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「基礎的財政収支の黒字化を隠れ蓑にする『骨太2006』」 前田 由美子
(掲載日 2006.07.18)
 政府は7月7日の経済財政諮問会議と臨時閣議で、経済財政運営の基本方針「骨太の方針2006」を決めた。このうち、社会保障分野については、2011年に基礎的財政収支の黒字化を実現するため、過去5年間の歳出改革(国の一般会計予算ベースで▲1.1兆円の伸びの抑制)を、今後もさらに5年間、継続すると明記した。

 基礎的財政収支を黒字化するということは、過去の借金とその利子を除く経常的な歳出を税収等でまかなうということであり、これにより借金の残高を圧縮するという。しかし、政府は、一般国民を国の借金の大きさで脅かし、財政再建のためには、社会保障費を削ることも止むを得ないと考えるよう仕向けているように見える。そして、これこそ、国の「目くらまし戦法」なのである。

■官僚がつくった「借金の仕組み」

 国の借金(国債と借入金)と社会保障費の伸びを比べれば一目瞭然である。2004年度の借金は、前年度に比べて78兆円増加したが、同じ時期の社会保障費の伸びはたったの0.6兆円である。さらに遡って、2000年度比では、借金が243兆円増えた一方で、社会保障費の増加額は2.6兆円である。社会保障費の増加額は、借金の100分の1程度でしかない。

 もっと言おう。2004年度の基礎的財政収支は▲14兆円の赤字であった。にもかかわらず、借金は78兆円も増えた。つまり、基礎的財政収支を改善したところで、借金の膨張には歯止めがかけられない状況であるとは言えないか。

 根源的な問題は大きく2つある。第一に、今ある借金は過去の遺産だということ。第二に、官僚が「国が借金をする仕組み」をせっせと作ってきたということ――である。

 借金の中味を見てみよう。2004年度の借金の残高は782兆円だ。このうち公共事業のための借金(建設国債)が31%、財政投融資のための借金(財投国債)が16%と、この2つだけで半分近くを占めている。

■国民が我が身を削る必要なし

 昨今、歳出削減の矛先が社会保障費に向けられているが、これがいかに御門違いかお分かりになるだろうか。むしろ、公共事業費こそが過去の遺産であり、これを清算しなければ何もはじまらないのである。

 そして、財投は財投で、融資先は独立行政法人や公庫といった天下り先ときている。これでは、働きバチ(国民)が額に汗して稼いだカネ(税金)を持参金にして、官僚を嫁入り(天下り)させているようなものではないか。

 社会保障費は、国民のためのものである。そして、上記に述べたとおり、国の借金は、社会保障にお金を使いすぎたから増えたのではない。国民が、我が身(国民に対する給付)を削ってまで、公共事業や官僚につくさねばならないという謂れはない。
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