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(掲載日 2008.09.16)


 9月1日の福田康夫首相の突然の退陣表明で、政局の焦点はポスト福田の自民党総裁選とその後の衆院解散・総選挙に移った。

 とくに注目を集めているのは10日告示、22日投開票の自民党総裁選だ。

 本命の麻生太郎幹事長(67)、対抗の与謝野馨経済財政担当相(70)、大穴の小池百合子元防衛相(56)のほか、石破茂前防衛相(51)、石原伸晃元政調会長(51)の計5人が出馬を表明し、政策論争とまではいえないまでも、連日、マスコミに取り上げられ、活発な論戦を繰り広げている。

 これに対し、民主党では8日告示の代表選に予定通り、小沢一郎代表(66)しか立候補せず、無投票3選が決まった。

 このため、マスコミ報道はポスト福田をめぐる動きに集中し、民主党内では「こんなことなら、形だけでも代表選をやっておけばよかった」という焦りが出ている。

 しかし、本来、有権者が最も注視しなければならないのは、公明党とその支持母体である創価学会の動きだ。

 創価学会は衆院300選挙区のほとんどに一定の会員を維持している。大政党に有利なことが実証されている小選挙区選挙において、自民、民主両党が接戦となれば、創価学会が動かす組織票で当選者が決まるという仕組みだ。

 公明党が今回の福田辞任に主導的な役割を演じたのも、こうした背景があるためだ。

 公明党の議席数は、衆院で31議席(議席占有率は6.5%)、参院で20議席(同8.3%)に過ぎない。

 衆院では与党が再議決に必要な3分の2を維持するために不可欠であり、与野党逆転の参院でも公明党の議席は大きな意味を持つ。

 だが、自民党の支持基盤が軒並み崩壊する中で、公明党−創価学会が総選挙の帰趨に及ぼす影響力は、公明党の議席数とは比べものにならないくらい大きい。

 福田退陣の最大の要因も年内解散ができないことを理由に、公明党から「NO!」を突きつけられた結果であり、それを忘れると政治の動きが読めなくなる。

 政府・与党は自民党総裁選直後の24日に臨時国会を召集して首相指名選挙を実施し、組閣後の29日に新首相の所信表明演説、10月1日からの3日間で各党の代表質問を行う構えだ。

 その直後に衆院を解散して実質的な選挙戦に入る。自民党総裁最有力の麻生氏は「総選挙で戦わなければならない相手を想像してほしい。誰が民主党と戦うのか。これが総裁選の最大の争点だ」と明言している。

 10月28日公示、11月9日投開票ともされる総選挙で、公明党はどう動くのか。

 自民党中堅議員は「年内解散は公明党の要望を受け入れたものであり、自公連立維持を前提にした解散なので、公明党−創価学会はもちろん自民党候補の支援にまわる」という。

 確かに、公明党−創価学会が表立って民主党候補支援にまわる可能性は極めて低い。

 しかし、総選挙で自民党が過半数を維持できず、民主党への政権交代が現実のものとなる可能性があるだけに、ことはそんなに単純ではない。

 公明党−創価学会には、創価学会そのものと創価学会の最高幹部7人が元公明党委員長である矢野絢也氏から名誉毀損で損害賠償請求訴訟を起こされているという問題もある。

 矢野氏の提訴理由は「基本的人権の侵害」であり、訴状には言論活動の中止強要、機関紙などでの誹謗中傷などが列挙されている。

 訴状などによると、創価学会による矢野氏への非難は、矢野氏が公明党と創価学会の関係について「政教一致といわれても仕方がない部分があった」と著述したのをきっかけに始まったとされる。

 参院で与野党逆転を果たした民主党など野党側からは「政教分離」を定めた憲法との関係を理由に、矢野氏および創価学会幹部を証人喚問しようとする動きも出ていた。

 公明党が完全に野党に転落し、国会で創価学会幹部の証人喚問が行われるような事態になれば、実際の喚問内容はともあれ、公明党−創価学会の大幅なイメージダウンは避けられない。

 また、来年7月には東京都議選が予定されている。創価学会は東京都によって宗教法人として認可されており、都議選での敗退は死活問題ともいえる。

 こうした状況の下で、公明党−創価学会が総選挙で自民党候補だけをひたすらに支援するということが可能なのだろうか? 結論は総選挙の結果にはっきりと表れる。小選挙区制度の下、少数政党が政権の行方を左右する局面がいつまで続くのかという問題意識をもって、総選挙の成り行きを見守っていきたい。

 
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