中央社会保険医療協議会(中医協)の見直しを検討していた有識者会議が最終報告をまとめた。強いてポイントを挙げれば(1)診療報酬改定の基本方針は社会保障審議会に委ねる(2)公益委員を増員する――くらい。日本医師会が「(日医に)説明の機会が一度も与えられず、中医協の会議を一度も見ず、机上の理論で終始したのは誠に残念」とコメントしたが、残念だったのは、日医ではなく、国民(患者)の方だ。
■中身?
最終報告の中身は、ほとんどない。従ってマスコミ報道の扱いも小さい。混合診療の全面解禁と医療費抑制を社是にしているかのような新聞を除けば、他の東京紙や地方紙の紙面から当該の記事を探すのが難しい。中医協の役割は、本来、国の医療制度の方針に沿って診療報酬や薬価について、当事者同士が突っ込んで論議することにある。いまさら診療報酬改定の基本方針の議論を社会保障審議会に委ねると言われても、「当然でしょう」としか答えようがない。
公益委員の増員は結構だが、これで患者の声を代弁できるとは思えない。これまでも厚労省べったりの大学関係者を並べ、「公益性の強化」(厚労相談)はないだろう。公益委員に診療報酬改定後の検証をやらせるというが、そんな時間があるのか。結局、厚労省の調査結果を追認するだけではないか。せめて患者団体代表や医事評論家を入れるくらいの度量はなかったのか。
それに都道府県代表を入れてどうする。たぶん、知事代理が座るのだろうが、自治体の中で、最も医療に関心を示さなかった都道府県の代表が、いまさら何か言いたいことでもあるのだろうか。
■日医排除?
政府の関心は、もっぱら中医協から日医の影響力をできる限り排除することにあった。新聞も支持していた。そういう意味では、残念なのは小泉首相と取り巻きか。しかし、「病院団体代表委員(2人)の最終的な取りまとめは日医にお願いする」との尾辻厚労相の発言は出色だった。郵政改革絡みの政局下では、長期低落傾向にある日医でも、ここは敵に回したくないとの目論見が見え見えだった。「気遣いは得意。だが凡庸」との尾辻氏への世評は案外違うのでは。この件で、日医のコメントは「日医は全医師を代表している」と大きく出た。本気なら、笑える。
■素人裸足?
中医協での議論について、医師の間で「専門的で一般には分かりにくい。だから患者代表を委員しても意味はない」という声をよく聞く。うぬぼれも、いい加減にしたらどうか。では、診療側委員は理解しているのか。分かっていながら、中医協で「素人裸足」の質疑を繰り返し、恥じないのは、素人受けのポーズとでも言うつもりか。悪いが、日医委員も勉強が足りない。
正直言って、中医協は厚生労働省の手の中にある。診療報酬だけではない、薬価や保険制度は、ますます複雑化し、限られた時間の中で事を理解し、適切な指摘をするのは、かなり難しい。もし、それが厚労省の狙いだとしたら、官制医療はますます強化される。今、必要なことは、委員を支えるブレーンと組織力。そして患者の意向をつかむことだ。日医には日医総研があるが、執行部は使い方を知らない。連合や経団連にも小規模な組織があるが、人材難は否めない。
汚職事件の当事者となった健保連の元副会長には、厚生省で培った知識と厚労省と社会保険庁OBが故に入手できる独自の情報網があった。日医の故武見元会長にはカリスマ性があった。カリスマ医師でもなく、有能な人材を得ず、組織を利用できない委員は、素人プレーで受け狙いを続け、結果的に官制医療を支えている。おもしろい中医協、一度、のぞいてみませんか?
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