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(掲載日 2007.05.01)
 夏の参院選の前哨戦と位置付けられた統一地方選と参院福島・沖縄補選が終了した。統一地方選では平成の大合併で地方議会の定数が減少した影響もあって自民党系が後退、これまで地方でのプレゼンスが不足していた民主党が躍進を果たした。しかし、参院補選は与野党1勝1敗という痛み分けの結果になり、安倍自民党と小沢民主党による政権争奪の行方はさらに混沌としてきたかに見える。

 統一地方選全体を総括すると、民主党は県議選の行われた28県のうち20県で自民党との得票率の差を縮めた。とくに高知県議選では自民党の得票率が8.46ポイントも低下した。また、東京、埼玉、千葉、神奈川1都3県の市区議選の結果をみると、民主党は計240議席を獲得し、前回統一地方選の138議席を大きく上回った。埼玉、神奈川両県の市議選では自民党の議席数を上回り、1都3県の市議選をトータルすると、自民党126議席に対し、民主党123議席と肉薄する結果となった。

 数字だけみると、民主党は地方でも自民党の対抗軸としての存在を確立したようにみえる。ただ、本当にそうなのだろうか―。

 今回の統一地方選で当選を果たした民主党地方首長・議員を分析してみると、若手も含め、本来なら自民党から出馬してもおかしくない保守系首長・議員が多い。各選挙区において自民党の公認を争った結果、敗れた方が民主党の公認や推薦を受けて当選したケースも目立つ。国全体の政策決定に決定的な影響力を持たない地方選挙では当たり前のことだが、民主党が参院選の最大の争点と位置づけている格差是正もあまり大きな声で叫ばれなかったように思う。

 地方選挙では争点は地域ごとに異なり、血縁や地縁が優先される。大都市部では候補者の見た目やイメージだけで1票を投じる有権者も少なくない。もちろん、「民主党の候補だから」といって投票した有権者もいるのだろうが、その割合は明確ではなく、参院選のことまで考えて投票所に足を運んだ民主党支持者がどれくらいいるのかも不分明だ。

 1勝1敗の痛み分けとなった参院補選の結果を含めて、新聞やテレビといったマスコミは今回の一連の選挙について「与野党ともに参院選戦略の見直しを迫られる結果になった」などと論評している。自民、民主両党の内部にはそれぞれの執行部に批判的なグループを中心に、参院選戦略の転換を要求する声が高まっている。

 しかし、これは形を変えた執行部批判以上のものではない。投票を3カ月後に控えたこの時点で参院選戦略を見直すというのは非現実的だ。安倍晋三首相は「実績を積み重ねることによって国民の判断を仰ぐ」という正攻法にこだわり、憲法改正の手続き法である国民投票法案や教育再生関連法案の今国会成立に全力をあげている。小沢一郎民主党代表も小休止はするものの、1人区(1議席改選区)を重点にドブ板型選挙運動を続ける姿勢を崩していない。

 7月の参院選は安倍VS小沢の正面からの激突になる。最長であと5年5カ月の自民党総裁任期中の憲法改正を視野に保守色を強める安倍首相。対する小沢氏は格差是正を前面に出して与党の過半数割れに政治生命をかけている。与党が過半数割れに追い込まれれば安倍政権の求心力は急速に低下、政権維持すら覚束なくなる。逆に、過半数割れに追い込めなければ、小沢民主党は崩壊の過程をたどることになる。

 安倍首相はさきの温家宝中国首相の来日を無難にこなした。連休の米国、中東歴訪も慰安婦問題で米マスコミに追及される懸念があったものの、旧軍による強制性を認めた「河野談話」を踏襲すると明言してかわし、一定の成果をあげつつある。一方の小沢氏は相変わらず、マスコミに登場することもなく、静養を取りつつ水面下での活動を続けているようだ。

  与党の過半数維持には参院選で64議席を確保する必要がある。公明党が選挙区で5議席、比例代表で8議席の13議席を獲得するという前提に立てば、自民党は51議席の死守が求められることになる。比例代表で前回選挙並みの15議席を獲得すると仮定、18の複数改選区で1議席ずつ確保するとすれば、29の1人区で18勝することが不可欠だ。

  決戦まで残り3カ月をきった。連休明け以降、会期末に向けて国会での与野党攻防も激化の一途をたどりそうだ。
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