新しい年を迎えました。世の中は以前に比べると多少明るさを増しているように見えますが、今後の景気はどうなるのでしょうか。
「来年のことを言うと鬼が嗤う」といいますが、昨年12月に政府から発表された2006年度の経済見通しを中心に新年の景気動向を考えてみたいと思います。
■世界から取り残される日本経済
政府の2006年度(2006年4月〜2007年3月)の経済見通しは、名目成長率が2.0%、実質成長率が1.9%で僅か0.1%ポイントだが、成長率の名実逆転が解消する見通しになっている。仮に政府見通しどおりだとすると、名実逆転の解消は消費税率アップにより物価が上昇した1997年度を除いて、1994年度以来12年ぶりということになる。
一方、民間の研究機関による経済見通しでは、来年度はまだ名実逆転が解消されず、日本経済が正常化に近づけるかどうかは予断を許さない。
政府見通しでは来年度の日本を除く世界経済の成長率は、実質で3.4%(名目成長率は明示されていないが、5〜6%か)と今年度比ほぼ横ばいだが、欧米は利上げの影響が、中国は供給過剰が懸念されているため、大方の民間研究機関は成長が減速すると見ている。
また、政府見通しどおりに世界経済が順調で日本経済が2%程度の成長率だとしても、日本と世界との成長率格差は大きく、依然として日本経済が世界から大きく取り残されている状況に変わりはない。
更に物価の総合指標であるGDPデフレータは、直近の昨年7〜9月期に、日本では前年同期比▲1.4%とマイナス幅が拡大したが、同時期に米国では逆に+3.3%とプラス幅が拡大しており、日本経済のデフレは際立っている。(注)
そもそもGDPデフレータがマイナスなどという事態は、通常の経済では考えられず、しかもそれが10年以上も続き、加えてその間ほぼゼロ成長というのは前代未聞だ。洋の東西を問わず、経済の仕組みは物価上昇・プラス成長を前提に構築されており、貧富の差が大きい国ならば、こうした事態は暴動が起きても不思議ではないほどのものだ。
気をつけなければいけないのは、日本では長期にわたる未曾有の不況が続いたことから専門家でさえも不況に慣れ、前年比や前月比でプラスの経済指標が発表されると「景気が良い」と勘違いしてしまうことだ。
「景気が良くなった」という前提に立てば、史上例を見ない超金融緩和政策は終了、政府の歳出抑制に加えて国民負担増もやむを得ないということになるが、日本経済は政府の強気の見通しでさえもまだまだ正常化には程遠いのだから、新年の政策運営には細心の注意が必要だ。
■金融超緩和政策の継続を
唯一明るい材料は堅調な株価だ。東証第一部の時価総額は昨年1年間で150兆円余り、株価がバブル後の最安値をつけた2003年4月に比べれば300兆円弱も増加している。株式時価総額の増加による資産効果は、タイムラグを置いて必ず実態経済に反映されるので、株価に変調がなければ、新年の日本経済は持ちこたえられるのではないか。
その株価動向の鍵を握るのは金融政策だ。政策当局は日本経済全体を考えて、現在とられている超緩和政策を是非とも我慢して継続してもらいたいものだ。
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