コラム

    • 人生100年時代のがん医療――ワールドキャンサーデーに考える

    • 2020年01月14日2020:01:14:04:48:48
      • 河原ノリエ
        • 東京大学大学院情報学環・学際情報学府 特任講師

ワールドキャンサーデーは、UICC(国際対がん連合)が呼びかけて、毎年2月4日に世界が一体となって、がんに関する意識と教育を高め、ひとりひとりがこの病気に対して行動を起こさせる日である。
 
2000年2月4日、パリで開催された「がんサミット」から始まり、今年で20周年を迎える。この20年間、がん医療は飛躍的に進歩する一方、がんは高齢化の進むアジアを中心に急増しており様々な社会課題を引き起こしてきた。
 
20周年を迎える今回、がん対策のこれまでとこれからを見据えて、この時代状況のなか世界中で、今後どのようにがんという病にむきあうべきかを考える機会として世界中で様々なイベントが開催されている。
 
人生100年時代といわれ、高齢化のなか、がんが身近な病となった日本におけるこの活動に、UICC日本委員会広報委員長として携わらせていただいている。
 
 

◆I AM AND I WILL

 
今期のテーマは "I AM AND I WILL"、シンプルな英文ゆえに日本語訳は難しかったが、「私は今、そしてこれから私は」と訳している。
 
UICCはこれまで、"I CAN WE CAN" というキャチフレーズで「みんなでできる。ひとりでもできる」として 社会で、広くつながる力をテーマにしてきたが、今回は、ひとりひとりががんに立ち向かう力をもっており、がんという病のためになにができるかを伝え合おうというキャンペーンである。
 
UICC日本委員会は、ワールドキャンサーデーのウェブサイトを開設しており、公式ハッシュタグの「#WorldCancerDay」「#IAmAndIWill」で投稿頂いたメッセージは、UICC本部ウェブサイト内のソーシャルウォールに掲載されるようになっている。
 
ひとりひとりが自分の人生のなかで生きている役回りのなかで、この病と向き合う決意を真摯に語り、それが届いて、ひとの心を動かすことによって、なにかが変わる。テクノロジーの進化は、時空を超えて、ひとの想いを手繰り寄せながら繋げていく。
 
ITの機器が、PCからスマホになっていくなか、がんという病への想いの熱量は、ハッシュタグによって、ひとつのものにつながり紐づけられていくことで、計測可能な数値としてはじき出されて、想いが価値となっていく。想いを共進化していくITの力は、多様な声を喚起させ、対がん活動の在り方を大きく変える力となっているのだ。
 
 

◆LIGHT UP THE WORLD

 
ビジュアルイメージがひとのこころを大きく動かすようになったなか、誰もがシェアするイメージを求めている。UICCは2月4日の夜空をUICCカラーであるブルーとオレンジに彩るライトアップを世界各都市に呼びかけている。
 
UICCが指定してきた都市のなかで、東京は、世界ではじめて2月4日の夜を迎える。UICC日本委員会では、カレッタ汐留の協力のもと、ライトアップイベント"LIGHT UP THE WORLD"を開催し、がん研究者、著名な方々にがんに立ち向かう決意を語っていただいている。
 
 
昨年は、喜劇女優の藤山直美さんに「私は喜劇女優です。そして笑いでがんを吹き飛ばします。」というメッセージを語っていただいた。今年は、UICC日本委員会のメンバー以外には、横倉義武日本医師会長、宮本亜門氏、堀ちえみ氏、麻倉未稀氏、服部幸應氏らに、がんへの想いを語っていただく予定である。
 
この "LIGHT UP THE WORLD" といういわばグローバルな舞台装置のもと発せられる様子を、今年からYoutubeにて、LIVE配信して全国でその瞬間を共有することになった。UICC日本委員会では、この配信を基軸に、全国で2月4日に関連イベントを開催していただけないかと考えている。
 
私がUICCの加盟組織として代表理事を務めさせていただいている一般社団法人アジアがんフォーラムは、富山県砺波市にもっている「リラの木のいえ」にてがん連携拠点病院である市立砺波総合病院の協力をいただいて、関連イベントを開催することにしている。
 
2月4日のライトアップを、ライブ配信でみていただいたあと、経営者向けセミナー『経営者が知っておきたい ‘がん’ と経営の話』と題して、自身もステージ4のがん治療をする傍ら国立がん研究センター・がん情報センター患者・市民パネルを努める税理士加瀬明彦氏にがんを告知されたら心に起きること、がんと就労、がんとお金について、またがんに罹患しても働き続けることの大切さ、雇用環境整備について、地域の経営者の方々にかたっていただく機会を設けたいと思う。
 
がん医療の均てん化が叫ばれて久しいが、地方との格差は、医療現場以外にも大きいように思う。関係性がありすぎる社会において、この病をどうとらえるのか? 都会にくらべ、特にがんを隠す傾向にあるようにおもう。
 
がんだといって、気を遣わせたらどうしよう。いただいたお見舞いをどう返すか。そんな声が聞こえてくる地域のなかで、いまだにがんという病を巡る意識がずっと昔のままのようなきがしてならない。
 
田舎には仏壇の下に先祖代々の地域でいただいたお香典の記録があり、東京に引き取った高齢の母は、いまも自分の存命中に、借りた恩義は返すとばかりに、遠く離れた田舎の知り合いの動静にいつも気を張り詰めていることを思い出した。
 
地域を変えるといっても、そう簡単にはひとのこころはかわらない。都会とちがって、患者会の組織も弱く、なかなか声が上げらない。そこで、地域のロータリークラブにおねがいして、まずは、地域の中小企業の経営者の方のマインドに、今回はメッセージをとどけてみようかと思っている。
 
 

◆人生100年時代のがん医療

 
ひとが長く生きるようになり、がんを抱えて残りの人生を過ごす人がどんどん多くなる。人類の有史以来ずっと昔からあったとされているが、これほどまでにこの病を抱えて生き延びるひとが、社会にいることはかつてなかったはずだ。
 
ひとは、より長い時間生きることで、多様な世代の人たちと、自分の暮らす地域で接しながら生き延びていく。私は、人生100年時代のライフスタイルの道筋を考えた時、がんという病が、地域コミュニティーの求心力になることができるのではと思っている。
 
人生100年時代のがん医療は、地域で考える 地域を乗り越える 地域で支える。そんな流れができたらと願っている。
 
2月4日は、夜空の光に、そんな想いを託して、迎えたいとおもう。
 
 
 
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河原ノリエ(東京大学大学院情報学環・学際情報学府 特任講師)

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