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コラム
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(掲載日 2008.05.13)

 「脱亜入欧」は遅れたアジアから脱し、欧米列強の仲間入りを企図した明治政府のスローガンである。「富国強兵」と併せて、これらにより明治政府は日本の近代化を図ろうとしたのである。

 そのときから100年以上を経た現在、ヨーロッパ諸国は社会が成熟し、また、社会資本や社会保障制度の整備に財政を投入してきた結果、経済は低成長を維持して今日に至っている。

 他方、アジア諸国はシンガポール、台湾、香港、韓国等のNIES新興工業国国家群、そして現在は大国、中国やインドにおける経済発展が目覚しい。

 わが国もアジア圏にあって、これらの国々との経済的連携を深め、商機獲得に余念がない。つまり、ここしばらくは「脱欧入亜」現状が顕著である。

 若い新興国家に刺激され続けているせいか、官民あげて日本の国力や生産力の減退に危機感を覚えているようである。なぜなら少子高齢社会である日本は、今後、人口減が予想されているからである。そのため、国は少子化現象に歯止めをかけようとしたり労働力不足に対応するための立法や施策を相次いで行っている。

 しかし、人口が減り生産性が低下することがそれほど、悲観するべきことなのであろうか。ここでヨーロッパ諸国を概観し、この点について考えてみたい。

 私達は社会保障制度のみならず、様々な分野について、どのような方向性が望ましいかを検討する際にヨーロッパの国々、とりわけ英独仏の法律や制度を研究し参考にしていることは今も昔も変わらない。かつてより、仮に国力が衰えていたとしても、これらの国々から学ぶべきことは多い。



  表を見ると、どの国も日本より人口が少ないにもかかわらず、一人当たりGDPは日本以上かあまり変わらない。

 しかも、これらの国々が人口が少ないからといって国家として衰退の一途をたどっていると認識している人はいないであろう。むしろ、ヨーロッパ諸国は今も教育、音楽や絵画などの芸術、等々の文化面においては世界一流の水準を保っている。

 人口が少ないことが国力や生産力の低下に直結するとは限らないことを彼らが示している。そこで今一度、「脱亜入欧」を再考してみたい。それはかつてと同じ思想に基づくものではない。

 日本の現状に適した政策のあり方、社会の仕組みの作り方を考えるために必要な思想の道具として使おうというものである。つまり、「21世紀型脱亜入欧」である。

 わが国は65歳以上の高齢者が人口の2割を超え、日本人の平均年齢は44歳(平成19年度)で、中年国家であり、G8国家はいずれも40代である。

 他方、中国は33歳、インドは24歳である。不惑を迎えた者が若者と同じ感覚で考え行動することは、時に思慮分別が足りないと思われかねない。

 人口減を防ごうとして、少子化に歯止めをかけることや外国人の大量入国受入れは、現状の日本社会では極めて困難である。

 そうであれば、人口が日本より少なくても、私達が見習うべきことが多いヨーロッパ諸国を見習うこと、つまり「21世紀型脱亜入欧」を指向し、人口の減少に過剰反応しない成熟した態度が求められよう。

 不惑の国民は国力や生産力の増強・拡大よりも個々人の幸福や社会の安定により価値のおく国で暮らしたいと願っていると思うからである。
 
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