先見創意の会 (株)日本医療総合研究所 経営相談
MENU
 
コラム
今週のテーマ
(掲載日 2008.03.04)

 サブプライムローン問題は年が明けても一向に収まらない。それどころか、この問題から派生した新たな問題が、次々に発生している。

 例えば、「モノライン」と呼ばれている金融保証会社の破綻懸念だ。詳細は割愛するが、債務者が返済できなくなったときに肩代わりする保証会社が、サブプライムローン問題のせいで、予想よりも肩代わり債務が多くなったために、払いきれなくなって破綻する可能性が出てきたのである。そうなると、その保証を当てにしていたところにも影響が出てくる。

 このように、昨年8月に顕在化したサブプライムローン問題は、解決に向かうどころかますます広がりを見せている。

■世界株価の暴落

 米国の「モノライン」会社の格下げをきっかけに、世界の株価は1月21日から暴落し始めた。日本の日経平均株価は、22日には前日比▲752.89円の12573.05円と今年最大の下げを記録した。

 前日も前日(前週末)比▲535.35円だったので、日経平均株価は2日間で1300円(約10%)ほども下げたことになる。

 米国は21日が「キング牧師の誕生日」で、株式市場が開かれなかった。そのため米国株式市場は、日本を始めとした世界の株式市場の暴落を受けて、22日の取引が始まることになった。

■踏みとどまった米国

 だが、米国株価(NYダウ)は、結局前日比▲128ドルの11971.19ドルと、▲1%程度の比較的小幅な下げで22日の取引を終了した。

 世界の株価が暴落する中で、米国株価がこの程度の下げでとどまった原因は、米金融政策当局の素早い対応だった。

 米国のFRB(米連邦準備理事会:日本の日本銀行にあたる)は、22日の株式市場が始まる前(日本時間では22日夜)に、電話で緊急のFOMC(米連邦公開市場委員会:日本の日銀金融政策決定会合にあたる)を開き、政策金利を大幅(▲0.75%ポイント)に引き下げた。

 NYダウは、当日の下げがさほど大きくなかっただけではなく、翌23日には前日比+300ドルと大幅に上昇している。(注)

■バーナンキ議長の変身

 サブプライムローン問題は、なかなか根が深く、関連して新たな問題も生じている。本来、サブプライムローン問題がここまで広がる前に、米国政策当局は効果的な対応をすべきだった。

 だが、昨年この問題が顕在化したときにこのコラムで述べたように、当初FRBバーナンキ議長には、思い切った政策を取ることにためらいがあったようだ。

 しかし、1月22日を境にバーナンキ議長の対応は完全に変った。バーナンキ氏は、正統派の学者から「国益を守る」金融政策責任者に変ったのである。

■このまま乗り切れる可能性も

 サブプライムローン関連証券を取引する市場は、既に価格形成の機能を失っている。こうした「市場の失敗」に対しては、政府の介入が必要であり、介入しなければ市場と実体経済はスパイラル的に悪化してしまう。

 つまり、関連証券への政府の梃入れなしには根本的な解決は困難な状況になっている。

 だが、1月22日以降の米国政策当局の果敢な対応を見ると、米国の実体経済への波及は、かなり限定的なもので済むのではないかと思われる。

 米国の株価が、通常の年間変動率の範囲内である10数パーセントの下落率にとどまっていることが、その可能性を示唆している。

(注)  米国は、1月9日にも臨時のFOMCを開催しているが、そのときは利下げをしなかった。なお、1月22日の時点で、日本の日経平均株価は、2日間で10%ほども下げていたが、日本政府は何も手を打たなかった。  

 日本にとって、サブプライムローン問題が「対岸の火」では済まされないことは、もはや誰の目にも明らかなのだが・・。
 
javascriptの使用をonにしてリロードしてください。
コラムニスト一覧
(C)2005-2006 shin-senken-soui no kai all rights reserved.