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「やっぱり、売れてる」 浜風
(掲載日 2005.12.20)
 国民皆保険制度への不安なのか、民間医療保険の販売が好調だ。テレビや新聞にとどまらず、折り込みや電車の吊り広告に至るまで、保険広告がめじろ押し。テレビから流れる「ボーナスだってもらえます」の女性の誘いに、思わず、画面に視線を合わせることも…。でも、これでホントにいいのかな?

■売れ筋ナンバーワン

 社団法人生命保険協会の資料「生命保険の動向」(2005年版)によると、生保各社の主要商品の中で、最近の売れ筋は「変額個人年金」と「医療保険」の2つ。皮肉なことに、組織的な保険金不払い事件で注目された生命保険の不調ぶりを際立させる結果にもなっている。

 どんな具合なのか、データを見てみよう。協会は生保の関連商品を(1)個人保険(2)個人年金(3)団体保険の3グループに分けている。個人年金は(2)、医療保険は(1)に、ぞれぞれ含まれる。

 2004年度の新規契約件数をみる。個人年金1,259万件(前年度比95.6%)、個人年金保険136万件(同122.9%)、団体保険106万件(同66.3%)。トータル1,503万件(同94.6%)。

 その内訳をみる。個人保険は3年連続の前年度割れ。生命保険の落ち込みが響いているが、医療保険は好調。いまや、全新規契約数の28%を占めるまでになった。つまり生保業界きっての売れ筋なのだ。ちなみに、同じ好調な個人年金の中では、運用(主として投資信託による運用)結果によって年金額が増減する変額年金の販売が特に急速に伸びている。

■その分、苦情も増えた

 当然なのか、全国にある消費者センターなどの窓口相談には、医療保険、個人年金、共済保険に関する相談が急増している。最も深刻なのは、保険料の高い個人年金。ひどい例では、銀行窓口でなじみのベテラン行員に定期預金約800万円全額の解約を勧められ、そこで買わされたのが「10年据え置き(10年運用)の変額年金」。契約者は82歳。年金受け取りは92歳から…。こんな事が実際に起きているのだからあきれる。

 医療保険への苦情も多い。保険免責の有無を契約者に説明しなかったというクレームはきりがないほど。また「更新型保険」は、5年、10年ごとに契約を更新するが、その都度、保険料が引き上げられる。ところが、生保側が契約者に十分な事前説明していなかったため、払えない契約者が解約に追い込まれて保障が切れてしまうなど、生保側の不誠実さを批判する声が多い。

 急伸している共済保険では、破たん後の元本保証がない保険が多いにもかかわらず、広告文に極小文字で、その旨を記すなど、悪意としか受け取れない内容の広告がはんらんしている。

■生保協会加盟社リストには、、、

 医療保険や個人年金の販売好調の背景に、公的医療保険制度と公的年金制度への不安があることは明らか。できる限り、社会保険制度がカバーすべきだが、現実は逆。政府、与党がまとめた医療制度改革大綱をみても分かる。財政再建に向けた医療給付費伸び抑制が狙いであり、そのために国民の負担増と保険守備範囲の縮小を強行する。これでは「改革」とは、とても呼べない。

 私見だが、限りある保険財源を効率的に使うことに異論はない。また、どうしても社会保険で賄えない医療費や、上乗せの老後資金を、個人で確保することに決して反対ではない。しかし、本来、社会保険でカバーすべき医療費や老後資金を削ぎ取ってまで、国民を民間保険に向かわせるような施策は明らかに間違い。そう言えば、政府規制改革の「旗振り役」が実質的な代表を務めるカタカナ生保が、生保協会加盟社リストに名を連ねていたっけ。
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