コラム

    • 新型コロナウイルス感染拡大が介護・高齢者支援に及ぼした影響とは(1) ―ケアマネジャー調査から見えてきた現状―

    • 2020年07月21日2020:07:21:10:51:29
      • 川越雅弘
        • 埼玉県立大学大学院 保健医療福祉学研究科 教授

■はじめに
 

新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の感染が拡大するなか、政府は、令和2年4月7日、新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号)第32条第1項の規定に基づく緊急事態宣言を、措置期間を5月6日までとした上で7都府県(埼玉・千葉・東京・神奈川・大阪・兵庫・福岡)に対して発出した。
 
その後、4月16日には対象区域を全都道府県に拡大するとともに、上記7都府県に6道府県(北海道・茨城・石川・岐阜・愛知・京都)を加えた13都道府県を特定警戒都道府県に指定した。5月4日には期間を5月末まで延長、25日に同宣言は全面解除となった。

この間、「医療」に対するマスコミの関心は非常に高く、連日のように多数の報道が行われていたが、利用者と密に接することが避けられない「介護」に対する関心は相対的に低く、また、感染拡大の介護現場への影響も十分には明らかにされていなかった。

こうした状況のもと、筆者らは、緊急事態宣言期間中に、3種類の緊急オンラインアンケート調査を実施した (※注1)。同調査は、緊急事態宣言下における新型コロナの介護への影響を明らかにすることを目的としたものではあるが、得られた知見は、今後の感染再拡大への備えとしても有用なものが多かった。

そこで、本稿では、筆者が主に関わった、マネジメント担当者(ケアマネジャー/地域包括支援センター)向け調査から得られた知見を2回にわたって紹介する。第1回目は、ケアマネジャー向け調査結果についてである。

(※注1)詳細については、一般社団法人 人とまちづくり研究所 参照。
 
 

■調査・分析方法について


日本介護支援専門員協会のメルマガ会員を中心とする約13,000人に、協会事務局から自記式オンラインアンケート調査のURLを案内する形で実施した。なお、調査期間は、2020年5月12日~18日である。
 
本稿では、回答者のうち、居宅介護支援事業所のケアマネジャー1,066人を分析対象とする。
 
なお、感染拡大の状況によって介護への影響は異なることが予想されたため、事業所の所在する都道府県を3つの圏域(【圏域1】4/7に緊急事態宣言の対象となった7都府県、【圏域2】4/16に特定警戒都道府県に追加された6道府県、【圏域3】その他の県)に分けて分析した。

 

■主な結果
 

1)圏域別にみた回答者数
分析対象数1,066人の圏域別回答者数は、「圏域1」392人、「圏域2」130人、「圏域3」528人、「無回答」16人であった。
 
2)陽性ないし濃厚接触者となった利用者の有無
陽性ないし濃厚接触者となった利用者がいたと回答したケアマネジャーは31人(回答者の2.9%)で、この割合を圏域別にみると、「圏域1」4.8%、「圏域2」4.6%、「圏域3」1.1%であった。
 
3)介護事業所の運営への影響
利用している介護事業所の運営への影響を聞いたところ、回答したケアマネジャーの57.0%が「縮小あり」、44.1%が「休止あり」、3.2%が「廃止あり」、58.9%が「新規受入中止あり」と回答していた(※注2)。
 
ここで、圏域1について、影響ありと回答したケアマネジャーの割合をサービス種類別にみると、縮小ありは、「通所介護」58.4%、「通所リハ」32.7%、「短期入所」21.7%の順、休止ありは、「通所介護」44.4%、「通所リハ」20.7%、「短期入所」10.5%の順、廃止ありは、「通所介護」5.1%、「訪問介護」0.5%の順、新規受入中止ありは、「通所介護」32.7%、「短期入所」19.4%、「訪問介護」9.7%の順であった(図1)。
 
事業の縮小や休止に関しては、外出自粛要請の影響もあり、通所系や短期入所系サービスに影響がでていたことが、また、通所介護や短期入所、訪問介護において新規受入への影響があったことがわかった。

