コラム

    • 【緊急寄稿(3)】 新型コロナ 続々報

    • 2020年05月26日2020:05:26:08:39:15
      • 外岡立人
        • 医学博士、前小樽市保健所長

5月18日の筆者の日記を元に新形コロナ(COVID-19)の現状をまとめる。決して科学的ではないので、悪しからず。
  
何か、コロナ軍団が去ったように錯覚する、今日この頃である。
 
国内での新型コロナの日々の発生数が、100人を切り出してから1週間は経つ。ピーク時の4%にすぎない。
 
国家非常事態宣言はいつ解かれる。
 
2、3日中に決まる模様だ。
 
 

◆マスク着用の意義

 

しかし、マスク着用は強く推奨されるらしい。
 
なぜか?
 
マスク着用の意義は、自分の唾液などから対面者にウイルスを飛散させないためとされる。
 
ウイルスは飛沫物といっしょになって2メートル程度は飛散する。しかし、さらに細かいエアロゾルとなった飛散物質は、しばらくは空中を漂う。せいぜい飛散者の数メートル程度周囲ではあるが、これが結構な感染力を持つと言う報告が出ている。
 
衝撃的報告がイタリアの研究チームから先日なされた。
 
コンピューター・モデルであるが、唾液や気道からの粘液中に含まれる小粒子、多数はエアロゾルが、外では微風に乗って5メートルは流れてゆくと言うのだ。もちろん強風では別だ。すなわち2メートルというソーシャル・ディスタンシング(人的接触距離)を保っていても、微風程度の空気の流れがある場所では、小粒子はさらに遠くまで漂うというのである。
 
またここで強調しておくこととして、感染者(発症に関係なく)の唾液中にはウイルスが存在し、話をすることでウイルスを発散するということである。
 
キスしたりハグしたりの欧米流の挨拶は、その長い歴史を閉じるのかも知れない。また、カップル間のキスも廃れてゆくとしたなら、恋愛映画は変わる。新型コロナは人類の歴史まで変えてしまうのだろうか(多分、そうなのでしょうね。最後に書いてます)。
 
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、細胞内に侵入する際、細胞表面の受容体に付着する必要がある。受容体はACE2(Angiotensin-converting enzyme-2,アンジオテンシン変換酵素2)であるが、これは肺胞近くの気管支の他、体内の色々な臓器に存在する。最近の知見では、口腔内の粘膜、とりわけ舌に多く発現しているとされる。すなわち、感染者では口腔内にウイルスが多量に存在する可能性が高い。
 
現在主流となっている布マスクであるが、エアロゾルを抑え切れない。それにも関わらずなぜ布マスクが流行しているのか疑問であるが、誰もその部分を突っつかない。安倍首相も各家庭に布マスクを配っている。
 
でも欧州などでは実にカラフルなマスクを女性達は着用している。マスクを着用するときの化粧まで変わってきた。
 
ただし、米国CDCは感染を防ぐためにはマスクは効果はないが、感染者がウイルスの飛沫を周辺にまき散らす予防にはなるとして、マスク着用を勧めている。
 
また国によっては外出する際にはマスクの着用を義務づけ、ただし布製は禁止している国もある。日本では首相が推薦するくらいだから布製はOKであるが、間違っても医療関係者は使ってはならない。感染者が咳き込み飛び出すウイルスの防護機能は期待できない。
 
なぜ布マスクが流行してきたのかは筆者には分からない。エアロゾルは咳をしたとき、または笑ったとき、クシャミをしたとき、気道や鼻腔、口腔内から瞬間的に発生するジェット気流に乗って布マスクの繊維の間から飛び出すはずだ。
 
当方は分からないのでこれ以上は詮索しないが、通常の会話では、ジェット気流はそれほど発生しないと思われるし、ウイルスに感染してない人ならば、ジェット気流がマスクの繊維の間を抜けていっても心配は無いのだろう。
 
 

◆新型コロナウイルスの特徴

 

