先見創意の会 (株)日本医療総合研究所 経営相談
MENU
 
コラム
今週のテーマ
「ポスト小泉の必要条件」 関田 伸雄
(掲載日 2006.05.30)
 谷垣禎一財務相の事実上の出馬表明に続き、麻生太郎外相が強い意欲を改めて表明、福田康夫元官房長官も外遊で存在感を示すなど、ポスト小泉に向けた各陣営の動きが活発化している。“本命”の安倍晋三官房長官も7月のサンクトペテルブルク・サミット後に出馬表明する方向だ。誰が次のリーダーにふさわしいのか。必要条件を考えてみた。

 ポスト小泉に一番必要な資格は「改革の継承者」たることだ。「自民党をぶっ壊す」の掛け声の下で自らの支持基盤を解体してきた自民党内では、「改革疲れ」を指摘し、改革のペースダウンを主張する意見が強まっている。とはいえ、「有権者に改革路線を放棄したと受け止められた時点で、自民党は終わり。無党派層の支持はすべて民主党に流れる」との認識は多くの議員が共有している。

■「必要不可欠」な米政権との信頼関係

 求められるのは、改革イメージの維持と、改革によって生まれる新たな格差や軋轢の是正の両立だ。小泉改革において、「改革の骨抜き」は官僚サイドや既得権益側に立ったものだったが、ポスト小泉では「負け組」への配慮を中心にした「骨抜き」が必要になろう。自らが実現しようとする「改革」の中身について、有権者に丁寧に説明しようとする姿勢も不可欠だ。

 ただ、その際も、小泉政権と同様に、誰が「敵」「抵抗勢力」なのかを明確に示す必要がある。対立構図がわかりやすいものでなければ国民の支持は得られないからだ。郵政民営化という争点を失った衆院千葉7区補選で自民党が敗れたのは、小泉首相らの訴えた「改革」が具体性のない抽象的なものに過ぎなかったためだとの見方が有力だ。

 2番目に必要なのは米政権の支持を得られるかどうかだ。北朝鮮の核開発問題や中台関係など安全保障上の不安定要因、北朝鮮による日本人拉致事件の解決をはじめとする人権問題を抱え、日本は現時点では米国との同盟関係を維持するという選択肢しか持たない。

 小泉首相のように「日米関係さえうまくいっていればいい」と開き直る必要はないが、ブッシュ政権−ポスト・ブッシュ政権との信頼関係は必要不可欠だ。

  福田氏がベーカー前駐日大使の人脈を利用して、チェイニー副大統領、ライス国務長官、ラムズフェルド国防長官らと会談したのも、親中派でありながら米政権との関係が悪くないことをアピールするためだ。一連の会談内容について「日本語でいうと四方山話かな」と説明を避けているのは、「中身を明らかにすると、どの程度、ブッシュ政権に相手にされているかがわかってしまうためだ」(自民党幹部)という。

 福田氏がベーカー氏なら、安倍氏はシーファー現駐日大使との関係を磐石にしている。シーファー氏が横田めぐみさん拉致現場を視察したのは安倍氏の働きかけで、訪米した横田早紀江さんがブッシュ大統領に面会できたのも、安倍氏の働きかけを受けたシーファー氏が動いたためだ。日米関係筋によると、「ベーカー氏はいつでもホワイトハウスに連絡がとれる大物だ。だが、シーファー氏はブッシュ大統領の寝室にまで電話できる実力者だ」とされる。

■対中関係、社会保障問題も課題

 中国との関係改善も考えなければならないテーマのひとつではある。福田氏ら親中派を中心に「首脳会談を行えない状況を改善すべきだ」との声も広がっている。中国の胡錦濤主席が明言しているように、靖国神社参拝をやめれば首脳会談は実現できるのだろう。だが、それで、東シナ海のガス田開発をめぐる協議をはじめとする日中間の懸案がすべて解決するわけではない。靖国参拝を自粛すべきだとの経済同友会の提言もあるが、歴史認識問題を再び中国の外交カードにする愚をあえておかさなければならないのだろうか。

 内政課題では社会保障のビジョンを示すことが大切だ。すべての国民の人生設計にかかわるためで、先行きどうなるのかという不安を払拭しなければならない。消費税など財源との絡みもあって社会保障のあり方をめぐってはさまざまな意見、アイデアが錯綜している。ただ、財源を個人負担、保険料、税金でまかなうという保険方式の維持では認識が共通しているように思う。あとは総額をどう振り分けるかだ。ポスト小泉の政策論争では、消費税率引き上げ論議とセットで、こうした社会保障論議が本格的に行われることを望みたい。
javascriptの使用をonにしてリロードしてください。
コラムニスト一覧
(C)2005-2006 shin-senken-soui no kai all rights reserved.