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(掲載日 2006.10.24) |
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どうして、こんな法律が施行されたのだろう。障害者の自立を目指すという「障害者自立支援法」(以下、自立支援法)のことだ。十月から本格的な施行となったが、障害者や家族の間で不安が広がっている。障害の程度によって一律にサービスに利用限度が設定されたり、サービス利用料の原則一割を利用者が負担しなければならなくなった。
福祉現場から「就労対策が十分ではなく、十分な所得保障をしないまま、一割負担を強いるのは酷ではないか」との批判が出ている。法には見直しの規定が盛り込まれた。大幅な改善が駄目なら、いっそ廃止したらどうか。
自立支援法は、これまでの障害者施策の柱だった「支援費制度」の反省に立ち、ことし四月から一部施行された。支援費制度との大きな違いは、支援費制度の財源が主として税金だったのに対し、自立支援法は税金に利用者の一部負担が加わったこと。また自立支援法には障害の程度によってサービス利用に限度額が設定された。
支援費制度から自立支援法に変わった背景には、支援費制度によって給付費が急増したため、利用者負担を導入することによって、サービスの利用拡大に歯止めを掛けるという財政的な狙いがある。
同時に、厚生労働省にとって、障害者施策と介護保険制度との統合こそが究極の狙いであり、今回の一割負担導入も、介護保険制度との整合性を図ったものと受け止められている。
自立支援法の柱は(1)「身体」「知的」「精神」と障害の種類によってバラバラだったサービスを整理・統合し、市町村が主としてサービスを提供する(2)サービス利用の希望者に「障害程度区分」の認定を義務付ける(3)障害程度区分ごとに利用できるサービス限度額を設置する(4)利用者から利用料の原則一割、また施設入所者には原則一割負担のほか水道光熱費などの居住費を、それぞれ徴収するの四つ。
この十月から、サービスの本格的な整理・統合が行われるほか、障害程度区分によるサービス利用や、障害児童への適用なども始まった。
ことし四月から一部施行されているが、(1)については、福祉現場から「障害の種類によって利用できるサービスが限られていたが、他の障害者しか使えなかったサービスまで使えるようになった」とおおむね好評だという。また障害者が自活できるよう就労対策を明文化したことには「障害者就労に冷たい企業の姿勢などの実態はともかく、明文化は一歩前進」との評価がある。
しかし、原則一割負担が障害者と家族に重くのしかかっている。施設に入所している障害者が一割負担や居住費を徴収されることになったため、退所する事態が出始めている。
悲惨な事例がある。障害者本人が希望しても、家族が負担増に耐えられず、利用を制限しているという。自立支援法は障害者を扶養する義務がある親族に対し、より厳しい調査を実施し、扶養者負担を求めているためだ。
厚労省は「扶養義務があり、十分所得があるにもかかわらず、所得の少ない障害者を放置するケースが見られるためだ」と反論するが…。
システムにも課題がある。全国各地で障害程度区分の審査が行われているが、関係者から「障害の種類によって正確に判定されていない」という意見が相次いでいる。判定システムが介護保険制度のもの(介護認定)をモデルとしているためで、「ややもすると、身体機能によって判定されがちで、知的障害者や精神障害者の判定には不向きだ」というのだ。
日本身体障害者団体連合会など障害者八団体は、厚労省に対し、利用者負担の実態調査や所得保障、障害程度区分の見直しなどを求めている。介護保険制度との統合の是非を含め、障害者対策を根本から考え直した方が良さそうだ。
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