コラム

    • オンライン診療 どこまで

    • 2020年04月21日2020:04:21:00:30:26
      • 楢原多計志
        • 福祉ジャーナリスト

「例外中の例外という認識だ」。新型コロナウイルス感染の拡大を受け、政府がオンライン診療の時限付き緩和を打ち出した4月7日の翌日、日本医師会の理事は記者会見でそう語った。言葉の裏側には「非状態だからやむを得ない」という本音が伝わってくる。オンライン診療はどこまで進むのか。
 
 

◆非常時ゆえ、初診もOK

 

総額はざっと108兆円。7日、政府はかつてない巨額の緊急経済対策を発表した。柱は5本。事業規模は多い順に①雇用維持と事業継続(約80兆円)、②将来を見据えた強靭な経済構造の構築(15.7兆円)、③経済活動の回復(8.5兆円)、④感染拡大防止策と医療提供体制・治療薬の開発(2.5兆円)、⑤今後の備え(1.5兆円)。あくまで経済対策であり、医療への配分が少ないことはやむを得ないかもしれないが、気になっていることがある。
 
内閣府の別紙資料(約40ページ)には、「オンライン診療・服薬指導について実施すべき事項」が3ページにわたって掲載されている。院内感染などを防ぐため「非常時の対応」としてインターネットや電話などによるオンライン診療でも初診を認めるよう制度を見直すという。
 
いま、なぜ、オンライン診療で初診なのか。回答は極めてシンプル。「非常時だからだ」という。患者は「対面診療」を受けなくても(つまり受診歴がなくても)インターネットや電話で診療や医薬品の処方が受けられるようになる。結果、感染症治療にあたる医師や看護師などの医療従事者が、他の患者の初診から解放され、新コロナ感染症患者の治療に専念できるようにしたいという。
 
 

◆都道府県がリストアップ

 

オンライン診療の初診には条件が付く。(i)「初診対面原則」(原文)の時限的緩和であること、(ii)必要に応じた「対面診療」への移行や地の医療機関に紹介できること、(iii)患者なりすましの防止や虚偽申告、処方薬の横流しなどを可能な限り防止すること。
 
一方、対価として、1カ月当たりのオンライン診療料の算定回数の割合(1割以下)を見直す。都道府県はオンライン診療が可能な医療機関をリストアップして厚労省が公表し、国民に周知する─という。
 
素朴な疑問だ。(i)(ii)とも厚労省のオンライン診療の指針に関する専門検討会で長らく議論された経緯がある。委員間で賛否が分かれ、「現状では難しい」となっているのではなかったか。とりわけ、理解できないのは、なぜ、対面診療がなくても初診の安全性が保証されるのか─という核心について説明がないことだ。「非常時だから」で片付けてよい話なのか。
 
 

◆「初診対面」は必要

 

私見で恐縮だが、オンライン診療は進歩に合わせて活用されるべきだ。現実に医療過疎地域がある以上、画像診断などによる遠隔診療は不可欠であり、欧米のように生活習慣病などの指導管理を増やし、診療報酬を引き上げて良いと思う(現行が低すぎる)。
 
それでも画像や声などでは掴めない症状や疾病があることは確か。説明のないまま、「初診対面原則」を崩すべきだろうか。
 
オンライン診療の範囲拡大を先導する政府の経済財政諮問会議や規制改革推進会議が指摘している通り、医療技術は日々進歩し、医療データの集積や解析も進んでいる。だから「初診対面はもう不要だ」とは言えない。オンライン診療の利点だけではなく課題についても議論を深め、解決策を含めて国民に情報開示してほしい。
 
それにしても、医師、看護師、ベッド、医療機器、感染防護備品が足りない。医療崩壊の誹りを免れるためのオンライン診療・初診解禁で良いはずがない。
 
 
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楢原多計志(福祉ジャーナリスト)

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