オピニオン

  • 清宮美稚子氏のコラム「気候非常事態」を読んで

    2019:12:27:11:34:51
  • 2019年12月27日
  • 外岡立人(医学博士、前小樽市保健所長)

2月24日のコラム欄の清宮美稚子氏の「気候非常事態」はさすがに著名雑誌の元編集長だけあって、無駄のない論理性に満ちた知的な内容のコラムで、色々と勉強させられた。
 
しかし、と思うことが私にはいくつかあるので述べたい。
 
Nature が今年の科学界に影響を及ぼした、または衝撃を与えた10人の人々を選び、その中に16歳のグレダさんが選ばれていることは周知の事実だろう。研究者でもなく科学者でもない16歳の、それもアスペルガーということでいじめ続けられ、義務教育は満足に受けられなかった少女。もっとも週2時間の特別補習授業で、義務教育は優秀な成績で終えたと関係者は語っている。その他は独学という。
 
編集部がグレダさんを選んだ理由の概要は以下の通りだ。この30年あまり、多くの研究者やジャーナリスト達が気候温暖化の危険性を世界に発信し続けてきたが、世界は反応しなかった。しかしグレダさんは短期間で、世界の多くの若者達、そして政財界の人々の心を動かし、今、多くの人々が地球温暖化対策の緊急性を認識しだした。これは奇跡的と言わざるを得ない。
 
かって、気候変動が危機的状況になっていることを科学者達から聞いたグレダさんは何日間もショックを受けて泣き続けたという。
 
専門家達は多くのことをやってきた。国連をはじめとして世界中で気候変動の多くの会議、そしてまとめられた文書が山積みになっている。しかし温室効果ガスは予想を超えた速度で増えつつけている。
 
国の対策を急がせるために、グレダさんはスウェーデンの国会前で一人で座り込み、“気候変動のための学校ストライキ”と手書きのプラカードを側に立てかけ、一日7時間の座り込みを3週間続けた(その後は週一回金曜日に続けている)。
 
多くのメディアがやってきた。グレダさんは語った。“今行動を起こすことが必要なのです。私たちの未来がなくなるのです”
 
行動? 多くの大人はその意味が分からなかったようだ。
 
彼女は科学者ではないが、科学者が本来なしえるべき成果、すなわち世界の気候変動対策は緊急性があり、今、世界的に対策を急ぐ必要があることを世界中に伝えた。
 
“今、すぐに対策を急ぐ必要があります。地球は燃えだしています。対策を話し合うことではなく、火が広がらないように今行動することが必要なのです”と、彼女は叫んでいる(【筆者註】地球温室化ガスを皆で排出しない生活に今変える。そのための社会システムの変化が必要)。
 
さらにグレダさんは、途上国の若者達にマドリッドのCOP25の会場で、彼らの国がどれだけ自然災害で悲惨な状況におかれているかを語ってもらった。そしてグレダさんは言う。我々富裕国がこれまでの豊かな暮らしを継続するために多くの炭酸ガスを排出し自然災害の原因をつくっている。しかしその結果招来された自然災害で途上国の人々が苦しんでいる。彼らは温室効果ガスを全く排出していないのに不平等ではないか。
 
富裕国は持続する経済力を維持するために、社会システムを変えてまで温室効果ガスを減らそうとは考えていない。社会変革という言葉は、今の大人達がもっとも嫌う言葉だ、と彼女はつぶやく。
 
彼女の発想はさらに、民主主義とは何なのか、人権とは何なのかという素朴な疑問にまで掘り下げられていくようだ。
 
 
【参照記事】
 
 
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外岡立人(医学博士、前小樽市保健所長)