| (掲載日 2008.02.26) |
日本経済の先行き不安が報道されているにもかかわらず、大学生の就職状況は良好である。団塊の世代の大量退職、生産拠点の日本回帰、一部業種の活況などが牽引となっていると思われる。本学の男子学生の場合も、一人で複数の会社から内定を得ることは珍しくない。
他方、障害者の場合、その雇用を市場に委ねると彼らの持つハンディキャップゆえに阻害されてしまうことは明らかである。健常者である大学生と採用内定獲得を競えば、どちらが優位かは言うまでもない。
ところで、障害者福祉の理念は社会参加であり、その最も重要な二つが教育と雇用である。したがって社会参加の理念を達成するには、障害者のために教育や雇用の特別プログラムが必要となる。
雇用に関して、国は障害者雇用促進法を制定し(昭和35年)、公的機関および従業員が56人以上の規模の民間企業には一定割合の障害者を雇用することを義務付けている(義務化は昭和51年から)。いわゆる法定雇用率制度である。
現在、公的機関は2.1%、民間企業は1.8%である。この制度を通して、障害者が就労の機会と経済的自立を得られるよう支援している。同法施行後、年々、着実な進歩が見られるが、しかし、なお発展途上にあるといわざるをえない。
直近の資料によると(厚生労働省発表平成19年11月20日)、民間企業(56人以上)の実雇用率が1.55%、規模別企業のワーストワンは100〜299人規模の中小企業で同1.3%、1,000人以上大企業は実雇用率は高いものの(1.74%)、雇用率未達成企業の割合が最低の40.1%と報告されている。
雇用率が法的義務である以上、これを満たなさない場合には金銭的制裁が課される。すなわち、従業員301人以上の企業は、法定雇用人数に一人足りないごとに毎月50,000円の障害者雇用納付金を支払わなければならない。
一方、雇用率を超えて障害者を雇用する企業に対しては法定雇用人数を一人超えるごとに障害者雇用調整金(27,000円。301人以上)、若しくは報奨金(21,000円。300人以下)が前記雇用納付金を原資として支給される。
なお、現在、雇用納付金支払義務は従業員301人以上の企業に限られているが、これを2010年までに201人以上、2015年からは101人以上の企業にも拡大するための法改正が検討されている。
ここに興味深い資料がある。厚生労働省が昨年4月に公表した従業員5,000人以上の企業の障害者雇用率状況(2006年)である。
これによると、雇用率ベスト5企業は1位 ユニクロ、2位 日本マクドナルド、3位 衣料品専門店チェーン「しまむら」、4位 すかいらーく、5位 パナソニックエレクトロニックデバイスであった。
上位4社は私達が消費者として身近に接する企業である。これら企業の障害者雇用への取り組みを私達が評価し、企業選択の要素とするならば、いっそうこれら企業の取り組みは熱心になるのではないだろうか。
最近、「社会的企業」という言葉をしばしば聞く。これは環境、福祉、教育など、現在する社会的課題に様々な形態で取り組む企業を意味する。
本体事業が外食産業であれ、衣料販売であれ、その事業活動を通して、社会貢献を実践する企業も当然、一種の社会的企業と呼んでいいであろう。
大切なことは、このような民間企業が実践する社会貢献を消費者である私達が正当に評価すること、つまり、同じ物を購入するなら何もしていない企業よりも、社会的意義のある事業に取り組んでいる企業の商品を選択・購入するという行動をとることである。換言すれば、消費者の意識や行動が企業活動を規定する側面があるということである。
だからこそ、消費者には、その所属する社会をより良い、あるいは、より暮らしやすい方向へ変えていく力を持つことを自覚し、社会貢献をする企業を積極的に評価・支援することが要請されることになる。
本論から若干それることになるが、たとえば、労働者を大切にする企業や収益の一部を慈善事業に寄付する会社の製品を購入する、と言う消費行動が企業サイドに伝われば、それは企業の経営方針に少なからぬ影響を及ぼすと思われる。
社会がこのように循環するならば、企業と消費者の共存が美辞麗句ではなく、真に実現することが期待できる。
消費者は「お客様は神様です」の意味を今一度、考え、その持つ力の大きさを認識するべきだろう。単なるクレーマーとして自己の権利ばかりを主張するのではなく、企業の社会貢献を後押しし、社会的企業を養成する潜在的能力を発揮することが、私たちに強く求められている
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