オピニオン

  • 医療と介護のはざまの課題 --介護からの視点で-- その1(全2回)

    2010:11:04:00:05:00
  • 2010年11月04日
  • 嶋田丞 (大分県医師会 副会長)

はじめに

 
 高齢化が進むなかで、医療保険制度、特に高齢者医療、と介護保険制度は重要度を増している。両者の制度設計はもとより、制度の運用についても取り組むべき重要な課題である。
 
 現状の運用において、2年毎の診療報酬改定と3年毎の介護報酬改定は、6年毎の同時改定となる。次回の同時改定は、平成24年度の改定(2012年4月の改定)である。
 
 次回同時改定の共通のテーマは「医療と介護の連携の見直し」であるが、このテーマが示すとおり、医療と介護のはざまには多くの課題がある。
 
 今年度、社会保障審議会の介護保険部会は、頻回に開催されている。そこでは、給付のあり方として、施設・住まいから検討を始め、介護保険施設、ユニット・多床室、特別養護老人ホームの医療、有料老人ホーム・高齢者賃貸住宅、地域密着型サービス、介護保険料、介護人材確保と処遇、情報公開サービス、指導・監視の方法等が議論されている。介護給付費分科会はこれまで計4回開催されている。そこでは、介護保険施設のユニット型と多床室の問題が取りまとめられた。介護職員等によるたん吸引のための制度のあり方に関する検討分科会では、制度のあり方、研修方法等が取りまとめられた。
 
 以上のような背景と現状の政策議論を踏まえ、本コラムでは、「医療と介護のはざまの課題」について、介護現場の視点から検討を行うこととする。
 
 

療養病床について

 
 まず、療養病床の削減・再編について、行政の恣意的な動きがあった事実を指摘しておきたい。厚生労働省は、平成16年の「療養病床における医療提供体制に関する調査」(医療経済研究機構が調査)の結果を恣意的に入れ替え、介護老人保健施設の入所者と医療型療養病床の患者の特性が類似していると指摘。療養病床の「医師の指示の見直しは殆んど必要ない」が「医療の対応が殆んど必要ない」とされ、法律で削減・再編と決まった。
 
 療養病床数の推移を見ると、介護保険発足時(平成12年)には、医療型25万床・介護型13万床の計38万床があったものが、平成18年10月には、医療型23万床・介護型12万床の計35万床となった。これは療養病床の転換・廃止が多少は進んだことを意味する。しかし、現状を介護現場から報告すると、これ以上の削減・再編は無理である。23年度末の介護型療養病床廃止の期限を延ばすか、継続の法律を作るしかない。
 
 このほど、厚生労働省の医療課と老健課が共同で療養病床の調査を行った。その結果は、(1)介護型療養病床と医療型療養病床、転換型老健と従来型老健は全く違う患者特性であり、(2)介護型療養病床と転換型老健の患者特性は同じで医療依存度は高い、というものであった。
 
 このような正確な結果が出ては、厚生労働省は介護型療養病床を存続させるしかない。転換型老人保健施設への誘導は、介護報酬を安上がりにすることが目的であるに過ぎず、利用者の利益にはならないことに気付くべきである。
 
 そして、転換させられたところは希望すれば元に戻れるようにしておくべきであり、機能が複雑化してしまった介護保険施設を利用者のニーズに合わせて整理する必要もある。
 
 

介護職員の医療行為

 
 喀痰吸引と胃ろうに対する医療行為(医行為)について、介護職員が42〜50時間の研修を受ければ実施できるように法制化されようとしている。日本医師会は「これを医行為から外すことで対応できる」と主張していたが、厚生労働省は「研修でこの医行為ができる資格を与える」という考えである。
 
 この問題について、率直な現場の意見を申し述べると次のとおりである。
 
 長時間の研修を経て資格を得ても、医行為のため介護報酬では評価されず、責任だけが発生するのでは、介護職員は誰もそのようなことは望まない。医行為は医師の指示の下での行為であるべきで、受ける側の安心・安全を考慮すべきであろう。
 
 また、これには「場所の限定」が付いており、特養・老健・グループホーム・有料老人ホーム等でしか出来ない。この研修が行われる介護型療養病床は実施可能な場所からはずされているが、その理由は「病院として常に医師・看護職がいるから」とされ、これもおかしな話である。
 
 
(※その2では、特別養護老人ホームの医療、高齢者住宅と医療・介護、その他の課題を取りあげます。)