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コラム
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(掲載日 2008.10.28)

■医業承継とは

 そもそも医業承継とは、何か。

 医業承継とは、病医院を次世代の経営を担う者に引き継ぐことをいう。

 具体的には、2つのバトンを現世代から次世代に引き継ぐことが必要とされている。

 2つのバトンとは、病医院の代表権、すなわち、理事長、院長のポストと病医院の経営権、すなわち、オーナー権を表す医療法人の出資持分や病医院の財産である。

 この2つのバトンを次世代に引き継ぐことで、医業承継は完結する。

 ここで病医院の代表権を引き継ぐことを“人的承継”、病医院の経営権を引き継ぐことを“物的承継”と表現することもある。

 いずれにしても、医業承継は、単純に代表権を引き継ぐこと(人的承継)で完結するのではなく、病医院の経営権(物的承継)までを引き継ぐ必要があるという点が重要である。

■物的承継と相続税

 病医院の経営権の承継(物的承継)する場合、つまり、病医院の財産や医療法人の出資持分を現世代から次世代に引き継ぐ場合には、税の問題が生じる。

 例えば、親が病医院の事業に使用されている不動産を保有している場合、その不動産を次世代に引き継ごうとする場合をイメージして欲しい。

 その際、親の死亡により財産が次世代に引き継がれる場合には、相続税の問題が生じるのである。 

 では、そもそも相続税とはどのような税金なのか、そして、何が問題になるのかを整理したい。

 相続税とは、文字通り、相続を起因として生じる税金である。具体的には、亡くなられた人の財産を取得した人に課税される。

 利益に対して課税される税金ではなく、財産に課税されるという点で、所得税や法人税とは違う特徴がある。

■相続税は、どのように計算され、誰が納めるのか

 相続税は、亡くなられた人から財産を引き継いだ人が納める。そして、相続税の計算の対象は、引き継いだ財産である。

 財産は、亡くなられた人が亡くなられた時点で所有していたものが対象となるが、死亡保険金や死亡退職金がある場合には、それらも相続税の対象となる。

 ここで財産とは、大まかに言えば、価値を見積もることができるもの、例えば、現金預金、上場株式、金融商品、土地、建物、貸付金、自動車や美術品、家財などをいう。

 もちろん、病医院に使用されている不動産や医療法人の出資持分も相続税の対象となる財産に含まれる。つまり、財産とイメージできるもののほとんどが相続税の対象であると考えた方が良い。

 相続税は、これらの財産について、人為的方法によって金銭的価値を計算する(この人為的方法というのがミソなのだが・・・)。

 そして、それぞれの財産の価値の金額を集計し、総額を計算する。そこから、亡くなられた人が亡くなられた時点で抱えていた借入金や未払金、発生した葬式関連費用などの金額を控除する。

 この制度のことを“債務控除”という。債務控除とは、“財産”とは対極的な“債務”がある場合には、その“債務”については、財産の価値の総額からマイナスするという制度であり、また、亡くなられた方の葬式関連費用についても、亡くなられた際には必ず発生する費用としてマイナスすることができる。

 ここまでを行って相続税の課税対象となる金額の基礎が計算される。この金額を相続税の課税価格という。

 なお、財産を引き継いだ人が死亡の日前3年以内に亡くなられた人から贈与を受けた財産がある場合には、その財産については、相続税の課税価格に加算し、改めて相続税のかけ直しが行われる。

 これは、亡くなられた人に相続が発生することを予期して贈与により財産を移転し、相続税の課税を逃れることを防ぐために設けられている措置である。

■どのように納めるか

 課税される財産の価値から借入金等を控除し、課税の対象となる金額を計算した後、一定の金額の基礎控除をマイナスし、最高税率50%の税率を乗じて、相続税額が計算される。

 相続税は財産に対して課税される。問題は、財産に対して課税される相続税をどのように納めるかである。

 例えば、私が見ず知らずの人から突然、遺言により、都心の一等地をもらえることになったとしよう。その一等地には、当然、相続税が課税される。価値の高い一等地であれば、その額は大きな額になるだろう。

 相続税も税金の一種なので、原則は、現金で納付しなければならない。つまり、一等地を取得したことで課税される大きな額の相続税を何とかして現金で納めなければならないという不合理が生じる。

■納めるために

 相続税を納めるためには、自分で資金を調達するか、もらった土地を売却するか、いずれにしても何らかの工夫を行い、現金を作り出す必要がある。

 先ほどのケースのように、見ず知らずの人から遺言で土地を受けたなどというラッキーな場合であれば、いざ知らず、病医院に使用されている不動産や医療法人の出資持分のように医業の継続に必要不可欠な財産について、このような問題が起こった場合にどうすべきかが医業承継における一番分かり易い問題点である。 

 得てして、医業の継続に必要な財産については、売ることもできなければ、お金に換えることもむずかしいケースが多い。

 相続税の納付のために処分することが許されない財産に課税される相続税をどのようにするかというのが1つの問題である。

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