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「『独立行政法人』を舞台に稼ぐ税金ピラニア」 前田 由美子
(掲載日 2006.12.19)
 2006年9月、ある独立行政法人において約216億円の未払金があり、銀行からの借入金190億円と内部資金26億円で支払ったことが報道された。

 この法人は、独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下、スポーツ振興センター)である。スポーツ振興センターは、「サッカーくじ(toto)」を運営するが、なんといっても武士の商法。赤字を垂れ流しつづけてきた。その結果、りそな銀行への「サッカーくじ(toto)」販売委託料の支払いを先延ばしし、未払金が216億円に膨らんだ。

 しかし、これはスポーツ振興センターだけの問題ではなかったのである。

■政府出資金を食う官僚

 スポーツ振興センターは、2003年10月、政府出資金1,953億円(このほか民間から45億円の出資あり)を原資としてスタートした。ところが2005年度末の正味財産は1,705億円。政府出資金の250億円近くが水の泡と消えた。とはいえ、経営幹部(天下り官僚)が責任をとることはない。お咎めもなく、天下り後の手遊びに、武士の商法を堪能する。

 正味財産が政府出資金を割り込んでいるのは、スポーツ振興センターだけではない。財務諸表を紐解いたところ、少なくとも雇用能力開発機構、労働者健康福祉機構などでも政府出資金が目減りしていることが確認された。

 独立行政法人に対する政府出資金は、日本高速道路保有・債務返済機構3.4兆円、中小企業基盤整備機構1.1兆円、年金資金運用基4.2兆円など、全体では10兆円を超えると推計される。その出資金で、官僚の天下り先が造成され、それを官僚が着々と食い潰す。国家財政から分離され、監視の目がゆるくなったことで、「toto」のようにビジネスルール違反の仰天事例も起きた。

■公債金利を食う官僚

 スポーツ振興センターは、国債を担保にして借金をしたと言われている。そこで、蓋を開けてみたら、確かに投資有価証券として国債20億円、地方債248億円を保有している。スポーツ振興センターだけではない。ざっと集計してみたところ独立行政法人は全体で2兆円近い国債・地方債を所有している。まるで独立行政法人が、国債・地方債の受け皿として設立されたかのようだ。

 独立行政法人の保有する地方債の筆頭にあがるのは、ジャンク債とも揶揄される大阪市公債。地方債の中でもかなり高利回りで、それだけ市場が敬遠しているということだが、独法の官僚は、こうして地方官僚の手助けをする。地方官僚は、住民の血税を巻き上げ、独法の官僚に金利を払う。

 ちなみにスポーツ振興センターが2005年度に得た運用収益は6億円、支払われた給与費は7億円。地方の税金でだいたい食える按配であった。

■国の補助金を食う官僚

 親(国)に軍資金を出してもらい、兄弟(地方)から貢いでもらっても、まだ足りない。不肖の息子(独法)は、親(国)からお小遣いまで貰う。

 話を最初に戻すと、スポーツ振興センターは、未払金を返済するために、190億円の借金をした。この借金をどう返すというのだろう。サッカーくじ(toto)は大赤字。そこは官僚、抜かりはない。2003年度は国から47億円の補助金(運営費交付金)を貰っている。何年間で借金が返せる算段だ。これでも無理なら、政府出資金(つまり税金)で調達した国債、地方債を売る。つまり政府出資金はパアーになりましたとでも言えばよい。いずれにせよ、官僚のフトコロ(役員報酬、退職金)はまったく痛まない。

 安倍政権も、「債務圧縮のために、歳出削減を」という流れを継承している。しかし、その影で、官僚にせっせと荒稼ぎをされてはたまったものではない。国家財政は一般会計だけではなく、特別会計も注目されるようになってきたが、独立行政法人はじめ、官僚が舞台にしやすい天下り先にも厳しくメスを入れていただきたい。そして、浮いたお金は、きちんと国民のために使っていただきたい。
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