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(掲載日 2007.12.04) |
11月16日、中央省庁のさらなる権限委譲や新たな地方税財政改革を審議する地方分権改革推進委員会は、「中間的な取りまとめ」を公表した。
国が自治体に「義務づけ」ている事務事業の総点検を各省庁に求め、同委員会が示した基準に合致しないものは廃止を求める方針を示した。
地方分権改革推進委員会が進めようとする国と地方の役割分担の明確化については、方向性はよい。しかし、「中間的な取りまとめ」の中で明記されたことで、1つ看過できない点がある。それは、国と地方の財政関係についてである。
「中間的な取りまとめ」によると、現状を「国と地方の歳出比率が4:6であるのに対し税源配分が6:4である」とした上で、「当面、国と地方の税源配分について、地方から主張されている5:5を念頭に置くことが現実的な選択肢となる」と明記した。
これは、地方自治体側の「ダブルスタンダード」の主張に基づくものであり、数値目標としてふさわしくない指標にこだわっており、無意味なものである。
その「ダブルスタンダード」について詳述しよう。これまで、我が国の国と地方の財政関係の議論において、「国と地方の歳出比率が4:6であるのに対し税源配分が6:4である」としばしば述べられてきた。
例えば、図1に示すように、2003年度決算ベースで見ると、その通りである。
図1 国・地方の歳入歳出の関係図(2003年度決算)
※計数は、決算ベースであり、それぞれ四捨五入によるため、合計が一致しない場合がある。
出典:財務省資料
しかし、小泉内閣において国と地方の税財政改革、いわゆる「三位一体改革」が行われ、国税から地方税への税源移譲が行われた。具体的には、国税の所得税を地方税の住民税に税源移譲することとなり、事実上2006年度予算からそれが実施された。
税源移譲が行われた結果、どのように変化しただろうか。それを見たのが、図2である。
図2 国・地方の税財源配分の推移
資料:地方財務協会「地方財政要覧」等
図2を見ると、税源移譲後には、国税収入と地方税収入の比率は、6:4から55:45に変化している。
その上、国税の一定割合は地方交付税として国から地方に配分されている。そして、地方自治体側は、「地方交付税は地方独自の財源」とかねてから主張しており、もらった地方交付税は使途を自由に決められる一般財源となる。この地方交付税まであわせた地方の財源は、全体の6割を占めることになる。
つまり、現状は、事実上の国税収入と事実上の地方税収入の比率は、既に4:6となっており、歳出ベースの比率である4:6とほぼ同じ比率となっているのである。
地方分権改革推進委員会が、前述のような主張をして何を欲するのだろうか。その裏側には、前述の引用文にもあるように、「地方から(の)主張」がある。
地方自治体側は、図2の解釈について、従来から「ダブルスタンダード」である。つまり、地方税を増やしてほしいと訴えるときには、国と地方の税収比率を6:4と主張(これも、すでに55:45となっているにもかかわらず)する一方で、地方交付税を減額されたくないときには、「地方交付税は地方独自の財源」だから国の都合で減額するなと主張する。
地方の財源に、地方交付税を含めるのか含めないのか、都合よく使い分けるという「ダブルスタンダード」なのである。
地方分権改革推進委員会は、そのような「ダブルスタンダード」に決して乗ってはいけない。現実は、地方交付税まであわせれば既に国と地方の比率は4:6
となっている。
これ以上、国税を減らす形で地方税を増やす「税源移譲」は必要ないのである。格差是正論議に乗じて、こうした「ダブルスタンダード」と、それに基づく無意味な提言を認めてはいけない。
分権時代において、地方自治体が、地方税を増強したいならば、自ら住民と向かい合って、国税とは独立に、増税を訴えればよい。その結果として、国と地方の税収比率が5:5となるならば、それは結果論である。それを、予め目標として設定するのは、全く無意味である。
地方自治体は、地方分権改革推進委員会に頼むのではなく、税収を増強したいなら自ら汗をかくべきである。そうしてこそ、地方分権のメリットが享受できる。
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