河合雅司
        • ジャーナリスト

いよいよ2020年代に突入した。今年はオリンピックイヤーだ。国内はこれから五輪ムード一色となっていくことだろう。
 
だが、五輪後を展望すると盛り上がってばかりもいられない。2020年代は少子化が一挙に進みそうだからだ。
 
昨年末、厚生労働省による2019年の年間出生数が86万4,000人にとどまり、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の推計よりも早く90万人割れする見通しとなったことがニュースとして大きく取り上げられた。
 
厚労省の年間出生数は「日本における日本人」だけを対象としており、社人研の推計値と単純に比較することはできないが、前年比5.92%減、実数にして約5万4,400人もの大幅減だ。
 
100万人の大台を割ったのは2016年のことであり、わずか3年で90万人台を通り過ぎたことになる。少子化の流れが速くなり始めているということだ。
 
ちなみに社人研の推計では20年代の最終年である2029年の年間出生数は82万4,000人である。2019年時点ですでに予測を上回る下落ぶりなのだから、2029年には乖離幅がさらに拡大している可能性が小さくない。
 
少子化はさまざまな要因が絡み合って起こる。だが、最近の下落スピードの速さをみると、出産可能な年齢の女性が減り始めたことが大きい。
 
出生数は「出産可能な年齢の女性人口」と「1人の女性が出産する子供数」の掛け算で決まるが、社人研の将来推計によれば2020年には女性の過半数が50歳超となる。
 
ちなみに、現在出産している女性の大半は25~39歳である。この年齢層の女性人口の推計を確認してみると、その深刻さが分かる。総務省の人口推計によれば2019年7月1日現在約1,010万人だが、社人研の推計では2040年には2割減の約814万人、2065年には4割減の612万人に減ってしまうという。
 
少子化に歯止めがかからないので、今後も年を追うごとに生まれてくる女児の数は減って行く。少子化が少子化を招く状況に陥っているということである。今後は出生率が多少上昇しても、出生数は減少を続ける状況が続くであろうる。もはや子供数が減ることを前提として未来を考えなければならない。
 
安倍晋三首相は年間出生数90万人割れについて「国難だと言える」との認識を示し対策の強化を指示したが、少子化対策に決め手は存在しない。結婚も出産も国民個々の価値観に基づくからだ。ここにこの問題の難しさがある。
 
〝国民の気分〟が出産にどれだけ影響するかは、歴史が証明している。戦前・戦中に軍部は「産めよ殖やせよ」と国民に大号令をかけたが、頭上から爆弾がいつ落ちてくるか分からない状況下において、子供をもうける人が増えるはずもなかった。
 
むしろ結婚・出産を奨励していた軍が解体され、戦後になってからベビーブームは起こったのである。人々は平和が戻ったことに「新しい時代」を感じ、希望を見出したからである。将来に展望を見出せないのでは結婚や出産の機運は上昇しないということだ。
 
バブル経済の終焉以降、多くの企業は力強さを失い日本は陰りが隠せなくなったが、こうした社会の低迷と現在進行している少子化とは少なからぬ関係があろう。もし少子化に歯止めがかかるとすれば、若者たちがこの国の未来に希望をもてるようになったときだ。
 
だが、それは一朝一夕にはいかないだろう。それまでの間、われわれはどう取り組むべきか考えなければならない。
 
当面の策として着手すべきは、経済的な負担の軽減だ。先に述べたように、子供を出産可能な女性が激減していく。まずは晩産化対策が急がれる。
 
具体的には、若くして出産した人を重点的に支援することである。例えば、20代で出産する人が多くなれば、第2子、第3子をもうけようという夫婦も増えるだろう。そこで20代で複数の子供を出産した女性の所得税を生涯にわたって減免してはどうか。
 
さらに、母親の出産時の年齢にかかわらず、第2子、第3子と子供数が増えるほど児童手当を加算する「多子加算」の仕組みも導入すべきである。第3子以降には1,000万円規模を給付し、希望する保育所に入れる権利を付与することだ。
 
少子化の流れが速まってきたことを考えると、児童手当を小刻みに上げていくようなやり方では意味をなさない。これぐらい大胆な経済支援策を打ち出さなければ政策効果は上がらないだろう。
 
大胆な現金給付策に一定の効果があることは、ロシアが示している。少子化に悩んでいたプーチン大統領の年次教書演説契機として、2007年以降に第2子以降を出産したり、養子にしたりした母親と、2人以上の養親となった父親に対して手当を支給することにした。受け取りは第2子以降が3歳になった1回限りとして給付額を当時の平均年収の2倍近くに設定したのだ。
 
物価上昇も反映させる一方で、親が遊興費などに充てることがないよう、使途は、①子供の教育費用 ②国内での住宅購入 ③母親の年金保険料の納付 に限定した。
 
もちろんロシアと日本では政治体制も異なる。大胆な現金給付策には巨額な財源の確保もしなければならない。この政策には「プーチン体制の継続を狙った善政主義の一部」との指摘もあり、そのまま日本で適用することは難しいだろう。
 
とはいえ、ここまで少子化が深刻化した日本においては、参考になる部分もあるはすだ。財源は相続税など資産課税を強化すれば捻出することは可能である。
 
政府はこれまで「育児と仕事の両立」として保育所整備や働き方改革、幼児教育の無償化などに取り組んできたが、こうした子育て支援策では少子化に歯止めをかけられなかった事実をそろそろ認めてはどうか。
 
出産できる女性が激減してしまった後で、どんな立派な政策を講じたとしても手遅れである。早急な政治決断が求められる。
 
 
 
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河合雅司(ジャーナリスト)

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