新型コロナウイルスは、説明すればするほど実に厄介な病原体である。
 
まず感染力が強いことが上げられるが、時として急速に悪化し、さらには突然死を起こすこともある。
 
かつてのトランプ大統領や、ブラジルのボルソナロ大統領は、インフルと大差ないウイルスだ、ほっとけばいつか治ると豪語し、結果的に既に数万人から十万人の死者を出している。ボルソナロ大統領は学のあるところを示し、6割が感染したら集団免疫が出来上がるので流行は終わる、と富裕層が住む高級マンションに向かって手を振る。死亡する予定の4割は貧困層だ。これら大統領達の言うことには一理ある。数百年前の欧州がそうだったから。
 
新型コロナは動脈内膜に炎症を起こし、血栓を作ることがある。出来た血栓により脳梗塞や心筋梗塞が起こりえる。それは年齢に関係なく若年者でも起こる。
 
こうした病態は、割と最近知られてきたことだ。
 
高齢者が動脈硬化を起こしてきているのは当然であるが、そうした動脈硬化を起こした血管を持つ高齢者が、新型コロナに感染すると危険であることは言うまでもない。
 
このウイルスは肺胞に空気を送り込む細気管支で強い炎症を起こす。炎症産物で細い気管支は閉塞しやすい。肺胞に空気が入って行かないので窒息する。それ故、新型コロナの症状として、発症初期から呼吸困難が強く表れる。通常の肺炎の様に抗生物質などの投薬で、家庭でしばらく様子を見るように伝えて患者を家に帰すと、その夜に酸素不足から口唇が紫色になるチアノーゼを起こすという急激な変化が頻繁に報告されている。
 そうした中で高齢者は死亡するのである。
 
また厄介なこととして、感染した人の体内で発症前からウイルスが増えだしていて、それが周辺に気道から飛散され多くの人々に感染してゆくことが、最近明らかになった。
 
発症はしていても無症状で経過する人も決して少なくはないようだが、このような無症候性感染者も周辺の人々にウイルスを移してゆくことも、現在では常識化している。
 
電車で隣に座った可愛いマスク顔の女性が、体内に既に多くのウイルスを保有していたとしても、本人も、敢えてその席を選んだ男性も知る由もない
 
10日後に、二人が新型コロナ指定病院の一般個室とICUに分かれて入院していることは想像の範囲である。
 
極端な話として次の様な状況はいくらでも起きうる。
 
ある感染者が、発症2日前に人の多い場所で周辺にウイルスを飛散し、多くの人に感染を起こす。感染した人々の8割は無症候性感染者となり、職場等で周辺の人々にウイルスを感染させる。感染した人は家庭に帰って、10日過ぎに発病したとして、その発病2日前頃に家族何人かにウイルス感染を起こしている。
 
こうなると発病者の足取りを辿って感染源調査をしても、職場が感染場所と分かっても、誰がウイルスを持ち込んだか不明となる。
 
ワクチンが実用化されるには2年はかかりそうだが、出来ても副作用が心配で、それほど接種率は高くはならないと予想できる。若者は重症化しづらいし、子供はまず発症しない。さらに高齢者では免疫が出来にくく、効果が出るかはあやしい。インフルワクチンと同じだ。
 
先日テレビでノーベル医学賞を受賞した本庶博士が、ワクチンに関しては懐疑的意見を述べていた。彼はインフルワクチンの効果も疑っているようだ。免疫専門家の多くは、ワクチンに関して、結構懐疑的意見を持っている人が多い。
 
 

◆新型コロナと共存する”新しい生活様式”

 

物理的予防対策、すなわち社会的隔離対策が進化することで、感染率が下がるのではないかとの考え方も世界的にはある。いわゆる、社会距離戦略(social distancing)である。例の2メートル以上、または5メートル以上人と離れよと、言う方法だ。
 
