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(掲載日 2008.08. 05)

 サブプライムローン問題が顕在化してから、ほぼ1年が経過した。欧州金融機関の資金繰り悪化で顕在化したこの問題は、震源地の米国や、顕在化のきっかけをつくった欧州では影響が大きいものの、日本にはほとんど関係ないと見られていた。

■日本への影響は軽微ではない

 日本の金融機関は、1990年代末から顕在化した信用問題や、その後の不良債権問題で疲弊し、大きなリスクをとれなかったため、サブプライムローン関連業務に主体的に関与(注1)できなかった。それが幸いして「ほとんど影響なし」と見られていたのである。

 だがサブプライムローン問題は、当初考えられていたよりも、ずっと大きな影響を日本に与えている。

 日本経済は1990年代半ば以降、内需不振が続いている。2002年から始まったとされる「いざなぎ超え」の景気は、内需不振を補って余りある、絶好調な海外景気のおかげだった。

 今回のサブプライムローン問題は、米国をはじめとした世界経済に大きな打撃を与えている。しかも悪いことに、原油や穀物などの価格高騰も続いており、外需だけが頼りの日本経済は欧米よりも悲惨な状況だ。

 また日本の金融機関などは、サブプライムローン関連業務に主体的には関与しなかったものの、その関連商品を購入していたため、大きな損失を被っている。

■日本株価の下げは欧米よりもきつい

 このように日本にとって、サブプライムローン問題は、当初考えられていたような「対岸の火事」ではなかったのである。

 現に株価を見ると、昨年高値から今年の安値までの下落率は、欧米では20数%にとどまっているが、日本は35%を超えている。

 最近米国では問題が一層拡大しており、米国の金融システム不安が懸念される事態になったため、日本も含めた世界の証券市場は更に大きく揺らいでいる。

■今後の展開

 サブプライムローン問題は、今後どうなるのだろうか。

 サブプライムローン問題の原因である住宅価格の下落率は、現状ではせいぜい10数%に過ぎない。しかし、RMBS(住宅ローン担保証券・(注2))の市場が機能していないため、証券保有者の損失が確定できない状況だ。

 米政府は政策を総動員して問題の広がりを防いでいるが、米金融機関の信用問題など、次から次に問題が出てきており、対策はもぐらたたきの様相を呈している。

 問題を「根治」させるためには、こうした「対症療法」ではなく、RMBS市場に米政府が介入し、市場の機能を回復させなければならない。だが政府の市場介入には反対意見が多く、問題解決には時間がかかりそうだ。

 ただ、米政府は日本における信用問題や不良債権問題を十分に研究しており、対応策を熟知しているので、米国経済が日本のような機能不全に陥ることはないだろう。

(注1) 欧米の金融機関は、住宅ローンを束ねて証券化し、それを投資家に販売していた。その過程で、金融機関は一時的に住宅ローンのリスクを抱えることになる。金融機関には、そのリスクに耐える体力が要求された
(注2) サブプライムローン問題が顕在化したとたん、住宅ローンを担保にした証券(Residential Mortgage-Backed Securities :RMBS)市場は、買い手が敬遠したため価格が急落し、取引はほとんど行われていない。そのためRMBSの価格は実際の価値を表しているとはいえない。

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