(※注2)ケアマネジャーは、通常、複数の事業所を利用している。例えば、利用していた6つの通所介護事業所のうち、1か所でも休止した場合、「休止あり」と回答する。この数字(44.1%の休止)は、事業所ベースではなく、あくまでケアマネジャーの人数ベースであることに留意が必要である。

図1.圏域別サービス種類別にみた介護事業所への影響の有無
 
 
4)ケアマネジメントへの影響
ケアマネジメントへの影響を聞いたところ、回答したケアマネジャーの40.2%が「新規利用者が減少した」、68.5%が「退院・退所後のサービス調整の困難さあり」、65.9%が「訪問に対する利用者の拒否あり」、85.9%が「外部関係者との会議の調整の困難さあり」、74.8%が「利用者の現状把握の困難さあり」、46.3%が「医師との連携の困難さあり」、31.8%が「虐待やDVリスクへの警戒あり」と回答していた(図2)。

図2.ケアマネジメントへの影響の有無
 
 
5)利用者への影響(利用者人数ベース)
利用者への影響を聞いたところ、担当している利用者の5.8%が「通いの場・集いの場に行けなくなった」、5.6%が「通院ができなくなった」、3.3%が「身体機能の低下が進み、重度化した」といった状況であった。ここで、通院ができなくなった割合を圏域別にみると、「圏域1」6.3%、「圏域2」5.7%、「圏域3」4.7%と、緊急事態宣言の出された圏域ほど、通院困難になった利用者が多い状況であった(図3)。
 
図3.利用者への影響の有無

 
6)地域のインフォーマル資源の利用への影響
 
1.地域のインフォーマル資源の利用状況
回答者1,066人のうち、インフォーマル資源を利用しているのは882人で、利用率は82.7%であった。これを圏域別にみると、「圏域1」83.2%、「圏域2」83.1%、「圏域3」83.9%とほぼ同水準であった。
 
ここで、資源内容別に利用率をみると、第1位「運動・体操教室」50.8%、第2位「高齢者サロン」50.2%、第3位「集いの場」45.7%、第4位「認知症カフェ」30.3%の順であった(図4)。
 
2.利用が困難となったインフォーマル資源の状況
インフォーマル資源を活用していると回答した882人について、利用が困難になった資源を聞いたところ、第1位「高齢者サロン」59.2%、第2位「運動・体操教室」58.3%、第3位「集いの場」51.4%、第4位「認知症カフェ」35.7%の順であった(図4)。
 
図4.利用が困難になったインフォーマル資源



■まとめおよび今後に向けて

 

本調査は、4月6日の緊急事態宣言から約1か月後の、外出自粛状態下での新型コロナの介護への影響を明らかにすることを目的に実施したものである。

 

ケアマネジャー向け調査から、
1. 外出自粛や感染予防行動(利用者や家族がサービス利用を控える動きなど)による影響を最も受けたのが通所介護事業所であった。

2.通所系サービス(通所介護、通所リハ)に次いで影響を受けたのが短期入所系サービスであった。

3.新規利用者の受入中止に関しては、通所介護や短期入所に次いで、訪問介護が多かった。

4.通所系サービスだけでなく、通院や通いの場の利用など、移動を伴うサービスに影響が生じていた。

5.利用者や家族がケアマネジャーの訪問を断るなどにより、利用者の状況や状態変化をケアマネジャーが把握することが難しくなっていた。

6.緊急事態宣言から約1か月後の時点において、利用者の約3%に身体機能低下に伴う重度化や精神面での不安定さが生じていた(観察期間を延ばすとより重度化が顕著になる可能性あり)。

7.多職種が集まって行う会議(サービス担当者会議など)の実施が困難化していた。

などが明らかとなった。

ケアマネジャーの訪問によるモニタリングの困難化と通院機会の減少が同時に生じたため、状態変化をきちんとチェックする機能が著しく低下した状況になっていた可能性が高い。

今後、ICTなどを使った本人の状態把握への取組みや、通院の縮小に伴うリスクマネジメントの機能強化、主治医とケアマネジャー間の連携強化がより一層求められることになると考える。
 
 
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川越雅弘 (埼玉県立大学大学院 保健医療福祉学研究科 教授)

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