社会的隔離対策を中心とした、新型コロナと共存する”新しい生活様式”に慣れることが必要だ、とも言われる。
 
”新しい生活様式”は社会システムを変えるのだろうかと考える。
 
しかし、社会システムが変わらなければ、”新しい生活様式”を社会に導入は出来ない。
 
単にスーパーのレジに2メートルごとに立つラインを作ることが、”新しい生活様式”に結びつく訳ではない。そのようなことは生活習慣の改善に過ぎない。
 
実は“新しい生活様式”とは、民主主義も共産主義も民族主義も全ての根幹を失わせる対策に過ぎない。
 
それは時代を超える新しい生活様式だ。
 
コロナウイルスは、無症状感染者(これが20%~40%はいるようなのだ)からも排出され、発病者も、発病2日前にはウイルスを排出する。要するに全く無症状で通常の健康者と変わらぬ人々、もちろん本人は何も気づいていない、からも多くのウイルスが巷で人に感染するのだ。
 
“どうしたら予防可能なんですか?” ある秀悦な女性編集者が尋ねた。
 
僕の答えは、“僕も以前から悩んでいるんです。誰もその点に触れない。”
 
しかし、答えは無くはない。
 
二日に一度程度のペースで、一部の人々が国民全てにやれと騒いでいる、PCR検査を行えば良いのだ。
 
毎日の朝の日課として、出勤途中で“コロナ検査センター”に寄るだけだ。確実を期すならば2日連続行うべきだ。
 
そしてもし陽性となったら、“コロナ専門療養センター”なるホテルを改造した施設に、2週間入院すれば良い。
 
しかし、少なくともこの2年間は特効薬はできないだろうから、入院していても悪化し、急死等が起きるのは仕方がない。
 
さらに完璧な予防法を選びたいならば、外に出ない生活を続けることだ。簡単に言えば、自宅鎖国化である。
 
人とのコミュニケーションは、コロナに感染しない媒体を用いることになる。AIロボットが活躍し、同時にスマホによる人とのコミュニケーションだ。
 
こうして、国も予期してなかった“新しい生活様式”の時代が到来する。
 
先頭を切るのは中国だ。欧州各国もそれに続く。
 
米国はあまりにも民主国家過ぎて出足が遅い。
 
日本は、与野党の議会論争ばかり多くて、何も進まない。
  
SARS-CoV-2との共存社会では、誰も自分が無症状感染者であるか、または3日後にコロナを発症する運命にあるかなんて分かりはしない。
 
誰もが反射的にコロナの危険性を避ける。と言うよりも、人影を避ける。
 
 

◆終わりに

 

あまり科学的な話はしなかった。
 
しかし新型コロナを、少しは大局的に語れたとは思う。
 
人に接しない生活様式が中心の時代が来る。
 
人間同士が密に接し合う場所がこの社会から消え去るのだ。
 
言葉を変えると、我々の住む世界から既存の社会がなくなるのだ。
 
これまで人と人が密に接して人と人のコミュニケーションが維持されてきたが、それは新型コロナウイルスで見事に打ち壊されたのだ。
 
これからはAIロボットやスマホが人の社会のコミュニケーションを維持してゆく。
 
子ども達に、何のために勉強をするのか、どう教えれば良いのか、難しい時代になる。ただ、間違いのない回答は、お金を稼いで、もっと高級なAIロボットをたくさん買うため、が正解となる時代である。
 
格差社会が一段と進む。
 
思想も哲学も重要でなくなる。いや別体系の学問が芽生えるかも知れない。
 
こうして従来の人間的生活から離れることが、コロナに打ち勝つ方法になるのだ。
 
長い歴史が培ってきた“人間的生活”は消え去り、三密を避け、お互いに生の姿も声も聞かないコミュニケーションの世界は、脳科学の発展もあり、意外と味わいのある人生になるのかも知れない。
 
子ども達は巨大なAIロボットと遊び、大人達はAIパートナーと安楽な生活を送ることが出来る。
 
 
 
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外岡立人(医学博士、前小樽市保健所長)

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