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(掲載日 2007.12.18) |
当初懸念していた以上に、サブプライムローン問題が深刻化している。
サブプライムローン問題の震源地である米国では、金融機関や資産運用会社の損失が顕在化し、市場が連日乱高下している。
金融政策当局であるFRB(米連邦準備理事会)は、市場の混乱や実体経済への影響を緩和するため、8月のFOMC(米連邦公開市場委員会)
で公定歩合(FRBの金融機関への貸出金利)を引き下げた後、9月、10月、12月のFOMCで3回連続してFFレート(フェデラルファンドレート:米国の政策金利)を引き下げたものの、未だ市場の混乱は収まっていない。
■なぜ、混乱が続いているのか
FFレートの引き下げという金融緩和策は、市場の要望に沿ったものだったので、市場の混乱は一時的に収まった。
しかし、その後公表されたFOMCの議事録やFRB関係者の言動が、市場が期待しているよりも、利下げに対して慎重だったため、市場はFRBに対してやや疑心暗鬼になっている。
■特別だったグリーンスパン氏
実務家出身のグリーンスパン前FRB議長は、1990年以降の日本のバブル崩壊時の金融政策を反面教師にし、先手を打って行動することで、金融市場や実体経済の混乱回避に成功してきた。
だが、学者出身のバーナンキ現FRB議長は、市場や実体経済を十分に吟味してから金融政策を行う意向のようで、対応が後手に回っている感は否めない。
ただ、FRBの今回の対応は決して誤っているわけではなく、グリーンスパン時代に比べて慎重なだけだ。振り返ってみると、グリーンスパン氏が特別だったのかもしれない。
■「市場の失敗」を救うには
FRBの対応がやや後手に回ってしまったため、サブプライムローン問題は深刻化している。
また、サブプライムローン問題は、いわば「市場の失敗」なので、問題を根本的に解決するためには、政府がサブプライムローン関連証券を買い上げるなど、「失敗した市場」に政府が直接介入する必要があるのではないか。
「市場の失敗」を放置したり、バブル崩壊時の日本のように「市場の失敗」を助長すれば、その後のつけは極めて大きなものになるからだ。(注)
■なぜ日本は必要以上にダメージが大きいのか
日本の株価はサブプライムローン問題で、震源地の米国よりも大幅に下落している。
米国景気の減速が日本の輸出に悪影響を与えることや、日本の金融機関もサブプライムローン関連証券を保有していることから、サブプライムローン問題が日本経済に影響を与えることは確かだが、震源地の米国よりもダメージが大きいはずはない。
FRBは対応が後手に回っているだけだが、日本銀行がこの期に及んでもこの問題を「対岸の火」とし、「隙あらば利上げ」と考えていることが、日本の株価の重石になっているのではないか。
■新年の景気は?
日本にとって米国景気の減速は確実にマイナスだ。しかも、バブル崩壊後の金融政策の誤りを学習しない日本銀行の行動を考えれば、新年の日本の景気は慎重に見ておくほうが良さそうだ。
(注1) |
1990年、資産価格が暴落し金融緩和が必要だったにもかかわらず、日本銀行は逆に「利上げ」を2度行うなど金融引締めを実施した。その後、日本経済は長期間低迷し、未だデフレから脱却できていない。
1991年度以降、仮に日本経済が世界の半分程度(3.5%)でも成長していたならば、今年度のGDP(国内総生産)は780兆円程度になっているはず(実際は500兆円強)で、この間の得べかりしGDPの累計額は2000兆円以上になる。(GDP、成長率はいずれも名目値)
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