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コラム
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(掲載日 2008.02.05)
 
 ワンコインワーカー。電話一本で呼び出され、その日の仕事にありつく。その日限りや数日間の単純労働が多く、正社員が嫌う、過酷で汚れる仕事も少なくない。

 何年働いてもキャリアにはならず、長く働いても貧困から抜け出せない。米国では“ワーキングプア”とか“ニュープア”の予備軍として社会問題になっている。

 日本はどうか。「日雇い派遣労働者」がほぼ相当する。昨夏、厚生労働省が行った日雇い派遣労働者の実態調査(約五万人)によると、多くが二十代、三十代の若い世代。

 日当(一日賃金)の水準は正社員と比べさほど低いとはいえないが、昇給が見込めず、賞与、社会保険などの面では、正社員と大きな差がある。

 常用ではないため、一カ月に十五日働いて月収十五万円未満の人が大半との民間調査もある。雇用保険や健康保険、公的年金などの社会保険の加入がまったく不可能ではないが、常用ではないため実態として未加入の労働者が多い。

 医療費未払いや診療抑制だけではなく、経済的な理由で結婚や出産をためらうケースも報告されている。このままでは将来的に大勢のワーキングプアを生み出すことになるとの指摘さえある。

 同じ派遣でも、一般派遣労働者の待遇改善は、わずかだが前進した。労働時間や仕事の内容が正社員と同じ場合、建前上、基本的には差別が禁止されることになった。

 しかし、短時間労働者や日雇い労働者の待遇改善は大幅に遅れている。派遣労働者間でも“格差”が確実に広がっいる。

 厚労省は、日雇い派遣労働者の人数を正確に把握していないが、五万人とも十万人ともいわれている。増え始めたのは、規制緩和の一環として労働力不足が深刻になっていた製造工場などへの派遣が可能になった二〇〇四年ごろから、といわれる。

 それまで派遣労働者といえば、通訳や技術者など専門的な知識や技術をもっている人が限られていた。また“働き方の多様化”が注目されるようになり、正社員ではなく、一見、自由な生き方にうつるフリーター的な生き方を選ぶ若者が増えたこと要因といわれる。

 だが、最も大きな要因となったのは、リストラを迫られていた製造業や流通関係などの企業が低賃金の労働力を切望していたことだ。

 昇給、賞与、社会保険など労務コストが安い労働力として、日雇い派遣労働者を積極的に受け入れるようになった。経済界の低賃金労働者の需要拡大が、派遣社員を提供するグッドウィルやフルキャストのような派遣会社の事業拡大を支えたともいえる。

 その派遣会社の行政処分が続出している。グッドウィルが危険作業として日雇い派遣労働者の就労が禁止されている事業(港湾運送や建設など)を行う企業に労働者を派遣した。

 また派遣先が日雇い派遣労働者を別の企業に“二重派遣”しているのを、承知していながら、派遣契約を結んでいた―として事業停止を命じられるなど、日雇い派遣企業のずさんな経営実態が浮かび上がっている。

 厚労省は、派遣先にも管理台帳の作成を義務付けるなどの規制を強化を目指しているが、安価な労働力として受け入れを容認している一般企業や経済団体の責任も重い。

 かつて「日本の政治二流、経済一流」と言われた時代があった。その真偽はともかく、現時点で、言わせてもらえば「政治二流半、経済それ以下」ではないだろうか。
 
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