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「日本の借金はなぜ増えたか」 前田 由美子
(掲載日 2006.09.26)
 「日本の借金はなぜ増えたか」。この問は大変愚問であるように思われる。多くの人の答えは、「税収で歳出をまかなえなくなったから」だろう。しかしそうとは言い切れない。国債については引き受け手がいたからこそ、必要性如何にかかわらず国債が発行されてきたと思えるフシもある。ニワトリが先か、卵が先か。

■量的緩和政策は国債緩和政策だった

 2001年3月、日銀は量的緩和政策に踏み切った。日銀が、銀行が保有する国債を買い切って資金を供給し、これによって、銀行が企業や個人への貸し出しを増やすことが期待された。日銀は財政法上、国債を引き受けてはならないことになっており、量的緩和政策は、法を曲げてまで実施されたものであった。

 日銀から銀行への資金供給量は増加した。しかし、2002年度以降2005年度まで、国内銀行の貸出残高(年度ベース)が前年を上回ったことは一度もない。銀行は余裕資金で中小企業等へ貸し出しをするどころか、貸し剥がしまでして再び国債を購入した。そしてその国債はさらに日銀が引き受ける。

 そもそも日本の国債利回りはここ数年1%台であり、米国債の4〜5%と比べて非常に低い。日銀がバックについて買い支えるという保証があってこそ、銀行は国債を買いに走った。国債発行残高の増加は、日銀の罪である。

■日本はアメリカのために借金をした

 日本の借金の残高は2004年度末で782兆円であるが、このうち95兆円は外国為替資金証券の残高である。外国為替資金証券は、外国為替売買の資金調達を目的として発行される。もちろん国債と同様、借金である。日本は1998年6月のドル売りを最後にドル買い・円売りを行っており、外国為替資金証券残高も膨らみつづけている。

 ドル買いを続ければドルが増える。ドルは日本国内では消費できない。社会保障給付費をドルで払いましょうというわけにはいかないのである。そこで、米国債を購入する。日本の保有する米国債(外国為替特別会計における外貨証券残高)は、2003年度末には58兆円、2004年度末には70兆円に達している。

 アメリカの経常赤字は円換算で2003年には▲57兆円、2004年には▲70兆円であった。つまるところ日本は、借金をしてまで米国債を買い、アメリカの赤字運営には貢献しているが、国内で使える円はない。泣くに泣けない現実である。

■金融行政の実態を国民の目に

 これまで金融行政は一握りの官僚、アメリカの手先に握られてきた。案の定、かつて「民間議員」という仮面を被っていた米国出先議員は、改革の成果が出る前に逃亡した。これは、成果ではなく、失策が明るみに出るからにほかならない。

 金融行政は非常にわかりづらい。しかし、これを闇から開放し、きちんと議論しなければ、国民を裏切りつづけることになる。そのためには、アメリカとの蜜月から脱却しようとする強い意志を持つリーダーシップが期待される。
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