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「存在感を発揮できない民主党――絵に描いたモチの『政権準備』」關田伸雄
(掲載日 2005.4.26)

 郵政三事業民営化をめぐって「政府vs自民党」の熱い戦いが続く中で、民主党の存在感が完全になくなっている。2大政党の一方としての存在をアピールできたのは24日投開票の衆院宮城2区・福岡2区両補選の間だけ。年金制度改革の骨格を取りまとめるための社会保障制度改革両院合同会議には岡田克也代表自らが乗り込み、全国民を対象にした年金一元化の必要性を強調したが、“悲願”の政権奪取に向けた戦略は描けないままだ。

■国民へのアピール度を反映、低迷する政党支持率

 ラベル作曲の「ボレロ」が流れる中、岡田克也代表、小沢一郎副代表、菅直人前代表、鳩山由紀夫元代表が次々に登場、「日本の選択」「未来のために」などと呼びかける―。民主党が衆院補選のために宮城、愛知両県で補選前の1週間にわたって流したテレビCMだ。

 同党関係者は「党の看板役者が勢揃いすることで、わが党が人材の宝庫であることをアピールする狙いがあった」と釈明するが、「裏を返せば、岡田氏だけでは選挙に勝てないと認めているようなもの。あれじゃあ政権交代なんてとてもとても…」(与党筋)という指摘にも説得力がある。

 読売新聞が4月9−10日に実施した世論調査によると、民主党支持率は12.7%。3月調査に比べて0.1ポイント減にとどまったが、自民党の34.9%に大きく水を開けられている。NHK調査(4月8−10日)では民主党が14.8%で、自民党は30.1%。最も“健闘”したTBS系列のJNN調査(4月9−11日)でも、民主党支持率は3月調査より5.4ポイントアップの24.8%だったが、一方の自民党は8.8ポイントもアップ、3人に1人を上回る37.6%の支持率を達成した。

 “郵政の変”で政府・自民党間が騒然としているだけでなく、中国、韓国内で反日の動きが強まるなど外交面でも小泉政権が八方塞がりになっているにもかかわらず、である。なぜか―。最大の要因は民主党のわかりにくさにある。

■実態が伴わない「政権準備」

 郵政民営化で民主党は「国民の関心はほとんどない。わざわざ取り上げる必要はない」(岡田氏)と高みの見物を決めこんでいる。確かに小泉政権が関連法案の今国会成立にこだわるのは自らの延命をはかるためで、民主党の対応は一見、理にかなったものだ。だが、「合理的=有権者に支持される」とは限らない。

 テレビのワイドショーを含め、マスコミが連日、政府・自民党間のドタバタ劇を伝える中に民主党議員たちの姿はない。加えて、民主党は政府の関連法案骨子を「自民党郵政族に大きく歩み寄ったもので、もはや『民営化』と言える代物ではない。「論理矛盾の固まりだ」(仙谷由人政調会長)と批判するだけで、民営化そのものへの賛否を必ずしも明確にしていない。

 今国会冒頭の小泉純一郎首相の施政方針演説に対する岡田氏の代表質問でも「私も郵貯、簡保については民間でもできることであり、将来的には民営化が本筋と考えている」と述べるにとどまった。党内には民営化賛成議員も多いが、日本郵政公社労働組合の支持を受けている政党として「背に腹は変えられない」ためだ。「対案を掲げて政府・自民党に政策論争を挑んでいく政権準備政党」というのは掛け声だけだ。

 政局的な対応もお粗末。竹中平蔵郵政民営化担当相の衆院総務委員会欠席問題でも「国会軽視であり、辞任すべきだ」と審議拒否さえチラつかせて騒いだのは最初だけで、結局は尻つぼみとなって国民の失笑を買った。失笑の裏側に「民主党だって自民党と同じ穴の狢」という意識がある。

■相変わらずの党内主導権争い

 だが、民主党内に危機意識はない。本人の意思かどうかにかかわらず、小沢、鳩山両氏は事実上の派閥活動を活発化、お遍路さん体験で達観したはずの菅氏まで「出遅れるな」とばかりに派閥づくりを進めている。いずれの動きも党内で主導権を握るのが目的であり、旧社会党系や旧民社党系両グループも巻き込む形で“コップの中の争い”が続いている。

 冒頭に紹介したテレビCMはこうした党内事情を反映したものだ。BGMに使われているボレロは同じ旋律を次々と別の楽器が引き継ぎ、最後はオーケストラ全体が同じメロディーを合奏してクライマックスを迎える。だが、民主党内にそういうムードはない。

 岡田氏は4月7日の日本経団連幹部との意見交換で「結党以来7年間、議員同士が議論を繰り返し、官僚に頼らない政策をしっかりつくりあげてきた。みなさん産業界の要請と共通点があるのではと思う」と胸を張って見せたが、財界の一部からは「民主党は議論を続けているだけ」という皮肉も聞こえてくる。

 郵政民営化騒動、外交戦略の行き詰まりによる現政権の混乱という、「政権準備」をアピールする最大のチャンスを活かし切れない岡田民主党に、明るい未来はあるのだろうか?

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